ノンストレストテスト(NST)
■ノンストレストテストとは?
おなかの中で赤ちゃんはいま現在元気だろうか、そしてこれから始まるお産のための子宮収縮というストレスに耐えられるだろうかなどを、リアルタイムで知るための検査の一つが分娩前胎児心拍モニタリングです。妊娠中毒症や糖尿病その他の合併症などお産に都合の悪いリスクのある異常妊娠(ハイリスク妊娠)の妊婦さんはもちろん、正常妊娠の妊婦さんも行っておきます。子宮収縮が全くないときの検査ですので、これをノンストレストテスト(NST)と言います。

特にハイリスク妊娠では、予定日までお母さんのおなかに赤ちゃんがいることは、お母さんだけでなく、赤ちゃん自身の健康にとっても良くないことがあります。胎児心拍をモニターし、いつ分娩を誘発し、仮に小さくても元気な赤ちゃんを産んでいただくか、どんな治療方針にするか決めるためにNSTを行うのです。

当院では、原則として妊娠36週から1週間に1度、まず全員にNSTを行い、赤ちゃんとお母さんの健康チェックをします。静かな部屋で、ボディーソニックという、お母さんにはヘッドホンから音楽が聴かれ、赤ちゃんにはお母さんの心臓リズムのようなビートのきいた音楽を聴かせることのできる、写真のようなチェアーに横になっていただいて検査をします。


30〜40分間の胎児心拍モニタリング
30〜40分間の胎児心拍モニタリング

完全に仰向けに寝ますと、赤ちゃんの入った大きな子宮がお母さんの下大静脈を圧迫し、低血圧になり具合が悪くなることがありますから、少し背中を高くして寝る体位か側臥位で行います。気分が悪くなったときは、決して我慢せず申し出てください。我慢して検査を続けますと、お母さんの低血圧により赤ちゃんに栄養や酸素を送り込んでいる胎盤の血液の流れが悪くなり、おなかの赤ちゃんまでもがショック状態になり危険です。

■ノンストレストテスト(NST)の診断
 記録されたノンストレストテスト(NST)から、5つの結果が分類されます。

(1) 反応性NST(リアクティブNST)
胎児は酸素を胎盤を通してお母さんからもらっています。空気中と違って、血中の薄い酸素をいただくために、胎児の血液は赤血球などを増やして酸素の搬送能力を上げます。それでも間に合わないため、心臓の拍動数を増やして対応しており、胎児の心臓の拍動数は110から150と多いのです。この心拍の数を「基準心拍数」と言います。この基準心拍数を満たしていることが、そのときの胎児が元気である第1のサインです。

この心拍数も元気な胎児ではいつも少しずつ変動しています。したがって、元気な胎児のNSTは小刻みなギザギザした線で必ず記録され、「基線変動」と言います。これは胎児が元気である第2のサインです。

痛みや圧迫などの物理的ストレスや精神的ストレスによっても胎児の心拍数は大きく変わります。特に元気な赤ちゃんは10分間に2回以上動きますが、この自分の動いたことなどにより、1分間に換算して15以上心拍数が増えることがあります。これが15秒以上続くことを「アクセレレーション」と言います。これも胎児が元気である大事なサインです。


アクセレレーションと胎動  
アクセレレーションと胎動
アクセレレーションの拡大図
アクセレレーションの拡大図

しかし元気な胎児でも、眠っているときにはアクセレレーションがありません。そんなときは目を覚ますために、お母さんのおなかの皮膚を通して目覚ましのブザーの音を聞かせます。すると元気な胎児はびっくりして目を覚まし、心拍数が増えてアクセレレーションが出ます。

            音響刺激とアクセレレーション
                  音響刺激とアクセレレーション

つまり、元気な胎児の指標である反応性NSTとは、基準心拍数が110から150で、ある程度の基線変動があり、胎児が1O分間に2回以上動き、アクセレレーションがあるものを言います。大部分の胎児はこれです。反応性NSTがあれば1週間は安心です。

(2) 否反応性NST(ノンリアクティブNST)
基準心拍数は110〜150と条件を満たしているのですが、基線変動が5回/分以下で胎児心拍の増幅アクセレレーションが15回/分以下、しかもその長さが15秒以下、さらに胎動が10分間に2回以下のものを否反応性NSTと言います。これは胎児に元気がないか未熟児であることを示します。


否反応性NST
否反応性NST

(3) 正弦波様NST
これも基準心拍数は110から150と条件を満たしていますが、胎動も基線変動もアクセレレーションもないものを、正弦波様NSTと言います。これは、中学校の数学で習ったsinカーブのように正弦波を示すことからこのように呼ばれ、否反応性NSTよりももっと胎児に元気がないか、未熟性が強いかを示しています。成熟児でこれが出た場合は常位早期胎盤剥離などで赤ちゃんにとって大変危険な状態です。一刻も早くおなかの中から出してあげなければならない危険信号です。

(4) 遷延性除脈
それまで反応性NSTであったものが突然心拍数100回/分以下に下がり、しかもこれが90秒以上続くことがあります。これを遷延性除脈と言います。妊娠31週以前でこの遷延性除脈がみられると、かなりの危険信号があると診断されます。妊娠後半期に頻発するときは胎児仮死の末期的症状であると考え、早期娩出をしなければならないと判断され、帝王切開術を選択させられることが多いです。