水やり・肥料をきちんとやっていても同じ鉢で植物を育て続けるには限界があります。植物が元気よく、ぐんぐん育っていればもちろん、そうでなくとも植え替える必要があります。それではどんなときに、どんな状態の植物を植え替えればいいのでしょうか。まずはそこから見ていきましょう。
植え替えを必要としている最も分かりやすい例が、鉢の底から根がはみ出している場合です。このようなときには鉢の中は根がいっぱいで「根詰まり」を起こしていると考えられます。これ以上に根が伸びるスペースがないのですからそのうち地上部の成長にも影響が出てきます。とはいえ、これは植物が元気に生長している証でもあり、喜ぶべきことでもあります。
同じように根詰まりを起こしていても、鉢の底から根が出ていない場合もあります。どうやって見分けるかというと、水やりにヒントがあります。以前は水をやったらすぐ土の中に吸収されたのに、今は水をやっても鉢の表面に溜まった水がなかなか吸収されない。こんなときも鉢の中は根でいっぱいになっているでしょう。また、水やりのくり返しによって土が細かく崩れて水はけが悪くなることもあります。このときも鉢の表面に溜まった水がなかなか引かなくなります。たとえ鉢の中に根があふれていなくとも、このような通気性・排水性の悪くなった土は好ましくありませんので植え替えましょう。
以上が比較的分かりやすい場合です。このほかに根腐れをおこして元気がなかったり、弱っている場合も植え替える必要があります。多くの場合、弱った植物は下葉が落ちる傾向があります。下葉の脱落は健康な植物の生理現象でもあるので、どれくらい落ちたら根腐れとはいえません。しかし、特に水切れを起こしたわけでもないのに、急激に下葉の脱落が起こるようでしたら根腐れを疑ってもいいでしょう。
お手持ちの植物が上記の状態にあるからといってすぐに植え替えればいい、というものでもありません。植え替えは人間に例えるならば手術のようなものです。健康を取り戻すためとはいえ、患者本人が手術に耐えられる状態でなけば実施できません。いくら上手に植え替えても多少は根を痛めてしまうものです。そのため、一般的にその植物が元気に生長できる時期に植え替えをおこないます。多くの草花は春、観葉植物は夏、草花・蘭の一部は秋、一部の山野草が早春といった具合です。必ずしもこの通りというわけではありませんので、自分の持っている植物の植え替え時期がいつなのかを園芸書等で調べておきましょう。
さらに植え替えてはいけないときもあります。それは蕾がついているときや花が咲いているときです。開花には多くのエネルギーが必要となるため、この時期に植え替えてしまうと花や蕾が落ちてしまうことがあります。開花中のポット苗などやむを得ず植え替えをする場合は極力、根を痛めないように植え替えます。
植え替えは本来、土の中にある根を引き抜き空気中にさらすことになります。物理的衝撃や乾燥によって根が痛まないようにできるだけ迅速に終わらせる必要があります。そのため、植え替え用の土、新しい鉢、肥料、はさみ等の必要なものはあらかじめ用意しておきます。また植え替え後すぐに水をやる必要があるので水を汲んだジョウロも用意しましょう。植え替えにどのような土を用いるかは大変重要です。初心者の方はまず市販の培養土を使うといいでしょう。園芸店に行ってみて下さい。草花、野菜、ハーブ、サボテン…などなど、昨今のガーデニングブームに乗ってさまざまな専用土があります。慣れてくれば自分の手で色々な種類の土を混ぜて土を作ってみましょう。それはそれで楽しいものですし、安上がりにもつきます。それでは順を追って説明していきます。
まず、新しい鉢です。大げさに言いますと植え替え後の成長が良くなるか、悪くなるかはここから始まります。新たに根が伸びるためには今までの鉢より大きな鉢にしなければなりません。かといって欲張って大きすぎる鉢に植えるのは逆効果なのです。
大きな鉢にはそれだけ沢山の土が入ります。土の量に対し、根の量が少ないので土が乾燥するまでに多くの時間もかかります。つまり根が水に触れている時間が長くなり、新鮮な空気を得られにくくなってしまうわけです。過湿に弱い植物では根腐れを起こし、枯れてしまうこともあります。また、草花のなかには鉢の中がある程度根でいっぱいにならないと花をつけないものもあります。大きすぎる鉢では開花するまでの時間が長くかかってしまうことになりかねません。そこで新しい鉢の大きさはもとの鉢より一回り大きなものを用意して下さい。
また鉢には大きく分けて素焼き鉢とプラスチック鉢があります。素焼き鉢は土の中の過剰な水分が鉢の壁面から空気中に排出されるというすばらしい特性をもっています。このため土の中が過失状態になるのをある程度抑えられます。重い、割れやすいといったデメリットもありますが、過湿に弱い植物などには素焼き鉢をお勧めします。また、(私の私見ですが)素焼き鉢のストレートなデザインはいくつのも鉢を並べたときに美しさが映えます。以上のことから植え替えには鉢の選択も重要であることが分かると思います。
鉢を用意したら、鉢穴の上にネットを置きます。園芸店では「鉢底ネット」、「防虫ネット」等の名前で販売されています。なければ割れた素焼き鉢のかけらを置いてもかまいません。次にその上にゴロ土を敷きます。ゴロ土とは特定の土を指したわけではなく、鉢の底に敷かれる大粒の土のことを言います。ご丁寧なことに園芸店では「鉢底の土」なるものまで売られています。そこまでせずとも、赤玉土の中粒を用いれば十分です。
鉢の底からは水やりのたびに余分な水が流れ出るので、ここに目の細かい土が溜まってしまうと排水性が悪くなり、ひいては根腐れを起こしてしまいます。粒の大きなゴロ土を敷くことで排水性の向上を図るわけです。ゴロ土を敷く量は大きな鉢、高さのある鉢ほど厚くします。直径15cm前後の鉢ならば鉢の底が見えなくなる程度で十分です。その上に植え替え用の土をゴロ土の倍程度入れ、植え替え時に施す肥料(基肥といいます)を入れ、さらに用土を肥料が見えなくなるまで入れます。このようにすれば肥料が直接根に触れないので根を痛めることがありません。
ここまでの作業をあらかじめ済ませておきます。
これからは根を痛めたりしないように素早くおこなう必要があります。それでは鉢から根を抜いて見ましょう。なかなか抜けないようであれば、鉢の周りを細い棒などでつついて、隙間を作ってから抜きます。根がびっしりと張り詰めて鉢の形そのままに土を固定している場合もあれば、あまり根が張っていなくて土がぼろぼろと落ちる場合もあるでしょう。前者のときは根が絡まっていると思います。根をほどいて鉢に面していた外側の土を落としてやります。長く伸びすぎた根は切り詰めて、新しい根の伸張を促します。このとき根をよく見て下さい。生きている根は多くの場合は白く(太く成長した根は褐色の場合もあります)、死んでいる根は茶色く黒ずんでいます。また、生きている根を触ってみるとしっかりと詰まっているのに対し、死んでいる根に触れるとスカスカとしています。こういった死んでいる根があった場合、切り取って除去します。これらの作業をしているときに全ての土を落とすのは避けたほうが良いでしょう。場合によってはそのほうがいいときもありますし、全ての土を落とすのが基本という植物もあります。しかし、土を落とすことは根を痛めるということであり、植え替えに慣れていないうちの冒険は禁物です。
園芸店でポット苗を買ってきた場合はあまり手を加える必要はありません。ポットの底で根がとぐろを巻いていたら、ほどいておきます。十分に根が回っているようでしたら根鉢の周囲に、鉢に対して垂直方向に3ヶ所ほど筋を入れます。これも新たな根の伸長を促すことになります。ですが、先ほど触れましたように開花中の苗はいじらないで下さい。花期を縮めることになりかねません。
さて、根の散髪が終わったらいよいよ植付けに移ります。先ほど準備した新しい鉢に植物を入れます。片手で植物を掴み、ちょうどいい高さに持っていきます。ちょうどいい高さとは植付けが完了した時点で、土を被っていない根がある(浅植え)状態や、茎が必要以上に土を被っている(深植え)状態にならないようにすることです。鉢の大きさ・深さを考えて、これで大丈夫だと思ったら、もう一方の手で土を入れていきます。ある程度入れたら細い棒などで鉢の周囲をつついて鉢の底のほうまでしっかりと土が行き渡るようにします。ちょうどいい具合まで土を入れたら、今度は鉢を持って鉢の底を数回、地面に軽く叩きつけます。こうすると根と根の隙間に土が入ってある程度土が沈みます。沈んだ分だけ土を足して植付けを終了させます。
ここまでやったら植え替え完了…ではありません。作業中に根が乾燥し失った水分を補うためにすぐに水をやります。どのくらいの量をやればいいのでしょうか? そう、水やりの基本と同じように鉢の底から流れ出るまでたっぷりとやりましょう。
さらにもう一つだけやるべきことがあります。それは地上部の整枝です。伸びすぎた枝、枯れた枝、下葉の落ちた枝を刈り込みます。植え替えで根を切ったということは、それだけ水を吸える量が少なくなったということです。地上部が今までと同じ量では植物に負担がかかります。地下部と地上部のバランスをとるために、また植物の形を整える意味でもある程度刈り込みましょう。ポット苗の場合は特におこなう必要はありません。ここまできて植え替えは完了です。
植え替え後の置き場所にも注意が必要です。一週間ほどは直射日光、風の強い場所を避けて管理します。また、肥料もやってはいけません。これまた手術後の人間と同じく安静にして体力の回復を待つわけです。しばらくすれば新たに根が伸び、新葉も展開して元気に育ってくれることでしょう。
以上で、植え替え編を終わりにします。確かに植え替えは面倒くさい作業でもありますが、同時に園芸最大の楽しみでもあります。鉢いっぱいに張り詰めた根を見るとうれしくなるものです。根の色・太さ・伸び方も植物によって異なります。初めて植え替える植物には「どんな根をしているのだろう?」と期待してしまいます。皆さんにも植え替えの楽しさを分かっていただけたら幸いです。なお、私の文章力では言葉で植え替えを説明するのは難しく、上手く伝わらなかった面も多々あると思いますがご了承下さい。
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