種子から植物を育てられなくとも、植え替えができなくとも、園芸店で鉢に植えられている植物を購入すれば園芸は始められます。そこでまず必要になってくるのが水やりです。簡単なようで実はとっても奥の深いものなのです。園芸には昔から「水やり三年」という言葉があります。植物の状態を見極め、必要なときに必要なだけ水をやるのはそれほど難しいものなのです。
だからといってそれほど気を重くする必要はありません。基本的ないくつかの点を守っていれば、ほとんどの植物はちゃんと育てられます。私自身も、まだまだ水やりマスターには程遠いのですが、それなりにやっていっています。ここでは主に鉢物の水やりについて解説します。
植物は根から水を吸って、太陽の光を浴びて光合成をしています。だから「水はあればあるほどいい」と思うかもしれませんが、そうではありません。何故かというと、根も生きているからには呼吸をしているのです。「植物の呼吸? それって葉からするのでは?」このように、お思いの方もおられるはずです。確かに植物は葉から二酸化炭素を吸収し、酸素を放出しています。それは葉が光合成をする、つまり葉緑素をもっているからです。葉緑素をもっていない根は光合成をしません。でも呼吸はするのです。我々人間と同じように酸素を必要とします。ですから、いつも水をやっていると根は呼吸ができません。根はいたみ、根腐れを起こします。意外かもしれませんが、水のやりすぎでも植物を枯らしてしまうことがあるのです。
根にも酸素が必要なのは分かった。それでも、やっぱり水がなければ枯れてしまう。では一体いつ水をやったらいいのか? 土の中がどうなっているかなんて見たって分からないし、なかなか難しいところですよね。そこで水やりの基本は「水やりは鉢の表面の土が乾いたらやる」となります。
これなら見れば分かりますね。水やりのタイミングはこのように「鉢の表面の土が乾いたら」これを季節を問わずおこなってください。夏であれば乾くのが早く、一日二回やることがあるかもしれません。冬はあまり成長しないのでなかなか乾かず、一週間に一回ということもあります。これを理解すれば「一日に何回」・「夏は毎日、冬は何日おき」という表現があまり正しくないことがお分かりいただけると思います。
水やりのタイミングは分かった。ではそのとき、どれくらいの量をやればいいのでしょうか。水が好きな植物はいっぱい、サボテンのような植物は少し…そう思いたくなりますが実は違います。どんな植物でもやるときはいっぱいやる。これが正しいのです。ではここで質問です。「いっぱいってどのくらい?」これは簡単に答えることができます。鉢の底から水が流れ出るまでやればいいのです。つまり「どんな植物だろうとも鉢の底から流れ出るまでたっぷりとやる」ということです。
この植物は水が好きだから、乾燥を好むから、などと考えなくていいわけです。これは初心者にはありがたいことです。たっぷりと水をやることで鉢の隅々まで水が行き渡ると共に、鉢の中の古い空気を押し出して新しい空気を入れることにもなります。先に述べたように根も空気を必要としますので、このことはとても重要なのです。よくジョウロで植物の上から水をやる光景を見ますが、これだと水が葉に遮られ、土に吸収される水量は思ったほどではありません。この場合、土の表面が湿るだけとなり、鉢の中の古い空気を閉じ込めてしまう結果にもなります。本人はたっぷり水をやったつもりでも鉢の中は水もない、新鮮な空気もない、と最悪の状態なのです。水をやるときは株の根元からやってください。
室内で植物を育てている場合は受け皿を使っていると思います。鉢の底から流れ出るまで水をやるということは当然、受け皿に水がたまります。このとき、たまった水は必ず捨ててください。そのままにしておくと根腐れの原因となります。
次に水やりの時間です。鉢の表面が乾いたらいつでもやっていいかというとそうでもありません。午前中、日が昇りきる前、10時くらいまでにやるのがベストです。現実には忙しくて、朝にそんな余裕がないこともしばしばです。ですから夏と冬だけ注意をしてください。夏は日中の高温時には絶対に水をやらない。気温が高いときに水をやると、鉢の中は高温になり水分が蒸発し、湿度も高くなります。こうなると、根が焼け壊滅的なダメージを受けてしまいます。朝早くまたは夕方やります。乾き具合によっては一日に二回やることもあります。冬は暖かいうちに水やりを済ませ、夕方以降にはやらないようにします。何故かというと、鉢の中に残った水分か凍結する可能性があるからです。この二つを守れば水やりの時間は案外いいかげんでも何とかなったりします。もちろんベストを尽くすのがいいにこしたことはありませんが。
最後に一つ付け加えておきます。先ほど、「どんな植物でも乾いたときにたっぷりやる」といいました。それでは水を好む植物と乾燥を好む植物の水やりの違いは何なのでしょうか。これは水やりのタイミング「表面の土が乾いたら」に関わってきます。水を好む植物は表面の土が乾ききる前に水をやっても大丈夫ということです。逆に、乾燥を好む植物は表面の土が乾燥してさらに一日から数日たってから水をやるということなのです。
けれども私は慣れないうちは基本どおりにやった方がいいと思います。基本とおりにやっていれば、すぐに枯れるということはありません。慣れてきたら少しずつ、この植物はどういう植物だったかな、と思い出してください。いうまでもなく最初から特殊な水やりが必要な植物に挑戦しないことも大切です。
水やりの基礎的なことはこれだけです。まとめますと、
水やりは鉢の表面の土が乾いたら、
どんな植物でも鉢の底から流れ出るまでたっぷりとやり、
受け皿に水をためない
このとおりやっていればほとんどの植物は育てられます。表面の土が乾いたか見るということは植物を良く見ることにもつながります。結果として今まで気付かなかったことを発見することもあります。
基礎園芸講座