四国遍路旅

讃岐の国「涅槃の道場」(香川県)

10月5日 第六十六番雲辺寺〜第七十一番弥谷寺
  観音寺の駅前には、観光案内所がある。昨日ここを訪ねて、今日登る雲辺寺への行き方を確認し
た。観音寺のりあいバスで駅前から谷上まで行き、そこから雲辺寺ロープーウェイ山麓駅まで歩き、
ロープーウェイを利用する方法が良いとのこと。朝8時49分発のバスに乗る。バスに乗ったら運転手
に必ず雲辺寺へ行くことを告げるようにと教えられた。我々と、もう一人のお遍路さんが同乗してい
る。約1時間ほど走り、谷上の手前の登り口にバスを停めて運転手が地図で丁寧に道案内してくれ
た。バスは均一料金で、一人1回100円。大勢の参拝客が利用するのであろう。詳しい地図まで準備
してあり万端である。この地図には帰りのバス時刻と次の大興寺までのバスの乗り換えについて丁
寧に記載されていた。
 バスを降りて約3kmほど登り坂を歩くとロープーウェイが見えてくる。ロープーウェイは20分おきに
出ており、山頂まで7分である。瀬戸内海を眺めながら、しばしの空中散歩。第六十六番雲辺寺参
拝。雲辺寺は八十八カ所の札所の中で最も標高が高いところにある。雲辺寺にある表示を見たら、
二番目が5月に足を痛めた焼山寺であった。納得。

   
        八八ヶ寺標高ベストファイブ。                         雲辺寺ロープウェイ。瀬戸内海が眼下に広がる。

 ロープーウェーで下り、山麓駅から大興寺まではバスを乗り継いで行くことも出来るが、時間的に合
わない。そこでタクシーで移動することにした。こんなところにお寺があるのかと思われる森で覆われ
た丘陵地に第六十七番大興寺があった。大興寺は入り口の存在感ある大きなクスの木が印象的で
あった。大興寺参拝の後六十八番、六十九番は、昨日参拝を終えているので、第七十番本山寺へ向
かう。約6kmほどの道程であるが、歩くことにした。ただし、ここは回る順番を入れ違えているため遍
路道ではない。これまでのような遍路道の表示を頼ることが出来ないので、地図を見ながらの移動と
なる。やはり地形的なものや距離感が地図と実際とは違う。この移動距離はとても遠く感じた。途中の
コンビニで昼食を済ませ、念のため、手持ちの現金を郵便局で払い戻してから本山寺へ。疲労感が
ひしひしと押し寄せる。
 第七十番本山寺を参拝後、本山駅まで歩き三野駅までJR移動。三野駅からは本日宿泊予定の宿
までタクシーを利用した。チェックインする前に、宿のすぐ前の第七十一番弥谷寺参拝。
 弥谷寺は階段の寺であった。入り口に本堂まで580段あまりとの表示があった。約430段の石段を
登ると、その上に急な108段の赤い階段がある。さらに何十段かの石段を登り本堂へ。疲れた足に
本日最後の試練。この寺は幼少期の空海が修行した寺である。この階段を毎日登るだけで修行にな
ると感じた。



10月6日 第七十二番曼荼羅寺〜第七十八番郷照寺
 今朝も清々しく晴れ渡っている。第七十一番弥谷寺から第七十七番道隆寺までを1日で回る業を地
元では七カ所まいりと言って、八十八カ所を回るのと同じ御利益があるという話を聞いた。今日はまさ
に七カ所まいりである。弥谷寺の山門のところから山の中に入る遍路道がある。少し登って、今度は
竹林の中を下る。しばらく下ると池の畔を巻くように遍路道は続く。蛇でも出てきそうな道である。道ば
たの至る所に掘り返した穴がある。あとで聞いたら、イノシシが掘り返したものらしい。鉢合わせにで
もなったら怖いと思っていたら、イノシシは夜行性なので昼間は大丈夫とのこと。本当かなあ。遍路道
の表示はしっかりしているので、地図と照らしながら迷うことなく進む。約3.5kmで第七十二番曼荼羅
寺に到着。そこから300mほど坂を登ったところが第七十三番出釈迦寺である。曼荼羅寺まで下りて
田園地帯の遍路道を歩く。

                   出釈迦寺から曼荼羅寺を臨む。

 出釈迦寺から2.2kmで第七十四番甲山寺である。川を渡り、市街地を進むと道を挟むような形で第
七十五番善通寺の境内がある。まずは左の本堂を参拝し、戻って道を越えて御影堂を参拝する。善
通寺は実に広大な敷地を持っている。再び折り返して本堂側の納経所で御朱印をいただき、本堂の
脇を抜けて参道になっているまっすぐな道路を進む。途中から細い道の方向へ遍路道表示が誘導す
る。JR線、大きな通りを横断し、道は住宅街へ。さらに高速道路をくぐり抜け田園地帯を抜けると善通
寺から3.8kmで第七十六番金倉寺である。
 金倉寺から3.9kmで第七十七番道隆寺にたどり着く。道隆寺目前の住宅地を歩いていると、一軒の
住宅から、お遍路さんちょっと待ってくださいとの声をかけられる。立ち止まると、親指ほどのお地蔵さ
んの焼き物を持ってご主人が出てきた。「これはウチの息子が作っているものです。記念にどうぞ。」
とのことでした。息子さんも後から出てきたので、丁寧にお礼を述べてありがたくいただいた。後で考
えるとお札を差し上げるべきであったと思う。お地蔵さんの中には穴が開いていて、その中に「77番
道隆寺参拝記念にどうぞ」と書かれた紙片が入っていた。お遍路さんを見つけては差し上げているの
かもしれない。道隆寺にはこれと同じお地蔵さんが多数収められていた。いいお顔をしたお地蔵さん
だ。

                        我が家の玄関で来客を迎えるお地蔵さん。

 道隆寺を後にして多度津の駅へ向かう。今日の宿は宇多津駅前にある。JRにて3駅ほどで宇多津
に到着。まだ時間的に余裕があるので、第七十八番郷照寺へ。郷照寺までは宇多津の駅から約1km
ほどである。今日歩いた7ヶ所まいりは15.2kmほど。1日かけてゆっくり回れる距離である。昨日、三
野から乗ったタクシーの運転手が、自分たちの講では毎年1回七カ所まいりをしていると言っていた。
地元の行事にもなっている。



10月7日 第七十九番高照院〜八十六番志度寺
  宿の窓から今日は瀬戸大橋がきれいに見える。朝食を済ませ、宇多津駅からJRで八十場へ。時間
が時間だけに、宇多津駅には通勤客や高校生が多数いた。職場を離れると、曜日感覚や時間帯の
感覚が鈍っているのを感じる。

                         宇多津駅の向こうには瀬戸大橋が見える。

 八十場駅から歩いて100m足らずで第七十九番札所高照院へ。ここから今日のルートはタクシーを
活用しないと難しい。自分でレンタカーでも借りれば事足りるが、免許証は持ってきていない。息子に
運転する気は無いか打診するが難色を示す。無理に運転させて事故でも起こしたらせっかくの巡礼
の旅が台無しである。タクシーとJRを活用した予定を昨晩立てていた。
 高照院から、まず第八十一番白峯寺へタクシー移動し参拝する。白峯寺は小高い山の上にあり、タ
クシーだとかなりの大回りをして登ることになる。タクシー代は必要経費と割り切る。その後、待たせて
おいたタクシーで八十場の駅まで戻り、JRで国分駅へ。国分駅から歩いて100mほどで第八十番国分
寺。国分駅はホームからの出口がわかりづらかった。国分寺参拝後再び国分駅へ戻り、JR線で鬼無
へ。鬼無駅から第八十二番根香寺までタクシーで。タクシーにはそのまま待っていてもらって、ちょっと
距離はあるが第八十三番一宮寺まで乗せてもらう。
 ちなみに、根香寺もまた300m以上の高さのところにある。一方、一宮寺は町の中にあり、こうした高
低差と移動距離が、八十八カ所巡りの修行たるゆえんであろう。そういう意味では、楽して修行をして
いるようなものであるが、地元の方の話では歩くだけが全てではない。やはり八十八カ所をお参りす
ることが大切なのだと聞いた。どのような手段であっても御利益に変わりは無いということであった。
よほどの願かけで無い限り、完全徒歩で回ることは難しいかもしれない。
 一宮寺から500mほどで琴平電鉄の一宮駅がある。ここから高松市内の瓦町で琴平電鉄志度線に
乗り継ぎ琴電屋島駅へ。ここから屋島寺、八栗寺とタクシー移動を決める。実は琴電屋島駅の前から
屋島寺まではコミュニティバスが出ているが、バス時刻を調べると、出発までまだ1時間以上ある。今
日は八十六番まで参拝する予定でいるので、ここでの時間ロスは後に響く。そこでタクシーを呼び待
っていると、女性が一人やはり時刻を調べていた。屋島寺へ行くのかと尋ねると、そうだという。我々
も屋島寺へタクシーで向かうが、同乗しても良いと話すと、素直に同行することになった。京都から友
達を訪ねてきたが、友達にぜひここへ登ることを勧められたとのこと。
 屋島寺までは車だと有料道路を登ることになる。タクシーの運転手は何年か前まで仙台にいたとの
ことで、いろいろと話が弾む。途中、那須与一伝説で有名な源平合戦、壇ノ浦の戦いの現場がまさに
ここであるとタクシーを停めてくれた。小さな入り江であった。眺めは非常に良い。

                      那須与一が弓矢を放った壇ノ浦。

第八十四番屋島寺を参拝。タクシーには待っててもらう。時間があれば、屋島寺の周辺が公園になっ
ており、ここから瀬戸内海の眺めが素晴らしいとのことであったが、先を急ぐ。同乗した女性とはここで
別れる。八栗寺は先ほど見た壇ノ浦を挟んで向こう側の山の上にある。タクシーの運転手が頂上まで
行くには遠回りになり、料金もかさむので、八栗ケーブルの登山口駅まで乗せるからそこからケーブ
ルカーで登る方が良いと助言される。ケーブルカー沿いに遍路道はあるが、かなりの傾斜である。ケ
ーブルカーも急勾配をゆっくりと登る。第八十五番八栗寺参拝。

                     八栗寺ケーブルカー。結構な急勾配。

ケーブルカーで下山し、登山口駅から2kmほど歩いて琴平電鉄八栗駅へ。八栗駅から琴電志度まで
電車移動。志度は今日の宿泊地である。宿に入る前に第八十六番志度寺参拝。志度寺から500mほ
ど歩いて今日宿泊の宿へ。ここは安くて親切と評判の宿である。夕食は出ないが、朝食付きで1泊一
人3,500円である。明日で八十八番まで回り終わり結願の予定なので、あさって10月9日に家に帰る
ための切符をJR志度駅脇の旅行センターで手配する。希望通りのバス、列車が確保できた。今日の
移動距離も結構なものとなったが、それ以上に交通費が嵩んだ。一人での移動であればもったいな
い気もするが、二人ということを考えれば、まあこんなものだろう。
                                               



10月8日 第八十七番長尾寺〜第八十八番大窪寺〜第一番霊山寺
 いよいよ今日で最後。JR志度駅から大窪寺まではさぬき市コミュニティバスが出ており、これを利用
することにしたが、途中に八十七番の長尾寺がある。時刻の関係で、先に大窪寺に向かい、帰りがけ
に長尾寺で終わりにすることを決める。
 8:05JR志度駅出発。コミュニティバスだけあって、地元の乗客と運転手は顔見知りである。誰がどこ
で降りるかまで掌握しているようだ。世間話をしながらの運転である。9:15大窪寺バス停到着。下車
前に、運転手から、帰りの乗車の有無を確認され、10:00発であることを念を押される。これを逃すと
13:30まで無いので、かなり待つことになるとのことであった。第八十八番大窪寺参拝。

                     第八十八番札所大窪寺参拝。

 大窪寺は結願寺である。多くの金剛杖が奉納されていた。私は記念に持ち帰るつもりでいたし、八
十七番が終わっていないので、なおさらである。バス停前の土産屋で、ショウガ入りの葛湯をお接待
いただいたついでにおみやげに「結願まんじゅう」を購入した。10:00大窪寺を出発。10:31大川バス
本社前到着。ここから長尾寺までは300mほど。歩く道を1本間違えて遠回りしたが、無事第八十七番
札所長尾寺参拝。これで八十八カ所全て回り終えた。
 今日はこれから第一番の霊山寺へ向かい、結願報告と御礼参りをする。長尾寺から琴平電鉄長尾
駅まで200m。長尾から昨日乗り換えた瓦町を通過し、高松築港へ。ここからJR高松駅まで200mほど
歩き、JRで一路板東駅に向かう。板東までは距離があるので、途中板野まで特急電車を利用する。
ところがこの特急電車は、平日であるにもかかわらず結構混んでいて二人一緒に座れない。やっと座
れたのは志度駅であった。予定通り板野で乗り換え、懐かしの板東下車。歩いて第一番霊山寺へ参
拝。参拝後納経所にて結願した旨を伝えると、最終ページに結願日と御朱印をいただいた。併せて、
四国霊場開創1200年記念のピンバッジをお接待された。
 この後は高野山参りであるが、今年はここまで。高野山は来年参拝することにする。板東から徳島
までJRで移動。今夜の宿は徳島駅のすぐ近くである。



10月9日 帰郷
 9:00徳島駅発JRバス阿波エクスプレス号乗車。新神戸には10:58到着予定である。ところが、途中
の阪神高速道路が渋滞中なので迂回するとのこと。切符を予約した山陽新幹線は新神戸発11:22。
25分ほどしか余裕が無い。三宮駅周辺ものろのろ運転。間に合うかどうかいよいよ気が気でない。そ
れでも11:00過ぎには無事到着し、新幹線にも間に合った。帰りの新幹線ではさすがに寝ている時間
が多かった。16:51古川駅到着。17:30には我が家に帰り着いた。疲れたが、充実したお遍路旅であ
った。


旅日記

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