尾崎流高密度実装 TTT
SSBジェネレータ 2
トラブルシューティングの原稿が尾崎さんから届きました。
詳細な画像付です。(最後までスクロールすると出てきます。)
一応形になってしまうとあまり弄らなくなることが多いのですが、
尾崎さんはひと味違って、ひたすら弄って性能を追求してます。
トラブルシューティングの実例なんて、写真入りで見る機会は
そうそうありません。
ノウハウ吸収の良いチャンスですね。
このレポートで、私は初めて『VXOコイルからの漏れ電波が
トラブルの元になる』場合があるということを知りました。hi.
de JN1NGC
『元ネタ』は、こちらです。
TTT-TRX奮闘記
2003年末に一通り完成し、2004年の正月休みにケースにも収めてようやく完成
したと思っていた6m SSB TRXですが、半年ほど使っている内に、どうにも気に
なる点が出てきました。
[何かおかしい]
製作記にも最初S Meterが全く振れずに苦労した点を書きましたが、それとは
別の意味でS Meterの振れがどうも変なのです。
一応、SSGで40dBuV入力時にS9振れるように調整してあるのですが、同様に調
整した他のリグ、IC-502やMX-6Sと全く同じアンテナを繋いで、同じ局を受信
しても、このTRXだけ何故か弱い信号に対するS Meterの振れが極端に悪いのです。
特に、10dBuVから20dBuV位の(他のリグだとS5からS7位振れる)局が、この
TRXではほとんど振れません。それでも、信号は明瞭に聞こえますし、了解度
は5なのですが…。
散々悩んだ挙げ句、外付けのS Meter回路を作って実験してみたところ、何と
無信号状態でもS Meterが振り切れているではありませんか!
「へ? 何これ?」と思い、オシロでIF段出力の波形を見てみると、アンテナ
に何も繋がない状態でも、200mVpp位の波形が出ていたのです。
このIF段は、2SK439Eを3段使ったハイゲイン設計で、AGCは各段のゲートに0V
から-0.8V位の負電圧をかけるようになっています。
AGC信号は、IF段3段目のドレイン側から10pFの結合コンデンサで取り出した信
号を1SS99x2で負電圧検波して、エミッタ側をICL7660で-5Vに引っ張った
2SC1815のAGCアンプで駆動しています。
IF段出力に常時出ている200mVpp位の信号のせいで、AGC電圧は最小でも-0.25V
程度にしか下がっていませんでした。本来は無信号時には0V付近迄下がらなく
てはいけないはずです。
このために「常時AGCがかかった状態」になり、その状態でS Meterの0点調整
を行なっていたために、IF段出力で200mVppを越える入力信号が入らないと、S
Meterが振れない状態になっていたのでした。
[この信号はどこから?]
S Meterが振れなかった原因はわかりましたが、さてこの「IF段に混入してい
る信号」はどこから来ているのでしょう?
オシロの波形を見ると、どうもIF周波数である12MHz付近の信号のようです。
これはSSB機ですから、同一基板上には、当然BFO及び送信時のキャリア発振の
ための回路が載っています。試しに、BFO段の発振を止めたところ、IF段の出
力に出ていた信号も奇麗に消えます。
どうやら、BFOの発振が、どこからかIF段に回り込んでいるようです。この回
り込みと止めてやれば良さそうです。
実は、ここから悪戦苦闘の日々が始まったのでした。
[BFOの発振レベルは?]
このBFOは、2SK439Eを使ったもので、出力側に12MHzの同調回路が付いていま
す。この同調回路のリンクコイル側をオシロで測定すると、2Vpp程度の出力が
出ています。
「他のBFOも大体そのくらいは出ているよな」と思いつつ、この出力に入って
いる1000pFを下げてみることにしました。IF段出力への影響をオシロで確認し
つつ、10pFまで下げると、IF段への混入はかなり緩和されましたが、この出力
は、送信時のキャリアとしても使っており、送信Mixerに使用しているSN16913
の最適キャリアレベルは、250mVppから300mVpp程度必要です。
これが100mVpp位に下がってしまったため、当然送信出力も低下してしまいま
した。
「キャリアレベルを下げちゃったんだから当然か」と思いつつ、16913側のレ
ベルを上げようと、キャリア信号を16913に繋いでいる1.5D2Vの配線を外した
ところ、何とIF段の混入が解消したのです!
[犯人は16913か?]
今度は、試しに16913への配線を外したまま、先程10pFに変えたコンデンサを
1000pFに戻してみましたが、IF段への混入は見られません。しかし、このまま
では送信が出来なくなってしまいます。
部品配置図を見て頂ければわかりますが、この16913はIF段初段にかなり近い
場所に設置されています(この辺はオリジナルとほぼ同じ配置です)。そのた
めに、16913への配線から洩れた信号がIF段初段に飛び込んでいるのでしょう
か?
確認のため、16913への配線を戻して、IF段初段の電源を外したところ、やは
りIF段出力への混入信号は消えます。
「何だよ、お前(16913)が原因かよ」とつぶやきながら、どうしたものかと
考え込んでしまいました。
[BFOの外出しも効果無し]
混入信号は、BFO信号が大元であることはどうやら間違いありません。そして、
16913への配線を「媒介」にして、IF段のどこかに混入しているようです。実
は、この基板はJN1NGC/鈴木さんのオリジナルのままではなく、LM386NのAFア
ンプ、送受切替え用回路、さらにS Meterアンプまで組み込むため、大幅にレ
イアウトを変更しています。この結果、BFO回路がIF段やAGC検波回路にかなり
近接してしまっています。
BFO出力が2Vpp近くも出ていますから、ゲインやインピーダンスの高い回路に
隣接していれば、そこから飛び込む可能性もあります。
このため、基板上のBFO回路の電源を切断して、同じ回路を別基板に組み立て
て、15cm程の1.5D2Vの同軸で配線してみました。
ところが、IF段への混入レベルには顕著な変化は見られません。どうやら、
BFO信号を受けている部品のどこかからIF段に飛び込んでいると考えた方が良
さそうです。
折角作った外付けBFOですが、混入レベルの変化がなかったので、基板上のも
のに戻しました。
[IF段のデカップリング及びシールド強化も効果無し]
IF段に飛び込んでいるとすると、考えられる経路は、以下の3つ位しかありま
せん。
1. IF段の信号系統に直接飛び込んでいる
2. AGCラインに飛び込んでいる
3. IF段の電源ラインに飛び込んでいる
信号系統に直接飛び込んでいるとしたら、IF周波数とBFO周波数は非常に近い
ので、対策は厄介です。とりあえず、他の要因を確認してみました。
AGCラインは、ジャンパーピンでGNDに落せるようになっていますので、早速こ
こをGNDに落してみたところ、AGCが効かない分混入信号の出力レベルは上がり
ましたが、解消する気配はありません。
電源ラインは、100Ωと0.01uFである程度デカップリングされていますが、こ
れをさらに強化するために、各IF段毎に切り離して220uHのRFCを挿入してみま
した。しかし、やっぱり効果はありませんでした。
残された可能性は、IF段の信号ラインのどこかに飛び込んでいるということで
す。では、IF段の半田面をシールドしてしまえば良いか?と考え、配線と短絡
しないように、紙を間に挟んだ銅箔テープをIF段裏側全面に半田付けしてみま
したが、若干混入レベルは下がった物の、完全解消には至りませんでした。
[ダイオードスイッチを挿入]
「SN16913への配線を外せば、IF段へのBFO混入は解消する。だけど、そのまま
じゃぁ送信出来ない」。
暫く悩んだ結果、「そうだ! 16913はどうせ送信時にしか使わないんだから、
受信時だけ16913への信号を止めてしまえば…」と思い当たりました。
急きょジャンク箱の中から、適当なSW Diを捜し出し、ダイオードスイッチを
挿入してみました。ところが、そう簡単には解決してくれませんでした。
確かに、受信時には16913の2ピンにはキャリア信号が伝わらなくなりましたが、
ダイオードスイッチの入力側への配線から洩れるのか、IF段への混入レベルは
50mVppから100mVpp程度残ってしまいました。
[BFOのVXO化用RFCから洩れ電波が!?]
ここで、混入レベルが常時一定ではなく、基板に手を近づけると若干変動する
ことに気付きました。
どの部品が一番変動に寄与しているかを調べたところ、BFO用の水晶が頑固で
発振周波数を合わせ切れなかったために、VXO化する目的で挿入したRFCを触る
と一番変化することがわかりました。
このRFCは、1/4W抵抗位の大きさの手持ちのものを使用していましたが、どう
やらここが洩れ電波の一つの発生源のようです。
これを米粒大のマイクロインダクタに交換してみたところ、混入レベルはかな
り下がり、IF段及びS Meterの再調整を行なったところ、-10dBuV位の入力信号
から元気良く振れてくれるようになりました。
[基板のGND強化]
上記対策により、ほぼ問題は解消したように思われましたが、まだ伏兵が潜ん
でいました。
ここまで、ケースから基板を取り出した状態で試行錯誤の対策を行なっていま
した。ところが、基板をケースに装着したところ、無信号時でもS Meterが盛
大に振れてしまっていました。
この基板は汎用穴開き基板で、基板取り付け用の穴部分にはパターンがありま
せん。このため、基板上のGND配線とケースの間は電気的に「浮いている」状
態でした。このため、基板から輻射されたBFO信号が、ケースで反射してIF段
に飛び込んでしまったのだと思われます。
そこで、ラダーフィルタの出口、すなわちIF段の入力に最も近い部分のGND配
線に、卵ラグを半田付けし、基板取り付けネジでケースにGNDが接続されるよ
うにしたところ、この飛び込みも解消しました。
[さいごに]
長々と述べてきましたが、結局のところ今回の問題は、以下の4つの対策によ
りほぼ解消することができました。
1. SN16913へのキャリア配線にダイオードスイッチを挿入し、受信時には電気
的に切り離す
2. BFOをVXO化するために挿入したRFC(最終的に10uH)を抵抗型の物から、米
粒大のマイクロインダクタに変更
3. IF段のシールド強化のため、半田面全面を銅箔テープで覆う
4. 基板のGND配線をケースに「一点アース」で接続する
実際には、まだ若干飛び込みが残っていると思われますが、「実用上問題のな
いレベル」にまで抑えることが出来、S Meterの振れも、他のリグと比較して
も違和感がなくなりました。
自作の楽しみは、実はこうしたトラブルシューティングにもあったりします。
皆さんも、ディープな自作の世界にはまってみませんか? Hi
2004.06.12
de JE1RYH
奮闘後の画像
以下の画像は、クリックすると大きな画像になります。
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1. 基板裏全景

2. BFO裏側と問題のRFC

3. シールドしたIF段と、ダイオードスイッチ、16913への1.5D2V

4. GND強化のためにフィルタ出力部に追加した卵ラグ

5. 改造後のGenerator基板全景
