オレンジ色の地球儀
1.痛み
2.オレンジの地球儀
3.かぎとりぼんのはなし
4.THE CLASS OF 1976
5.ひかりのくに
6.辻ヶ花浪漫(ロマンス)
7.La mere 〜ママ〜
8.月の媚薬
9.航海図のない船

痛み
赤く暮れる校舎の裏で
 わかりあえないもどかしさに殴り合い
切れた唇 血の味と痛み
  ワルぶる事が勇気だと信じてた
こみ上げてくる熱い何かを 
 押さえるすべも知らなかったのは・・ティーンエイジ
 コンクリートの教室は暗く冷たく感じ 背を向けてたけど
 少年を卒業する日 振り向いた景色を
 そっとそっと胸に刻んだ
いつか大人の表情にも慣れて  瞳の色はこんなにも変ったよ
僕の中で大事なものが さびた線路になろうとする事に気づく

誰もの背中くたびれた気配
 同じようなコートを着た人の群れ
鳥も飛ばない切り抜かれた空 
 西陽のビルのため息で枯葉がまう
見かけの自由で飾りたてられ
 目に映るのはついに乾き果てた・・・都市風景
                       (タウンケイプ)
  AH。。人混みでふいに肩を押され
  交差点の途中で立ち止まる
  渡りきる前に何かやり残してる気がして
  僕は僕はたまらなくなる
ラッシュのホームで首をすくめて
血の気のない風景に埋もれてないか?
あみ棚の上置いていかれた雑誌みたいな気分に
ひたりきってないか?

いつわりの歌うたってないか?
にせものの夢買わされ続けてないか?
傷つく事におびえてないか?
ひたむきでいたい自分をだましてないか?
いたずらに時を憎んでないか?
招かれるままに明日へ流されてないか?
汗も流さず甘えてないか?
なまぬるい部屋飼いならされちゃいないか?
見ないふりして逃げていないか?
物わかりのいいふりをしてあきらめてないか?

オレンジの地球儀
この歌懐かしいね 高校時代よく聞いた
紺色の制服って 今思うとまぶしい

急な坂を駆け上がれば あふれるような桜並木
正門の前はいつも声を交わす友達
 
    授業のベルや昼休みのざわめき
    みんなまるで昨日の事のような気がするね

あの頃 未来は虹の彼方だった
何にでもなれそうな事を考えてた

好きだった先生のらくがき描いては消した黒板
廊下はひんやりと講堂へ続いてた

一番多感な時 誰もが健気だった気がする
ほろ苦い思いでさえ オレンジ色に変わる

    どうしてるかと気にかかる友達・・・・私さえも
    多分変わってしまったのでしょう

偶然聞いた古い歌に想いあふれ
少女の日の夢のかけらを抱きしめてた

かぎとりぼんのはなし
紫陽花の花のいろに暮れかかる公園は
友達の声も消えて風だけがそばにいた

    ポケットの中の鍵を確かめて
    かけ出せば夜が追いかけてくる

    2つめの角をまがれば
    まだ灯りがついてない
    蒼い窓が見えてくる
    ・・・・・私の帰る家・・・・・

冷たい鉄の鍵だから 赤いりぼんを結んでた
大事なものを守る鍵と いつの頃から知ったのだろ

    小さな手には少し重たい鍵で
    誰もまだ 帰ってないドアを開ける

    柱時計が鐘を鳴らし
    ”おかえりなさい♪”と歌う
    そしてテーブルの上には いつも
    ・・・・・やさしいメモ・・・・・

冷たい鉄の鍵だから 赤いりぼんを結んでた
大事なものを守る鍵と いつの頃から知ったのだろ

時は流れて
大人になって・・・・・・だけどひとつだけ変らない
あたたかなドアを探して 今も鍵には
”赤いりぼん”

THE CLASS OF 1976
懐かしい木造校舎は卒業アルバムの中
記憶の銀杏並木から金色・・・・・鳩が舞い落ち・・・・・

初恋の少年の名をそっと呼んだ時
罪のない遠い日に帰れそうな気がした

あの頃の一日が今は半日で過ぎ
知る事が増える度 夢はしぼんでしまう

家まで習いたての歌 歌って返った頃は
素足の膝も隠さずに
紺色スカートが揺れ・・・・・
紺色スカートが揺れ・・・・・
紺色スカートが揺れ・・・・・

マジックで名を書いた運動靴をはいて
校庭で風になり乾いた砂蹴ったね

このままスピードを増して誰もが生きてゆくけど
心の片隅に残る小さなイタミ忘れず・・・・

このままスピードを増して誰もが生きてゆくけど
心の片隅に残る小さなイタミ忘れず・・・・
イタミ忘れず・・・・
イタミ忘れず・・・・


ひかりのくに
・・・・・パリン・・・・・と踵で氷を割れば
早起きがうれしい子供に戻る
朝と夜の間はグレイにかすんで
ローズからブルーへ移りゆく
   本気で走ることなんて
   ずっと長い事忘れていたよ
子供の頃って声をあげ泣いていたね
小さな嘘さえ
とても悲しかった

音もなく消える街角の水銀灯
ほうきのようになった冬枯れ並木には
・・・・12月の朝焼けを背景に
   寒そうに浮かんだ季節のシルエット
子供の時にはひかりの国へ飛び
地球の全てと話ができたよ!

時間はまるで砂の梯子のようだね
昇ればサラサラと思い出に変る
心に積もって
夢にも積もって
ある日ふと重さに気づいてしまう・・・・・・・

ルルル・・・・・・・・・・・ 

辻ヶ花浪漫(ロマンス)
もも辻や四辻がうらの一の辻 占まさしかれ 辻占の神

”来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに・・・・・・・・”
・・・・・・・・宵に消え入る 誰の声
”焼くや藻塩の身もこがれつつ”と
あなたが来れば 続けましょう
遠のく人の袖を引く歌は 細く幼いかもろの唄
    想う人に尽くせないのなら
    何が黒髪
    何の化粧

月が枝にかかるまで
待てどもあなたが来なければ
小さな花を胸に抱き
あなたと想って帰りましょう
もも色月夜に咲く花は
青紫の都忘れ
    四辻にゆれるたおやかな影は
    時にはかない
   辻が花


La mere 〜ママ〜
蜜柑の樹の下に埋めた宝の箱
壊れた自鳴琴(オルゴール)
糸の切れた首飾り
シャンデリアの涙硝子ひとつ
時の流れが止まる 胸の奥のドアが開く
     いつのまにか大人になったと気付いたよ
     ママの肩が細く見えて仕方がない
     それは悲しい程に
少し色褪せた あなたの姿は今
冬の月のように密かに美しい

蜜はなんて素敵・・・・・・夢と同じ深さ
Sepiaに染まる部屋
夕日が包む窓
なぜだかとても懐かしく寂しくて
昔住んでいた家が ふと何気なく浮かぶ
     ママがくれた銀色の小さなブローチは
     時を刻んだ色に変ったよ
     ネコの目のような
忙しさに追われ だれもが忘れてゆく
大切な何かを
突然思い出す・・・・・・・・・・・・


月の媚薬
榛(ハシバミ)の枝を少し噛み
あなたの耳もとに息を吹く
目を閉じたあなたを酔わすのは
色づいた木の葉の夜想曲(ノクターン)

   赤い石は二人の未来を映す
   ペルセウス流星群のようね
   今夜の私には透ける翅があるの
   あなたを抱いて飛んであげる

   とぎえる声の中にギリシヤの呪文
   私を忘れなくしてあげる
   金星(ビーナス)の魔方陣(ペンタグラム)に口付けを
   最初で最後の魔法なの

唇のホクロは誘うよ
あなたをはるかな眠りの中へ
銀色の波がおしよせる
私の深い海でおぼれて

   赤い石は二人の未来を映す
   ペルセウス流星群のようね
   今夜の私には透ける翅があるの
   あなたを抱いて飛んであげる

   まつげの先の震えが伝わる程
   秘密は息をひそめて流れる
   とがれた鏡の夜を滑りながら
   いつしかロマンティック街道
      (ロマンティッシェ シュトラーゼ)

航海図のない船
螺旋階段を昇ると
低く古い木の扉
雲に手が届きそうな丘
海を見下ろすカフェテラス

帰らぬ彼を待ちつづける
瑠璃色の瞳
あなたがいれたカフェ・オ・レは
どこか懐かしい香りがする

飾り戸棚(サイドボード)のブロンドのビスクドールは
遠い日・・・・・・
あなたに似せて
彼が買ってきたものかしら

何もかもがあまりに速く流れるから
誰もが祈りを忘れたけど
さざ波の中にあなたは長い間
時代が変りゆく音を聞いているの

ざわめきに時おりかき消されながら
聞こえるあなたの祖国の歌
海に眠る彼のためのレクイエム
悲しく東風を呼んでいるような