恐怖の大増水! 
Photo & Text by  田中 健一

釣行日 4月28日

5時に起床しアマゴ釣りに出発。昨年の9月1日から約半年ぶりの釣行だ。日高川へ向け車を走らせる。

2011
年紀伊半島水害は、東北大震災と同様に「まさか!」の大惨事であった。河川閉塞17箇所を含む大規模山崩れ多数。洪水と山津波で多くの犠牲者が出た。和歌山県だけでも死者不明60人、家屋全半壊2,200棟以上、浸水被害7,300棟以上の甚大な被害。和歌山県では1953年の紀州大水害(7.18水害:死者不明1,046人)以来、近畿地方では2009年の佐用豪雨以来の大災害となった。






水害直後、和歌山へ見舞いに行った日のことを思い出す。椿山ダム湖面を埋め尽くす膨大な量の瓦礫、木材を唖然として眺めていると、通りかかりの軽トラが止まり、作業服姿の恐持ての男の人が降りてきて声を掛けてきた。
100年に一回の水害や」・・
いろいろ話を聞くと、報道にはない深刻で悲惨な被害状況を知る。その人は日高川沿いのダム下流に住む地元の方で、復旧作業に翻弄され疲労困憊している様子であった。たまらず、別れ際に物資を渡そうとすると、見ず知らずの者の申し出に大変恐縮され断られる。
「こんなことしか出来へんけど、何とか頑張ってよ。」
と言いながら強引に軽トラに積み込もうとしたら更に恐縮されて、しばらく問答となる。パッとその人の顔を見た。すると目を真っ赤にして涙を浮かべていた。

あの人は元気だろうか?そんな昨年を思い出しながら山間部を走る。日高川のダム下流はえぐい濁りである。ダム上流はマシだが、工事現場かどこか崩壊した山の岩盤から石灰成分が溶け出しているのか?これまでにない乳白色のきつい青濁りだ。


途中、いつも渡っていた大きな橋が流されて無くなり、下流の河原に巨大な橋のガーター部分が放置されているのを見て驚く。その近くの橋2本も流されたままだ。幹線道路は大丈夫だが、それ以外は路肩の欠損も多く、完全な復旧には長い時間と多大な費用が必要だろうと感じた。



 駐車場所に到着。ぐにゃりとネットフェンスが曲がり、水害当時の砂礫と材木が散乱していた。
「ここまで水位が上昇?」
恐怖の大増水だったことが分かる。この辺りは、河床全体が土砂の堆積で2mほど上昇している感じだ。どんな大水でも生命力の強いアマゴが居なくなることはあり得ないと思っていたが、この状況で釣れるのか?と不安になる。


着替えて入川してしまうと不安を忘れた単なる釣り人に変貌。久しぶりのアマゴ釣りに胸がときめく。解禁からいきなり8592の本流竿を振る。「こんなに重たかったのか?」と感じながら瀬を流す。解禁ならば短竿で数釣りをしようと考えながらも、ついつい長竿での釣りを選択してしまう。
濁りが入っているのでタナを極端に浅く取って、外道でも何でもいいから魚の生命反応を探る。しばらく遡行すると1匹目にウグイが釣れた。まずはひと安心。続いてアマゴが姿を見せる。特にやせていることも無く、小さくも無く、例年どうりのヒレの綺麗な日高アマゴだ。


ポツリ・・・ポツリ・・と言う感じで、しびれを切らす頃には釣れる。普段は流さないような浅い所でアタリが出る。15尾ほどがビクにおさまった。最大でも18センチ。6尾をお持ち帰りとした。それから居残り組、年越し組の大物を狙おうと滝壺や堰堤にも行ってみたが気配は無かった。例年よりアタリが遠かったものの、当日は風も無く気温も上がって汗ばむ陽気となり、長竿をめいいっぱい操りながらの気持ちいい釣りになりました。アマゴは居るし、これから季節が進み徐々に川も良くなって行くのではないかと思います。

ただ、解禁直後にもかかわらず釣り人が少なかったです。残念なことに紀伊半島の河川の多くは寂しい川に変わってしまいました。しかし、皆が釣りや観光を敬遠するともっと寂しい川になってしまいます。被災の無い川を選び、確実な釣果を望む釣り人が堅実なのかもしれませんが、世話になってきた和歌山の河川で、いつもどうりの釣りをしながら復活を見守って行きたいと思います。