思い出の大岩! 
Photo & Text by  田中 健一

釣行日 4月11日


 日高川へ向けて出発した。今年は初釣りの前にある場所へ行ってやらなければならないことがある。昨年、会員の宮崎君が若くして亡くなった。一緒に釣りをしたとき、彼が一番粘っていた大岩の立ち位置が目指す場所だ。お昼前に到着し、供養の線香とビールを持って大岩へ歩み寄る。そこに立って釣っていた彼の姿を重ねながら語り合う。

「済まんけどお前さんの釣り残した魚、釣らせてもらうわ〜」
「おいっす。俺の魚釣って帰ったらばち当たりまっせ」
「あはは。お前さんおらんようなったからしゃないで。諦めろ」
「アマゴ釣れたらごっ走さんでーす」
「やじゃよ魚はやらん。まあビール飲めや〜」
「了解っす」

自己満足な会話を終わらせて深く合掌した。
恒久の歴史を刻む日高川。この大岩で彼は間違いなくアマゴ釣りをした。その歴史に名を刻んだのだ。

「また気向いたらな、じゃ〜な。」

こうして思い出の大岩を後にした。


 翌4月11日が初釣りとなった。暖かいだろうと思っていたが気温3℃と花冷えだ。1枚多く着込んで出発。久しぶりの奈良方面への釣行。道中、大阪と和歌山の風吹峠が整備され、和歌山から奈良へ至る京奈和自動車道の延伸が進んでいた。「俺の釣りのために国交省が道路を作っているのだ〜」・・・早朝から浮かれ気分で運転する。ゆっくり走ったのに予想以上に早く到着できた。園芸品種であるソメイヨシノの語源で有名な吉野山の桜は今が満開で、川沿いの桜も美しく咲いていた。しかし、霊峰山上ヶ岳を望むとまだ雪が残っているではないか。水はまだまだ冷たそうだ。




 橋の近くにスロープがあり、岩盤の瀬が続くポイントを選んで着替え始めた。駐車場所から入川が容易で広々とした本流筋は、場荒れして釣果は期待できないが、短竿の届かない大淵の向こう側や流れが太くて速い流芯の底から釣れ残った型のいいやつ、頭のいいやつが出たらラッキーだな〜と考えながら着替えを済ませる。ちょっとした護岸がある場所なので足場が良く、本流竿をめいいっぱい振れる。
 ハリスは04号で餌はイクラ。少し濁っているのでタナを浅く取ってイクラを切りながら流してみることに。すぐにクンとアタリが出ては左手を返してタモ受けが決まった。小ぶりなアマゴが手の平におさまり、目のビューティースポットの有無、パーマークの数や並び方、朱点や黒点の入り方、尾びれの張り具合をさっと確認する。
 渓流釣りを始めた頃は、その川の特徴を持つアマゴ、氷河期からの遺伝子を受け継ぐ魚体を見ようと、いろんな川に入ったことが懐かしい。実際、どれほど放流魚との混血を勘違いしていたかは分からないが、川や谷によってアマゴの特徴に、ある傾向が見られることに気付く。この付近もかつては「アマゴ銀座」と呼ばれ、純天然ものばかり数釣れたという。今や放流魚主体だが、時折、往時の勢いを感じるような魚も釣れる。
 タルミや淵ではアタリが出るが魚が小さいので錘を追加し、出来るだけ荒波の脇底に餌を入れるようイメージしながら釣っていると美しい27センチの銀化だ。ヒレピンやん。






 アマゴはその美味しさが魅力。川ではアマゴ、海ではアコウ(キジハタの仲間)が1番好きだ。アコウは昔、瀬戸内の家島へ船でよく狙いに行った。釣れるものなら釣りまくりたい魚だが、いつも思うような展開にはならない。
 アタリが出なくなるとイクラを針にたくさん刺して何回か切ってやり、食欲をそそらせてから流すとアタリが出るが、今日はアマゴではなく外道の食欲をそそらせることがほとんどだった。
 昼食をはさんで午後も少し竿を出すがどんより曇り空で気温が上がらず寒い。一人きりで静かな大淵の深い流れを攻める。底を取って目印がゆっくり下流に流れて行く。ゴソっとしたアタリとともに型のいいウグイが釣れ、手荒くリリースする。改めて、「ああ、今年も始まったな〜」と実感する。結局、釣果は伸びずチビをリリースして15尾ほどをお土産にした。
 今年は解禁の釣りをパスしたのですっかり出遅れましたが、何とかアマゴの初日を迎えることが出来ました。5月半ばから型狙いで行こうと思います。今期もいいアマゴに出会えますように!