3月3日といったら「雛祭り」がすぐに連想されますが、旧暦の3月3日には沖縄本島を中心とした各地で「浜下り」の行事が行われます。
 今年、2002年は4月15日(大潮)にあたります。

 私の出身地は糸満市真壁ですが、父親が子供頃までは各家庭で近くの海岸へピクニック気分で潮干狩りに行くという習慣があったようです。現在でも重箱を持って家族で海へ遊びに行く地域もあります。
 そんなわけで今回は、平安座(へんざ)島行われる浜折りの行事「サンガチャー」を紹介します。


浜下りとは

  『沖縄大百科事典』下巻には
(沖縄県内においては)「海浜に下りて災厄を祓い清める習俗、または旧暦3月3日に御馳走を持って海浜へ行き、潮に手足を浸して不浄を清め、健康を祈願して楽しく遊ぶ行事」とある。

 また老若男女が浜辺で過ごしたり、女性だけが浜へ下りる地域などがあり、その他この日に海で亡くなった死者の霊を弔う地域もある。
 浜下り由来には美男に化けた蛇の子供を身籠もった女性が浜へ下りて身を清め、流したという伝説がある。

[沖縄大百科事典刊行事務局 1983 沖縄タイムス社]


平安座島
 沖縄本島中部東側、与勝半島の先に位置する与那城町平安座は平成14年3月現在の人口が531世帯1583人の島である。 

 海中道路建設を条件に昭和45年に米国石油企業を誘致し、その後本土系石油企業3社が立地したため、平安座島は石油基地のある島としてよく知られている。 
 昭和47年に完成した海中道路は、屋慶名と平安座島を結ぶ全長4.75qに及ぶ橋で、道路の両サイドには遠浅の干潟が広がっている。海中道路の結ぶ島々では海水浴をしたりバーベキューをしたり多くの行楽客が訪れる。

サンガチャー
 旧暦の3月3日から5日にかけて行われる。初日は海で亡くなった人のために、浜に下りて(竜宮にいる霊に向かって)祈る「ドゥグマチー」。2日目は神人と婦人達による「トダヌ漁儀式」と豊漁を願う「ナンザウガミ」を行う。3日目は東西漁民が太鼓や三味線に合わせて歌いながら行う「縄あぎもうい」の行事がある。

2日目の行事
 以下の記述は自分が実際に見た、2000年4月8日に行われた2日目の行事の様子である。

 カミンチュ(神人)の1人が魚を銛で突きその場を回り、他の人々も太鼓のリズムにあわせて手拍子をし、踊る。 
 祭場での行事が終わると、祭場から旗頭や魚の形をした御輿を担いだ行列が海岸まで続く。
 行列は潮がすっかり引いた海岸に下り、ウガンジュのある(写真左に小さく移っている)島へ渡る。行事を取り仕切る代表を先頭に住民・見物客らが歩いて島を目指すが、1qほどの道のりは浅瀬とはいえ、膝上まで水に浸かる所もあり、普段歩き慣れない自分は一番最後に島へ着いた。

 島へ着くと、人々は細い登り道を登っていく。頂上でもある島の先端に3つの香炉があり、代表はそこで海に向かって、島の繁栄を祈る。拝みを済ますとかぎやで風節を踊り、その場にいた参加者には酒と刺身が振る舞われる。
 写真に写っているカメラを持つ人々の足下には切り立った断崖がある。あるカメラマンはもう1人に体を掴まえてもらいながら、崖の縁に立って撮影していた。
 この場所は狭いだけでなく大勢の人が参加しようと登って来るため、自分はどんどん崖の方へ追いやられてしまい、カチャーシーを踊る男性に「落ちないでね」と心配された。

 その後参加者らは集落へ戻り、公民館で慰労会的な席が設けられ、この日の行事の全てが終了する。