旧暦の12月8日には、ムーチー(月桃の葉に包んで蒸した餅)を作り、子供は年の数だけ部屋に吊します。ムーチーを食べることによって厄を祓うと考えられているようです。
 この時期は1年中で最も寒さが厳しいといわれる時期で、この頃の寒さのことを「ムーチービーサ」ともいいます。

 また、その年子供の生まれた家庭では、生まれた子供の健康を願って「チカラムーチー(力餅)」という、アダンの葉に包んだ普通の餅より大きくて黒糖やイモを入れない白い餅を作り、生まれた子供に口を付けさせます。

大里村に伝わるムーチーの由来

 昔、首里金城に妹と兄がいました。兄はどういうわけだか、大里村に移り住み、村を襲い家畜を盗み、時には人間までも食べる鬼となっていているという噂が広まりました。妹は実否を確かめようと思い、大里の兄が住むという洞窟に行きました。
 洞窟の中で妹は散乱した家畜の骨や、筋肉隆々で、口は裂け牙がむき出し目は爛々と輝き、赤黒い毛に覆われた鬼の姿に変わり果てた兄を見ました。
 家へ帰った妹は、鬼となった兄を退治しようと考えて、普通の餅と餅の中に鉄を入れた鉄餅を準備して洞窟へ待っていき、「兄さんおいしい餅をたくさん召し上がって下さい。いっしょに外の景色を見ながら食べましょう。」と、妹は言葉巧みに誘い出し、崖の近くまでおびき寄せると、妹は鉄餅を鬼になった兄に差し出しました。
 鬼がなかなか餅を食べないので、妹はとてもおいしそうに普通の餅を食べてみせました。それを見た鬼は鉄餅を口に入れましたが噛み切れませんでした。餅を食べあぐみながら妹のホー(陰部)を見つけた鬼はいぶかって、「お前の下の口は一体なんだ?」と尋ねました。すると、妹は「上の口は餅を食べる口。下の口は 鬼をかみ殺す口です。」と言ったかと思うと、妹は着物をまくりあげて、下をあからさまにして鬼である兄に迫りました。びっくりした鬼はふいをつかれ、足を踏み外して崖下に転落してしまい、死んでしまいました。 

この鬼を退治したのが旧暦の12月8日なので、沖縄ではその日を厄祓いの日としてムーチーを作って食べるようになったということです。 

 首里金城町の御嶽(ウタキ:拝所)に死んだ鬼の角を葬っており、そこはホーハイウタキと呼ばれて鬼餅伝説の拝所と知られているらしいとのことです。 
 

参考:「沖縄まが人 」発行『日刊OkiMag』

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