真栄里の綱引き

 300年余りの伝統があるといわれる真栄里大綱引きが、10月7日(旧8月16日)に、同集落のメーミチ広場で開催されました。去年は参加できたのですが、そのまま忘れていたので、今回はその時の綱引きの様子をまとめたいと思います。

概要
 十五夜綱引きが多い中、真栄里の綱引きは現在旧暦8月16日におこなわれているが、以前は旧暦8月15日に行われていたらしい。
  稲の収穫儀礼とその予祝的性格を持っているとされている。
 集落がイリ(西)とアガリ(東)に分かれ、雄綱と雌綱を毎年交代して引く。かつては アガリ(東)が雄綱、イリ(西)が雌綱と決まっていたが、大正の頃にくじ引きで綱を決めるようになり、戦後に毎年交代制になったという。
 綱の大きさはシタクが乗る頭の部分で太さ回りが約60センチ、雌綱(長さ30〜31間)と雄綱(長さ25〜26間)合わせると全長は100メートル程ある。手綱はない。
 

平成17年9月19日  
 10時頃
 
真栄里の集落に着くと、綱引き会場であるかつては馬場だったというメーミチ広場には、まだ観客は集まっていなかった。
 新しく建てられた東屋には来賓席が設けられ、その正面に中心線が引かれていた。
 事前に綯われた綱は、雌綱がイリの公民館に、雄綱はアガリ(東)のムートウヤの隣にとぐろを巻くような形で置かれていた。

 アガリのムートゥヤー屋敷内にあるカミヤー(神屋)を見ると、ウガンはすでに終わった後らしかった。

  ムートゥヤーと屋根付きの控え場所では、アガリの人たちが獅子や猿などの衣装を付けるなどの準備をしていた。
 カメラを持った見物客の姿も増えてきて、綱の周辺に集まり始めた。本格的なカメラを持った人々も仕度の様子を撮るなどしていた。

11 時20分頃

 

 準備が進むうちに、控え場所の前では三味線と共に踊りや棒術が始まった。(写真左)

 イリでは獅子や猿の衣装に向かってウガンが行われていた。(写真右)

   
11時30分過ぎ

 ドラやホラ貝を鳴らしながら、綱が引かれるメーミチに向かい、東西から
旗頭や綱が出発した。
 道ジュネーの順番はほぼ以下のとおり。

@棒旗(2人)  A猿と獅子  Bミルク   C按司と家臣
D旗頭(2本)  E綱

公民館を出発
     


12時

メーミチに到着。

観客の前を、行列は中央線まで進んで折り返してくる。

 


猿と獅子
 猿が持っている赤い玉で、獅子の頭を叩きながら誘導する様が観客の笑いをとっていた。
 この後、猿は獅子の背中に乗せられて戻ってきた。


ミルク


アガリから来た雄綱

  旗頭のガーエーが始まる。
東西とも「民安」・「國泰」と書かれている。
     

 旗頭の後方では、六尺棒を持った男性らが棒を頭上高く、円をかくように立てている。
 やがて、旗頭と入れ替わり、中央線で東西が合わさり、棒を回すように打ち合わせた。
 確認はしていないが、これが糸満市史に記載のある「巻棒」かと思う

 
     
 棒旗
  棒旗や棒術の演舞などが終わると、シタクを上に乗せて、中央線まで綱を担ぎすすむ。
 雄綱の頭を立て、その上に雌綱の頭をゆっくりとかぶせていく。
  シタクたちは大人に支えられながら綱を降りる。

 

12時30分

 カヌチ棒が差し込まれると同時に引き合いが始った。
  結合部に男性2人が乗り、正拳突きをしているが、綱を引く間隔の方が俄然早い。約1分ほどで勝負がついた。この年はイリが勝利した。

 勝負は1回のみ。
  例年はイリが勝っているが、平成18年はアガリが勝利した。

   

 綱引きが終わるとすぐに綱を端に寄せる。
 次に、 東西の上半身裸の男性が綱を引いた中央線を挟んで対峙する。白い旗が振り下ろされ爆竹の音とともにぶつかり合い、ガーエーが始まる。

 2回ともイリがアガリを押し負かした。

 その後、東西ともに棒術が披露される。


 真栄里の棒術は、ヘーシャグサン(四方固めの棒)、サンニン(1対2で打ち合う)、トゥンボー(4人棒)があるというが、そのほかにも写真のようなサイを使うものもあった。
 代わる代わる10分以上演舞がされたが、型や棒が飛ぶほど力強い打ち合いなどは、どれも見応えがあるものだった。


 12時40分頃
  昼の行事が終了し、それぞれの保管場所に綱が運ばれ、夕方まで休憩となった。
 イリの控え場所がある公民館近くの広場では、ミルクの面や獅子の面が中央に置かれ、とぐろを巻くように置かれた綱の一部が切り取られていた。

夕方17時頃から、メーミチ広場に人々が集まり、舞台芸能とエイサーがおこなわれた。

感想  
 糸満の綱引きといえば、糸満ロータリーで行われる大綱の次に真栄里の綱が有名なのではないだろうか。市内の綱引きは前日の十五夜で済んでいる地域が多いためか、真栄里住民以外の観客も多い。大きなカメラを担いだ人達も観客席の最前列を埋めていた。
 真栄里集落は市内でも人口が多い方であると思うが、それでも1集落が行う綱引きとしては規模が大きい。実際のことはわからないが、人手を集めるために保育園や婦人会にパレードしてもらうでもなく、参加者不足の問題を抱えているようには見受けられなかった。子供や青年、壮年問わず様々な年代の大勢の住民が力を入れて参加できて行事が成り立っていると感じた。
 夕方からのエイサーも観においでと声をかけていただいたのだが、都合により行けなかった。きっと、こちらも住民同士が演者であり観客となるのだろうと想像される。
  これからも、こういう雰囲気の行事を観ていきたいものだとあらためて思う。
   



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