2月19日午前4時7分ごろ、千葉県野島崎の沖合いにて、海自イージス艦「あたご」と、鮪延縄漁船「清徳丸」との衝突事故が発生した。
この事故で、清徳丸の船体は割れ、操舵室付近が沈没し、乗組みの父子が不明となっている。もっとも海水温の低い時期ゆえ、安否が心配であり、一刻も早い救出が望まれる。無事を祈る。
さて、テレビ、新聞などのメディア報道にふれ、感じたことを私なりにまとめてみたい。
メディアでは、イージス艦が一方的に過失があるかのように報じているが、どうだろう。
海上での航行は海上衝突予防法により、その優先権が決められている。この点はでは、確かに先のような見解はもっともである。
一方、日本以外の多くの、「ふつうの国」では、軍艦が優先権をもつ。
これに対して、日本では海自の艦艇が軍艦でないという見解ゆえ、こうした国際法に準じた法整備がなされていないという背景があるのだ。
また、実際の運行からである。
私たちも航行中に大きな船舶と行きかう。大型の船舶は停止にしろ、回頭にしろ、時間を要する。そのため、優先権が自船にあったとしても、自船を早い時期から、大きく回避させて、譲るという意志表示をするのだ。当然、船の動きなど含めたあらゆる情報の相互共有が前提である。
海保などが専門的視点より調査を進めているが、現時点で確実に言えるのは、両船ともに見張りが不十分だったのだろう。そして、イージス艦側からもう少し早く、警笛なりで存在をしめすことができていれば、防げた事故かもしれない。
漁船などの自動操舵(オートパイロット)は便利な面がある一方で、過信による事故の危険性がある。あくまでもワッチの欠かせない機能なのだ。
私たちも航行中、しばしば漁船と行きかう。少ない乗り組みで、監視不十分のまま操業している場面を多く目にする。そのため、私たちは、あらかじめ漁船と十分な距離を確保して航行し、漁船との事故防止を心がけている。
次に、ライフジャケット着用について述べたい。
ライフジャケットを着用していれば、救助の可能性がぐんと、増大することは海保が示している。今回もライジャケをつけていたらと、惜しまれてななない。
この事故を機会に、ワッチの徹底、ライジャケの着用の必要性をあらためて思う。 そして、最後に報道姿勢についてだ。
19日事故発生後の朝のワイドショーで、現場の状況をヘリで報じている番組があった(女性のアナウンサーだったと思う)。まったく知識のないようすで、わけのわからない説明をしていた。かえって混乱を招くような報道に憤りすら感じた。
また、早い時期より、一方的に海自に問題ありという報じ方にも疑問を抱くところだ。
平成20年2月20日
隊長 水野 孝吉
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