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レニングラード国立バレエ 華麗なるクラシックバレエ・ハイライト

すっかり恒例となったレニングラード国立(マールイ)バレエの夏の来日公演。
冬はオケ付き全幕ものですが、夏はだいたいパ・ド・ドウ集という感じです。

2002.7.19 なかのZERO大ホール (中野区) 
2002.7.20 リリア・メインホール (川口市)
  (メインのキャストは両日とも全て同じでした。)

 第1部 

「白鳥の湖」第2幕より グラン・アダージョ 
シェスタコワ、シャドルーヒン レニングラード国立バレエ 

 ルジ・ガラではとてもチャーミングなシルフィードを踊ったシェスタコワのオデット。考えてみたら、今回シェスタコワが踊ったのは、全て白いバレエでしたね。今年始めの「ドン・キ」「バヤデルカ」ともに、シェスタコワの飛躍は素晴らしいものがあったので、今回もきっと魅せてくれることだろうと、期待していたら本当に期待通りでした。いや、それ以上だったかも。まず、何よりも佇まいが、大変プリマらしくなりました。肢体から余計なお肉(もともとそんなにあったわけじゃないけど)が全くなくなった感じで、全体的にとてもすっきりと美しくなりました。バレリーナのこういう変化を目の当たりにするのは、まことに嬉しい事ですね。 
で、肝心なオデットの踊りですが、持ち味であるリリカルさがいかんなく発揮されて、見事。優しげな面持ちも、素直でありながらも芯の強い感じも全てオデットらしさに結びついていて素晴らしかったです。ぜひとも全幕が見てみたいと思わせるに十分なオデットでした。対するシャドルーヒンはというと、奥さんのがんばりにくらべたら今一歩というところですね。悪くはないけれども。でもねえ、ジークフリードって王子様だしね。悪くはない程度では、満足できないというものです(厳しすぎ?)。ぜひともがんばっていただきたいものです。 
コールドバレエは相変わらず手堅い感じでした。大きな白鳥を踊ったごひいきミリツェワですが、ちょっと太ったかな。でも、上体の表現がやっぱりいい感じです。
 


春の水 
エフセーエワ、マスロボエフ 

 新星エフセーエワちゃん。ピンの踊りを見るのは今回始めてでした。「春の水」はルジ・ガラのプログラムにも含まれていて、都合4回見たわけですが、この演目はだんだんとよくなっていきました。というかまず、最初にルジ・ガラで見た時に、エフセーエワの化粧に困ってしまいました(笑)。これに関しては、ルジ・ガラの方でもう一度書くので、ここではやめますが、19、20のマールイ・ガラでは、化粧も普通になり、踊りに集中して見ることができてよかったです。かわいいんだから変な化粧をしなくてもよろしい(笑)。ボリショイ版に比べたら多少派手さはなくなっていましたが(漫画「アラベスク」でも有名な背面飛び込みはやっていなかった)、エフセーエワのしなやかな肢体はこのバレエによく合っていました。踊るのが楽しい〜、という感じもよかったです。マールイ・ガラの二日間は、最後、幕に引っ込むときのリフトが難しい方(ボリショイと同じでバレリーナのお尻を持ち上げるやつ)になっていて、意気込みも感じられました。年末に地元では「くるみ割り人形」をやりますが、わたしとしては、断然エフセーエワ希望!です。全幕で見たいわ〜。マスロボエフですが、すみません。あまり記憶に残らず。短い作品だし、ひたすらサポートだからなあ。 


「ジゼル」第2幕より、パ・ド・ドウ 
ロマチェンコワ、プハチョフ 
 
 ううむ、これは乗れなかった。ロマチェンコワ、あまりジゼル向きのバレリーナとは思えない気がする。照明が悪いのかなんなのかわかりませんが、肌とか青白くなってなかった。全然月光に浮かび上がる感じ無しでして、それでウィリなの? と突っ込みたくなってしまう。踊りの方も、わたしの好きな部分をはしょってやっていたりして、なんなの〜てな感じでした。プハチョフはなかなか佇まいの美しいダンサーなので、悪くはなかったです。 


「シェヘラザード」よりパ・ド・ドウ 
マハリナ、ルジマトフ 
 
 去年の10月公演と同じペアによる同じ演目。パ・ド・ドウのみなので、ひたすらに愛し合う二人でした。たとえセットが無くても、この二人が踊り出すと濃密な空間が瞬時に生まれる。かえってセットが無い分「シェヘラザード」空間の純度は高かったかもしれません。 
ああ、それにしても美しかった。もう、連ねる言葉はそれだけです。刹那の愛の青白い炎。ゾベイダと金の奴隷との。そしてそれを見つめるわたし達観客にとっては、ダンサーが紡ぎ出す舞台こそが、刹那の愛です
 
… 2002/08/07 …

 第2部 

「ドン・キホーテ」より グラン・パ・ド・ドウ  
ステパノワ、シヴァコフ レニングラード国立バレエ 
 
 ガラにはつきものの、「ドン・キ」パ・ド・ドウ。今年始めに名古屋でみたステパノワですが、テクニックはあるし悪くはないのですが、あまり好みのバレリーナとは言い難いのですよね〜(笑)。どこがどうと言われると困るのですが、全体的にもう少し華が欲しいかなというところでしょうか。華という点で言えば、ヴァリエーションを踊ったコシェレワの方が、わたし的に好ましい華を持ったバレリーナということになります。コシェレワのキトリが見てみたいものです(失礼か)。
パートナーのシヴァコフは、今回のプログラム(ルジ・ガラ、マールイ・ガラとも)で大車輪の活躍です。ルジ・ガラでは「海賊」を踊っていて、これがなかなかの出来映えでありました。日本の暑さのせいもあるのか、日を追うごとにだんだんとお疲れな感じが見えてきて、それが少し残念でした。まだ少し鍛え方が足りないかな(笑)。「海賊」がよかっただけに「ドン・キ」も同じように踊って欲しかったです。ヴァリエーションはコシェレワとギリョワでしたが、どちらの日かは忘れましたが、コシェレワにアクシデントがあったようで、1日ミリツェワが代役で踊っていました。最後ちょっと音が余っていたかな。急な代役はやはり大変そうです。でもミリツェワも好きなので、ちょっとラッキーでした。



「眠りの森の美女」より グラン・パ・ド・ドウ 
クチュルク、ミハリョフ 
 
「眠り」のパ・ド・ドウはやはり難しい。としみじみ思いますね。これはルジ・ガラと一緒の演目なので、4回見ましたが、最後の方がよかったかな。最初のうちは、二人の音の取り方とかが、バラバラだったし、うーん、ちょっと…という感じだったので。しかし、ミハリョフはなかなか良いダンサーになってきました。ちゃんと王子様だった。去年より頬のあたりの肉が削げて、すっきりしてましたね。踊りもつま先まで神経が行き届いてる風で(王子様では特に大事だと思うの)よかったです。クチュルク、いいとは思うのだが、もう一つ何かが足りないような気がする。例えばニーナと比べてしまうとその何かがはっきりとしてくるわけで(ってそれでは、あんまりかわいそうかな)、でも、オーロラほどそういうオーラ(しゃれじゃないのよ)が必要な役もないわけでして、あー、やっぱり難しいのよね〜、としみじみ思うわけですね。  


瀕死の白鳥 
シェスタコワ 

 うーん、白鳥だった〜。よかったです〜。全身から醸し出される叙情的な雰囲気が素晴らしい。シェスタコワ、多分、今何を踊ってもいいのではないのかなと思わせる頼もしいプリマになってきました。来年ルジマトフと踊る「海賊」全幕もほんっと楽しみです。 


スポーツのワルツ 
ルダチェンコ、シヴァコフ 
 
 うう、もうこれやるのやめたら? と言いたい(笑)。シヴァコフくんを無駄に疲れさせるだけっつう感じだぞ。バレエを見るのが好きな人で、これ、見たい人っているのかしら。いないと思うな。 
 
パキータ 
ペレン、ルジマトフ レニングラード国立バレエ 
 
 ペレン…、どうしてあなたは、トリを踊るプリマだということをもっと意識しないの? なんかね〜、もったいなすぎる〜。それから、「パキータ」をそんなにサラサラっと踊ってしまっていいものなのかという大いなる疑問も残るわけです。登場シーンだって、『もっと、わたしを見て! わたしがプリマなのよ!』オーラをどんどん放つべきだし、そういう演目だと思うのです。ちょっとそう意識するだけで、倍ぐらい印象が変わると思うのに。ああ、やっぱりもったいない。見た目完璧なバレリーナなのに、表情がまだ硬いから、踊っているのが楽しそうに見えないのも、問題だと思う。ルジと踊るのそんなに楽しくないの?とか勘ぐっちゃうじゃん(笑)。こんなことばっかり書いてファンの方にはまことに申し訳ないですが、わたしも期待するがゆえなのです。早くシェスタコワみたいに、一歩大きく前進して欲しいです。 
 さて、ルジマトフですが、19日の出来は正直言っていま一つでした。踊りに精彩が欠けていたし、決め所で決めきれていなかった。ルジ・ガラを二日間見てきたファンの方々は、きっと、ガラで全精力を使い果たしてきたのだわと思ったことでありましょう(もちろんわたしもその一人)。それでも、ある程度のレベルにはちゃんとあるわけでして、(相変わらずなんと美しい立ち姿!)がっかりするというほどではもちろんないです。ルジマトフを長いこと見ていると彼のダンスに対するこちらの要求は、どこまでも高くなっていくのですね。でもそれは、彼自身が悪いの(笑)。こっちが要求したものより遥かに高いレベルの舞台をポーンと見せてくれることがあるから(例えばこの前のレドフスカヤとの「ドン・キ」)。というわけで、初日はちょっとばかり不完全燃焼ぎみでありました。 
で、1日あまり良くない日があると2日目は必ず良くなっているというのが、ルジマトフのすごいところ。日本公演がこれで最後だからという心理的なものも働くのかもしれませんが、やっぱり最後はきちっと決めてくれるのです。「パキータ」はとにかく、『かっこいい』の固まりみたいなバレエなので、もう、いちいちかっこいい(笑)。手をひるがえして腰に当てる、あのポーズ(なんでルジがやるとあんなにヒロイックでかっこいいかねえ…溜息、笑)を考え出してくれたプティパさんにもたくさんの花束を(笑)。惜しむらくは(また最初の繰り返しですが)、ペレンちゃんにルジの3割ほどでもケレン味があればな、ということです。ああ、うう、もどかしい。そうなれば、もう、びっくりするほどいい舞台になるだろうに(ってそうなったらなったでまた違う文句いいそうだけどさ、笑)。 
 でも、「パキータ」っていい演目ですよね。パキパキしたコールドバレエもすごーく好きだわ。ルジもこれは踊り続けているってことは、好きなのかしら?なるべくずっと好きでいて欲しいです。本当に「ドン・キ」はもう踊らないのなら(うえーん(T_T))せめて、せめて「パキータ」を踊り続けて欲しいです。切実なお願いです。そしてまた見せてね〜。 


カオル
… 2002/08/11 …

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