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新国立バレエ「ロメオとジュリエット」
2004/4/17(土) 新国立劇場 オペラ劇場
東京フィルハーモニー交響楽団
指揮 アンソニー・トワイナー

ジュリエット 酒井はな
ロメオ 山本隆之
マキューシオ 吉本泰久
ティボルト イルギス・ガリムーリン
ベンヴォーリオ 奥田慎也
パリス 森田健太郎
「マノン」で生マクミラン舞台に目覚めたので、マクミラン・バレエを日本にいてそうそう観られるもんじゃない、全幕で上演するのは新国立だけと思って今回も行きました。
まず全体の感想ですが、やはりマクミランって偉大だわ〜と改めて確認。「ロメジュリ」は一応映像も持っていて(フェリ&イーグリング)、比較的何回かは見ていたのです(結構好きらしい)。「ロメジュリ」は音楽も物語も好きなので、どんな版でもそれなりに楽しめてしまうのですが、今回生舞台をみて思ったのは、マクミラン版は音楽と物語と振付の一体感がやはり格別だな〜ということでした。
キーロフのラブロフスキー版は、バレリーナに重きが置かれているので、ジュリエットの物語感が強いし、原作の持つ短くも激しい恋を駆け抜けていった二人、という雰囲気は少ないですよね。
「ロメジュリ」という恋愛悲劇に特有の“うねり”とか“軋み”とか“痛み”とかがマクミラン版には一番良く表れていると思いました。(いや、しかし、クランコ版やヌレエフ版の生舞台を観ていないから、言い切っちゃだめかな)

群集シーンから何かをはらむ感じというのがあって(新国立ダンサーにそれが上手く表現できていたかは別にして、うーん、というか「マノン」の時よりもちょっとテンション下がってましたね〜)もちろん、舞踏会、バルコニーのPDD…とどこをとっても張り詰めた感じがあって、たるんだところはどこにもない。
プロコフィエフの美しいけれども難しい音楽をすみずみまで使って破綻がない。そんなマクミラン版「ロメジュリ」が傑作じゃないわけはない、という感じです。

しかし傑作も踊り手次第では凡作になってしまうわけですが、群舞がちょっと「マノン」の時よりも手抜いてないかという感じだったけれども、主役の二人はステキでした。

酒井さんは舞台で見事にジュリエットを生きていました。
「ロメジュリ」をみてて思うのは、ジュリエットをやる(“演る”とあててもいいか)ということは、バレリーナにしろ普通の女優さんにしろ、エポックメーキングなことなんじゃないかなということです。やる前とやった後では何かが違ってくるんじゃないかなと思うのですが、まあ、こう考えるのは物語としての「ロメジュリ」好きなわたしがそうだったらいいなと勝手に思い込んでるだけのことかもしれません。
そしてまた思うのはジュリエットというのは、決して難しい役でもなんでもないんじゃないか(えっと、演技面において)ということなんですね。
一目で恋に落ちて、一気に恋愛の幸福の絶頂へと駆け上がり、その想いにまだ包まれているうちに死んでいく、なんて女だったら誰だってやってみたいことだと思う(ってわたしはそうじゃない、という方がいらっしゃったらすみません)わけです。

あとはテクニックをいかに演技に合わせていくかということかと思うのですが、その点酒井さんは、実に安心して観ていられるというかどちらも申し分なかったです。綺麗なラインを描く腕、脚、背中(マクミラン版では重要だよね)全て情感があり美しかった。

ロメオの心情というのは、男じゃないのではっきりはわかりませんが、どうなんでしょ。男の人はロメオのように死んでいくのはよしとしているんでしょうか。

さて山本さんは、ごく自然体でロメオになっていたと思いました。そのへんにいるちょっとかっこよくて、ちょっと女の子にモテる気のいい若者でした。ジュリエットと出会ってこれが、本当の恋というものか〜、とるんるんしていて、でも男友達のこともすごく大事で、後先考えず、ティボルトを殺してしまう。
ジュリエットは恋をしたとたん女性として成長するけれど、ロメオはティボルトを殺してから成長するんですね。遅いですね(笑)。

二人のPDDは、パートナーシップも良い感じで、バルコニーはみずみずしく、寝室はそこはかとなく色っぽく良かったです。マクミラン版を日本人二人が踊っても、違和感ないんだわ〜と嬉しかったです(実は少し心配していた)。

ラストシーンではやはりグスっときました。これはラブロフスキー版を観てもそうなので、シェークスピアの物語の偉大さもあるのでしょう。

主役二人はよかったのですが残念ながら、マキューシオが演技面ダンス面とも弱かったですね。がんばっていたとは思いますが、鮮やかな印象を残して死んでいく、という感じにはちょっとほど遠かったかな。

踊りで感心したのは、マンドリン・ムック隊隊長、もといマンドリン・ソリストのバリノフくんの軽やかさとチャーミングさでした。

来シーズンはマクミランものはないようですが、いつか「マイヤリンク」とかもやって欲しいものです(って難しいかいなあ )。
カオル  DATE :: 2004/05/24 Mon

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