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K-バレエカンパニー「コッペリア」全3幕 名古屋公演
2004年6月2日(水)愛知県芸術劇場大ホール

音楽 レオ・ドリーブ
原振付 アルトゥール・サン=レオン
演出・再振付 熊川哲也
指揮 アンソニー・トワイナー
グランドシンフォニー東京

スワニルダ 荒井祐子
フランツ 熊川哲也
コッペリア 荻野曰子
コッペリウス博士 スチュアート・キャシディ


掲示板にも書きましたが、「コッペリア」の生全幕舞台を観るのは初めてでした。それからKバレエも初めて。ということでいろいろ楽しみな公演でした。

「コッペリア」についてはあまり詳しく知らないので、まずちょっとおさらい。(パンフレットより)
初演はパリ・オペラ座というのは知っていましたが、パリオペの「コッペリア」は全く知らないのだった(マチュー・ガニオでDVDが出ているのだっけ)。ロシアの方はプティパが振付けているみたいですが、その後チェケッティ/イワノフ版として定着し、そしてこの版がイギリスに渡り、後々ライト版が作られたということのようですね。
そしてKバレエは熊川版ということになるわけですね。
コンクールなどでよく踊られるスワニルダのヴァリエーションは、ロシアのものなのだろうか?うーむ、よくわかっていないわたし。
ま、それはいいとして(いいのか)、「コッペリア」は「白鳥の湖」のグラン・アダージョみたいな、こうでなきゃいけない(とわたしが勝手に思っている)という明確な振付がないので、もともと自由度が高い作品と思われます。

舞台は総じてレベルが高く見応えがありました。熊川演出のせいなのか(そうなのだろうな)、群舞も踊る場面が多いです。
マズルカやチャルダッシュといった民族舞踊のシーンが多いので、ダンサー達はきびきびとよく踊っていました。
バレリーナのソリストクラスのダンサーは、みんなスワニルダのお友達をやっていました。康村さん、長田さん、神戸さん、みなさん上手です。
荒井さんももちろんなんですが、ソリストの方々、ポアントの音がほとんどしないのですよね。うーん、すごい。

男性ダンサーが女性に比べると今ひとつかな、というところですが、まあこれはこれから徐々によくなっていくのかなと思います。
問題は熊川ぐらい(とはいかないまでも)踊れる男性ダンサーが、そろそろ出てこないといけないんじゃないかなということですね。古典バレエの全幕をこの先もずっとシングル・キャストでやっていくのは(こうしてツアーをし続けるのであれば)限界がいつかはきてしまうでしょう。

しかし全幕の古典バレエで毎年ツアーをしてくれる日本のバレエ団は、Kバレエしかないですよね。松山バレエは毎年ではないし、東京バレエは古典の場合ゲストダンサーを呼んで、そして地元には絶対こない(何故かな〜、結局採算とれないからかしらね、まあいいけれども)という感じですか。
そんな意味でもKバレエは貴重な存在です。

さて主役のことですが、荒井さん、大変よかったです。スワニルダは勝気ちゃんなところが、なかなか他のバレエの主役にみられない良さだと思うのですが、キュートな勝気ちゃん振りがよかったです。怒りんぼ顔が可愛かった。
テクニックも申し分ないし。ポアントで立った時のバランスのよさ、安定感が素晴らしい。
熊川さん、フランツってのはまさに水を得た魚な役柄ですね。王子様もまあそりゃ悪くはないんだろうけれど、こういう役の方が本領発揮かと思われます。
可愛い婚約者がいるのに、新しく現れたミステリアスな女にちょっかいを出さずにはいられない、そんなわっかりやすーい男。軽やかに楽しげに演じていました。そして熊川さんもジャンプの着地音がしないこと。すごいです。

あまりにも二人とも上手いので、特に何もいうことはない、というほどなんですが最後のGPDDは超絶技巧満載で楽しかったです。
フランツのヴァリエーション、マネージュのところで、スケートの技で(って詳しくないけれど)トリプル・ジャンプの後連続してもう一度トリプル、それからダブルというのがありますが、これのようなことをしていました。
うーむ、こんな文ではよくわからないかもしれませんが、ジャンプして二回転したあと普通は着地してから数歩助走がありますよね、バレエの場合。しかし、その助走がほとんどなかった、無いように見えた。床について、またすぐ飛び上がって、二回転していました。
みた時、ひえー、こんなの初めてみるよー、なんなんだ一体?!と思ったもの。
こんなこと出来るのは、今の熊川ぐらいでありましょう。
荒井さんも得意なフェッテやピルエットを存分にみせてくれました。

あと忘れちゃいけない、キャシディのコッペリウス。良く作り込んだ演技で舞台を締めていました。ラストもみんなの輪に入ってのハッピーなものでした。

観終わった後、楽しい古典全幕バレエをみられて楽しかった〜、という満足した気持ちになったのですが、惜しむらくは音楽ですね。
うーむ、これぐらいでよしとするかバレエなんだから、って考えもあるかもしれないけれど、音楽がもうちょっとよければもっと盛り上がったと思うのよ。

二日後に観た松山バレエの「ドン・キ」はまさにそこが対照的で、Kバレエは主役のテクニックで音楽の貧弱さを感じさせないぞ、という舞台で、松山の方は、主役のテクニックが足りない部分を演奏の華やかさで補おう、という舞台でしたね。
後者の方がバレエの舞台本来のあり方だと思うし、相乗されていくのが一番ベストだと思います(新国立の「マノン」は数少ないそう思えた舞台、えっとマールイの舞台はこのさい置いておきます)。
Kバレエももうちょっとそのへん考えて欲しい(いや、考えてはいるのだろうけれど、実際問題難しいのだろうな)。

えー、色々書きましたが、Kバレエは、これからどんどん順調に伸びていって欲しいです。そしてもうちょっとチケット代とパンフレット代(3000円!)を安くして欲しいです(って結局それかい)。
でもパリオペの「ジュエルズ」よりはお得感があったのは確かです。

2004/06/12 Sat カオル

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