アナニアシヴィリの眠れる森の美女
ニーナ・アナニアシヴィリとボリショイ・バレエ&世界のスターたち 2001年10月3日(水)愛知県芸術劇場大ホール ニーナ・ガラは91年、93年の公演は名古屋でもあったのですが、98年のものは名古屋ではやってくれず、寂しい思いをしたものでした。(98年はキーロフを出たラリッサ・レジュニナも来ていたのでなお残念)
なので、わたしが生のニーナを見るのは実に93年の公演ぶり、なのでした。(おお、なんと8年ぶり…、月日のたつのは早い…しみじみ…) ニーナに関してはすごーく思い入れがある、というわけではないのですが、中央アジア的容姿とロシア・バレエ〜な踊りのスタイルは、やっぱり、好きだわ〜、というやつでして、今回見ることができてよかったです。 第1部 アット・ザ・バー (全員) 一流ダンサー達のバーレッスンを垣間見る、というのはなかなか貴重な体験かもしれません。舞台の本当の出し物とは違うので、ダンサーのみなさんの間にもリラックスムードが漂っていて、そんな雰囲気に触れられたのも新鮮でした。 しかし、ここでびっくりだったのは、みなさん言っておられましたが、やはりファジェーチェフの変貌ぶりかも〜(笑)。いや、貫禄があって先生らしくてよかったけどね。現役バリバリの頃を知っている身としては、ちょっと悲しいものがないでもなかったです。まあ、しかしファジェーチェフはこういうふうに落ちつくのが、正解でそれはそれで素晴らしいって感じかなあ。ヌレエフの例を挙げるまでもなく、ずーっと現役で踊り続けるってことは、華やかだけれども荊の道ですもんね。 3つのプレリュード 音楽 ラフマニノフ 振付 B.ステーヴンソン ニーナ・アナニアシヴィリ&アンドレイ・ウヴァーロフ もちろん初見の作品。バレエ劇団内の恋人達という設定。アット・ザ・バーからの流れはなかなか心憎い演出ではありました。バーを使って、その上にニーナを乗せたり、あっちにしたりこっちにしたり、とかなりアクロバティックな作品。二人とも抜群のプロポーション、そしてポーズが美しいので、楽しめました。 チャイコフスキー・パ・ド・ドウ 音楽 チャイコフスキー 振付 G.バランシン アマンダ・マッケロー&ジュセッペ・ピコーネ すごーく早い演奏のテープを使ってのものでしたが、わたしとしてはもう少し遅い方がいいなあって感じ。ABTのマッケローにしてみたら、チャイコフスキー・パ・ド・ドウはお手のもので、超早いのも当り前なのかもしれないですが。しかし、わたしがこのパ・ド・ドウに求める鮮烈さはあまり感じられず、ちょっと残念。ピコーネはなかなか悪くない感じでした。 アゴンよりパ・ド・ドウ 音楽 ストラヴィンスキー 振付 G.バランシン インナ・ペトローワ&ドミトリー・ベロゴロフツェフ 頭にダーシー・バッセルの素晴らしい映像があるので、これはちょっと不利な演目でしたです。しかし、思っていたよりも悪くなかった。バランシン・バレエに見えないという批評もあったみたいですが、わたしはそこまでは感じませんでした。(まあ、バランシン・バレエを生でたくさん見ているわけではないので、えらそうなことはあまり言えませんが)これは、多分名古屋の公演がかなり最後の方だったから、というところも大きいかも。 ジゼルよりパ・ド・ドウ 音楽 アダン 振付 M.プティパ イルマ・ニオラーゼ&ユーリー・ポソホフ ポソホフは93年のニーナ・ガラ名古屋で見た「タリスマン」(パートナーはテレホワ)の印象が今だに強く残っているんでした。あれはほんとに素晴らしかった。(この93年の公演、名古屋にはルジがこなかったのよね…しずかさんに言われて思い出しました)わたし的にルジの穴を埋めてくれたのが、このポソホフだったというわけなのですが、今回の公演ではちと寂しいものが…。「ジゼル」だけってのはなあ。ニオラーゼだってリラの精のソロが2部にあるのに、ローズ・アダージョの王子さまだけなんて。 バー・レッスンの鏡が後ろにあるままってのも、「ジゼル」にはあまりにも合わなかったし。(他の演目にはそれなりに合ってはいるけど)うーん。ニオラーゼの、化粧がべったり濃いウィリってのもなんだかなあ。わたしはちっとも乗れませんでした。(しかし、ニオラーゼって昔はもっと楚々としたバレリーナじゃなかったっけ? いつからあんなになったんだ? それともわたしの勘違いだったのか)もっと違うものにしてくれたらよかったのに〜。プログラムのニオラーゼの写真、多分「愛の伝説」だと思うけど、こういうのやってくれた方がよかったよ〜。そういえば、「愛の伝説」ってあんまりやってくれないなあ。それこそやってくれてもよさそうなゴールデン・ガラ・オブ・ロシアの公演でもなかったし。グリゴロヴィッチがうるさいんかなあ(と勝手なことを言ってます、すみません)。 「白鳥の湖」より第3幕のパ・ド・ドウ 音楽 チャイコフスキー 振付 M.プティパ ニーナ・アナニアシヴィリ&セルゲイ・フィーリン ニーナのオディール〜、ってわけでなんの心配もありません。楽しめばいいのよ〜、って感じでうれしいですね! いや、それにしてもほんとにニーナの変わってなさ(この場合は見た目の)はすごいです。舞踊生活20周年とはとても思えない、若いし綺麗だし、輝くばかりです。2部のオーロラ姫についても、ついでにちょっと言っちゃうと、今更オーロラなのかな…という危惧が無きにしもあらずだったのですが、オーロラをあれだけキラキラと踊れるダンサーはやっぱり、ニーナ以外にはいないんじゃないか、と本当に感動しました。(ザハロワやオーレリとかの本当に若いダンサーは、ちょっとこのさい別にしておいてください)ニーナのオーラはやっぱり並じゃないのね〜という感じです。 わたしは、若い頃のニーナのフェッテやピルエットの荒っぽさが苦手だったのですが、そういうちょっと力みすぎに見えていたところが、今回の公演ではきれいさっぱりとなくなっていて、よかったです。若い頃テクニックがすごかったダンサー(今でももちろんすごいけど)はこれからが、本当に良い時期って感じです。そういう意味ではギエムもこれからどんどんすごくなってくんだろうなあ、なんかギエムに関しちゃどこまでいくのか、空恐ろしいような気がちょっとしてきましたよ。 あ、横道それました(笑)。黒鳥のパ・ド・ドウ、フィーリンも危なげなくよかったのでした。単純に美しいものって素晴らしい〜。 第2部 眠れる森の美女ハイライト 音楽 チャイコフスキー 振付 M.プティパ まとめてざざっとまいります。 オーロラの入場〜ローズ・アダージョ オーロラの入場はね〜、わたしとしてはどうしても階段が欲しいのです〜。高いところからオーロラが降りてくるのが好きなのね。お姫さま降臨って感じが、好きなの〜(ごめんなさい、細かいところにうるさくて)。この前の長時間バレエ番組で森下洋子さんもおっしゃっておりました。オーロラは出のシーンが本当に重要だと。わたしも本当にそう思います。音楽ももちろん素晴らしいが、出てきて最初、軽やかに脚を交差させるステップでうっとりさせてくれなきゃダメなんでした。ニーナのステップはそりゃ、ステキでした。でも高いところから地上に降りてくる感じがあれば、なおよかったと思うのです。 「ローズ・アダージョ」各国王子さまはウヴァーロフを除く全ての男性ダンサーというわけで、絢爛豪華、夢見心地、うっとりでした。チャイコフスキーの音楽もいいし(名古屋はテープでしたが)。ニーナのオーロラは非の打ち所がないとはこのことか、という感じ。きれいです。 オーロラのヴァリエーション(第1幕) マッケローなんですが、ABTの衣装が好きになれないわたし。ニーナのオーロラ見たあとじゃ、やっぱちょっとつらいかも。 デジレ王子の入場 これはボリショイ・ヴァージョンにあるもの、とのことでしたが、わたしにはあまり馴染みのないものではありました。フィーリンのソロですが、あまり印象に残ってないの。すみません。 リラの精のヴァリエーション ニオラーゼの衣装が、キーロフの原典復刻版リラの精ので、ちょっと去年の公演がなつかしく思い出されました。この衣装かわいくて好きだわ〜。ニオラーゼには今一つ似合わなかったような気もしますが(笑)。 青い鳥のパ・ド・ドウ ペトローワ&ベロゴロフツェフペア、でした。青い鳥のパ・ド・ドウは映像にあるテレホワ以上に感動させてくれる踊りにいまだかつて、遭遇したことはないのです。これからあるのかどうなのか。これはあんまりコンクールとかでも踊られないからなあ。見る機会が少ないってのもあるかな。 オーロラとデジレ王子のグラン・パ・ド・ドウ ニーナは本当に素晴らしかったのですが、今回見られて良かったのが、このウヴァ・デジレ王子なのでした。うーん、王子さまだった〜。うっとり〜。それから踊りも、うちにあるステパネンコお姉さまとの「ドン・キ」との時とはもう、別人のように(大袈裟だ)上手くなっててそれもびっくり。最初のモダンの演目ではそういうことって素人目にははっきりわからないけど、クラシックはやっぱりよくわかっていいわ〜。 このパ・ド・ドウはとにかく見る人を幸せな気持にさせてくれる、またそうでなきゃ失敗てなもんですが、ニーナ&ウヴァーロフはもう完璧でした。バレエの美しさを堪能しました。うう、この二人で全幕が見たいです〜! この前のバレエ長時間番組でニーナは観客にパワーを与えるのが仕事、とはっきり言ってましたが、そういうことをちゃんと意識してるってことが、素晴らしいなとしみじみ思うのでした。日本のバレエダンサーも、もっとそういうところを意識して欲しいなあとか思います。熊川くんが超人気なのも、やっぱりそういうところなんだろうな、とも思うし。あ、また横道それましたが、ニーナ、30周年ガラもぜひ、日本でやってください〜。(でもその前に全幕が見たい、しかし、今のボリショイは…、ちょっと心配…) '01/11/11 カオル |