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★えんじゅさんの 2001年冬 パリ・オペラ座現地公演レポ
2001/12/30パリ・オペラ座バスティーユ「ラ・バヤデール」
劇場正面には、象に乗ったソロルの大きな写真の幕が飾られておりました。
ソロルが誰かは確認できず。済みません。
開演に先立ち、舞台脇で女性のアナウンス。フランス語だったので、後で確認したところ、ガムザッティ役がマリクレール・オスタからレティシア・プジョルに変更とのことでした。

皆さまよく御存じとは思いますが、舞台の幻想的な美しさがまず印象的でした。1,2幕共通でドーム型のフレームが背景に置かれ、進行によっていろいろな建築物の骨格になるのですが、その裏側からの間接照明がとてもきれい。全体が微妙な色調で統一されています。衣装も豪奢ですが派手派手しくはなく、重みを持って沈んだ色調で、うまく言えませんが、生で観た甲斐があったと思いました。思い出してはうっとりしております。

ダンサーは、何と言っても、ガムザッティを演じたプジョルがよかったです。小柄ですが、演技もテクニックも安定して、誇り高く情熱的な王女って感じでした。
ニキヤのエリザベト・モーランがちょっと大分負けてたなあ。大体、モーランさんてバレリーナにしては豊満でいらっしゃるんですよね。以前に耳にした転倒事件の再発を危惧したのですが、今回は特に危なっかしいところはありませんでした。情感を込めて踊るところはなかなかいいなとも。
しかしワタシ的にはやはり小柄で小粋な感じのするバレリーナの方が好みなのでした。ニキヤとの絡みの迫力なんかすごかったですよ。激しいんだけどヒステリックではなく、上品でさえある感じ。同時にしたたかな感じ。うーん、うまく言えない〜

ソロルのペッシュくん、全体の踊りの印象はさらっと淡泊って感じでしたが、長身なので舞台映えしますね。時々横顔がルグリくんを思わせましたが、これは私の願望かもしれません。 PDDよりもソロで魅力的。思い通りに踊れている感じでした。バランスもよいし、マネージュも見事で、客席も大喜び。清新さで若々しく、ソロルの魅力が輝きました。これがなければソロルって何なの状態だったかも。王子役(ちと違う?)って難しいですよね。

2幕ディベルテスマン、ブロンズアイドルは全身金色のウルトラマン状態でした。ビデオではそんなじゃなかったのに。エマニュエル・ティボー(?)くんですが、実に嬉しそうに笑顔で踊っていました。いと愛らし。

ニキヤが悲哀を込めて踊るとき、苦しそうなソロル、昂然たるガムザの表情がなかなかよくてついそちらを見てしまいました。そして人間的なニキヤの苦悩、花籠をソロルからかと思ったか、一瞬歓喜を浮かべるのが哀れを誘います。しかし、いつも思いますが、あれだけ振り回されてよく蛇があらぬところへ飛んでいかなかったものですね。

ついガムザッティばかりを追ってしまい、以下は友人の観察なのですが、解毒剤を渡そうとした大僧正はためらい、取り落としたそうです。ニキヤはそっちに目もくれない感じだったとか。大僧正はリシャール・ウィルク(?)、ちょっと若すぎる感じもしましたが、それがまた悩ましくてよかったかも。ラジャがノビスさんだったのですね。道理ですてきでした。

3幕の幻想の場は、本当に美しいの一言です。コールドのダンサーが体型さえもそろった美女揃い。誰を見ても美しく、よくそろっていて、まさに夢を見ているようでした。

客席もいっぱいでした。年齢層も幅広く、みんな楽しんでいる雰囲気。小学生くらいの小さい子も嬉しそうに「いいね、いいね」とママンに言っていたそうです。
そして席は不安が的中。最初に聞いた案内のにーちゃんが右と左を間違えたらしいのに加え、本来の私たちの席に既に人が座っていたため席番(椅子の裏面にあり)が読めずにひどく手間取りました。まあ結局座れたからいいんですが。そして列番号は床にあったのでした・・・・
ドレスアップ度はそれほどでもなかったかな。日本人もちらほらいました。

2001/12/31 パリ・オペラ座ガルニエ
大晦日のガルニエはドレスアップ率高し。男性はタキシードが身についているし、女性は露出度の高いドレス。正面階段は思ったより小さかったが、ゴージャスに飾られていた。最上階のクロークが裸電球1つみたいな照明で薄暗いのが驚き。
4階アンピテアトル(?)はシャンデリアが間近で、シャガールの天井画もくっきり見える。手すりが低く、最前列は、身を乗り出したら落ちそう。

「ペトルーシュカ」37分

小さな村の祭りにサーカスが繰り込んできた雰囲気。人形振りの3人、ペトルーシュカにローラン・イレール、バレリーナ、エリザベト・モーラン、ムーア人(?)、ウィルフレード・ロモリ。どれも厚塗りメイクなので、イレールさまの美貌が堪能できず残念。ストーリーもよくわからなかったが、コミカルで可愛い。

休憩20分。シャンパンやジュース、カナッペなどが供される。

「牧神の午後」(ニジンスキー)12分

横座りのジャンギョーム・バールは、登場のときからはっきりした輪郭。間違いなく舞台の中心であり続ける求心力を持つ。夢見つつ強い意思が横顔にあらわれる。強い衝動は、だが、直接的な発動は持たない。カリン・アベルティのニンフに対して、惹かれながらも、その手は彼女に触れない。残されたストールを片手に巻き取り、くちづけるのも、ともに横たわるのも高雅でさえある。先日のロシア・ゴールデンバレエの牧神のラストが、自分としてはいささか扇情的に過ぎると思っていたので、この抑制が好ましかった。

「牧神の午後」(ロビンス)15分

 青い背景、中心よりやや右寄りに、白い布で3面を囲って、バーつきのレッスンスタジオを構成。左奥にドア口。音楽は同じラヴェル。そのなかにニコラ。上半身裸、黒いタイツ。レッスン中という様子。
 暫し後に白布の壁の向こうを通る人影。ポアント立ちのエレオノーラ。髪は結わずに流し、くすんだ水色のランニング型スカートつきレオタード。
 ニコラとのPDD。エレオノラはシルエットのときから細く長いしなやかな円錐を思わせた。清々しく優雅なPDD。「牧神の午後」を以前から練習している二人、ともとれる(友人談)し、そうでないともとれる。個人的にはダフニスとクロエを思わせる初々しさだった。妖精めいて自在に舞うエレオノラを、ニコラが魅了されつつ追う感じ。怪我を思い起こさせるものはなかったが、動きも派手なものではないせいか。

休憩20分

「シエラザード」45分

幕が開くと、白い布で包まれた円錐が3つ。それが次第に動き出して、中に入っていたのが人間であることがわかる。
アニエス・ルテステュ、申し分なく美しいし伸び伸びしている。ジョゼ・マルティネスは彼の美しい女王を賛美し仕える風情。視線が彼女で止まり、その先へ伸びない。テクニックに文句はないのだが、どうもあっさりした踊りに見え、彼はパリでもやっぱり淡々と踊るのかと妙な感心。
ストーリーがよく見えない。二人はラブラブで踊っているが、嫉妬に狂った王が乱入する様子はない。シエラザードはローラ・モレ(?)が別に演じているようだし。演出で印象的だったのは上手下手から同時に色とりどりのクッションが投げ込まれたこと。客席からさすがにざわめきといくらかの笑声。日本人としては国技館に乱舞する座布団を思い出す風景だった。
各休憩時に1杯ずつ2杯のシャンパンが効いたのか睡魔も。 

ということで、プログラム通り終了、大晦日特別イベントはなし。
シャンパンサービスがそれだったのかな?
終演後は手早く追い出しにかかられるが、2階脇に回廊のような広間があり、大きなクリスマスツリーが飾られていた。見たいとアピールすると、「2分だけよ」と許してくれたおねーさん、ありがとう。

この日の印象はバールとアッバニャート。
ダンサーの持つ吸引力を感じさせたのはこの二人でした。