★「青ひげ城の扉」(名古屋)2月

[568] 2005/02/16(Wed) 00:48 仁菜 [「青ひげ城の扉」]

作曲:ベラ・バルトーク『青ひげ公の城』より
台本:ベラ・バラージュ
演出・振付・映像・舞台美術:アレッシオ・シルヴェストリン
指揮:アレキサンダー・ドゥルチャー
演奏:セントラル愛知交響楽団

青ひげ公/ダンス:アレッシオ・シルヴェストリン 歌:ペーター・フリード
ユディット(妻)/ダンス:白河直子    歌:アンドレア・ツァント
青ひげ城の魂魄/(観世流)津村禮次郎
3人の妻/浅見紘子、中谷友香、米沢 唯

本編の前に、昨年の「ダンス・ファンタジア」で上演された「戸外にて」がありました。出演者、ピアノ伴奏も全く同じメンバーでした。音楽もバルトークですし、振付もアレッシオ・シルヴェストリンだから、そうなのか、という感じでした。

昨年の舞台とほぼ同じだと思いましたが、四角いパネルに投影されていたスタジアム(バックネットとドア?)のような映像は、ステージ右側の斜めの大きなパネルに映し出されていましたが、斜めのせいか、やや見にくかったです。隣の席の方が「去年とちょっと違うね」と言っておられたので、どこか変わっていたかもしれませんが、あまりよくわかりませんでした。これが約15分、休憩をはさんで本編が60分でした。全体が短いのでこの踊りを入れたのかもしれませんが、私には余分なように思われました。ただ、このパネル上の映像が次の舞台に伏線のように出て来て、関連性を見せてはいるのですが。

まず津村禮次郎さんが能役者の装束で現れ、口上を述べる形でプロローグが始まります。シンプルな舞台には、下手にドアのついたパネル、中央に半円柱形のような、「戸外にて」の映像にも出てきた紗幕を貼ったカーブしたバックネットのようなパネル(うまく説明できません)、上手に斜めに置かれた高いパネル(「戸外にて」の映像が映ったもの、こちらではオペラの歌の字幕が映し出される)そして、中央にはドアのような形の7枚の紗を貼ったパネルが上から斜めに並んで吊るされています。これが青ひげ城の7つの扉を表しており、順に下へ降りて来ます。(ドアノブはありませんが、なんとなく「モンスターズ・インク」のドアを思い出してしまいました)
中央には階段状の台。城への入り口になったり、ダンサーが上ったり下りたりの動きを作ります。

第1の扉 拷問の部屋
第2の扉 武器庫
第3の扉 宝物庫
第4の扉 秘密の花園
第5の扉 青ひげ公の領地
第6の扉 涙の湖
第7の扉 青ひげの3人の妻たち

ドア付きのパネル上に、城の石壁のようなものが投影され、青ひげの妻となったユディットが入っていくという所から物語が始まり、第1の扉が赤い色に照らしだされます。同じ1つのステージで、ダンスと、歌が同時に進行します。つまり、青ひげとその妻ユディットを、それぞれダンサーであるアレッシオ・シルヴェストリンと白河直子が踊り、かつオペラ歌手のペーター・フリードとアンドレア・ツアントスが歌うという、まさにオペラとダンスのコラボレーションで表わされます。

また、パネル上には、男性の手から鍵が女性の手に渡される場面も映し出され、そのたびに上から扉のパネルが降りてきます。第2の扉はオレンジ色、第3の扉は黄色だったので、虹の色のように変わっていくのかと思いきや、第4の扉は青、その後はモノクロになってしまうのは何を表しているのか、だんだんわからなくなっていきました。

白河さんはグレイッシュなラベンダー色のシンプルなドレス、シルヴェストリンは紫っぽいシャツに黒ズボンというシンプルな衣装で、中央あたりから下手寄りにコンテンポラリーの振付を踊っていきます。
ツァントは裾の広がったグレイっぽいブルーグリーンのロングドレス、フリードは黒のスーツで、二人は時に寄り添い、また離れつつ、上手側でオペラで歌いあげていきます。

ハンガリー原語の上演ですが、字幕が一部しかなく、少しわかりにくかったものの、ペローの童話のように青ひげの留守中に扉を開けてしまうのではなく、一つ一つ扉を開ける妻を夫が「怖いのか?」と、わざとらしく次の扉へと誘う、という感じです。

オペラのストーリーによれば、青ひげ公には、昔の妻達を殺して城に隠しているという悪い噂があるにもかかわらず、ユディットは家族の反対を押し切って彼の妻となり、彼の全てを知ろうとして次々扉を開けていく。それは愛情からなのか、それとも何もかもを知ろうとする欲望からなのか。最後に現れるものは、というと彼の生きている3人の妻なのです。この妻達は最初から舞台上に黒子の形でパネルを押したり、階段を動かしたりして登場していたのです。黒いベールの下から新しい妻(ユディット)を値踏みしていたのかもしれません。この三人は「朝の女」「昼の女」「夕べの女」と呼ばれており、ユディットは「夜の女」としてその列に加えられます。そうして城の扉はすべて閉ざされ、後に残るのは青ひげ公のつぶやきのみ。「夜だ...いつまでも夜だ...」

第5の扉を開ける頃には、広い4面舞台の左側と奥のステージも広がっており、青ひげの広大な領地を表しているようでした。こういう展開はさすが、愛知県芸術劇場ならでは。そして津村さんが能で使われるような冠をユディットに渡すのは、彼女がこの城の女主としての地位を約束されているようで、そこでやめておけば彼女も栄光を手に幸せであったのに、次の扉を開けて見たがったために地獄を見てしまう、というような、お伽話ではない、現実の生活を想起させます。

ただ、観ている限りではこのストーリーが頭になかったので、何だか不思議な感じで終わってしまいました。後になって思うと、各場面や踊り、歌の内容の一部は記憶に残っているのですが、音楽が全く残っていなくて。CDがあるといいな、と思いました。

全体に、似たような場面と踊りが続くので、記憶に間違いがあるかもしれません。カオルさん、気がつかれましたら訂正してくださいませ。

自分の持っている「青ひげ」のイメージ(ペローの童話)とやや違っていたので、何だかわけがわからずに終わって、後でプログラムの解説で納得したような部分もあります。プログラムが値段の割に読み応えのあるもので、とても舞台前には把握できませんでした。チラシの解説もそんなに深いところまで触れていませんし。でも、とってもスタイリッシュな舞台だったように思います。演奏も良かったような。(あまりにも舞台や歌に対して自然に溶け込んでいて意識の中に記憶として残らず、バレエ公演の時によくある不協和音には気づかなかったので良い演奏だったのでしょう。)生のオーケストラはいいですね。

しかし、こんなシャレた公演なのに、客席の両サイドが完全に空席だったのは残念でした。同じ時間にコンサートホールでダニエル・バレンボイムのピアノリサイタルがあったのでクラシックファンを取られてしまったせいでしょうか。
う〜ん、ルジマトフならこの会場を2日間いっぱいにできるのだろうか。ちょっと心配になってきました。

[573] 2005/02/19(Sat) 02:35 仁菜 [カオルさんのレポ読みました]

早速読ませていただきました。やっぱりカオルさんのレポを読まないと、自分の感想がやや不安というか、まぁ、舞台の感想は人それぞれなんですけどね。今回は、主人公二人の気持ちを汲み取るというところまでも行かずに、全体を把握するのがせいいっぱいだったような。どうも私は動体視力が弱いというか、オペラの字幕にやや気を取られていたので、ダンスが十分に楽しめなかったような気がします。目が4つ欲しかったです。(笑)

そういう意味でいうと、かおるさんがおっしゃるように
>音楽とオペラはテープで二人のダンスだけでもいいという気がしています。
そうかもしれませんね。確かに「ダンスオペラの趣旨に思いっきり反して」いますが。

それを言い出すと、わざわざ歌をオペラでやる意味がありませんものね。この作品の場合は最初にオペラがあって、その内容をダンスでも表現するという試みなわけですが。
やっぱりステージは、最初から下手側と奥が開いて3面になっていたんですね。黒いので、初めのうち気がついていませんでした。というか、「戸外にて」があまり好みではないので、踊りより右の壁に映ったアニメーションに気を取られてしまってました。でも、おっしゃるように再演なので、ダンサー達もシルヴェストリンの舞踊言語になじんで、良くなっていたようですね。

能役者については、「青ひげ城の魂魄」という設定なので、やはり古い城にはそういったものが棲みついているのであろうから、存在していてもいいのではないかとは思いますが、能装束にしたというのは、舞台に格調を与えたかったのかしら、なんて思ってしまいました。

ダンスやオペラとの関連性が薄くて、やはり何か取ってつけたような感じがあるのは否めませんね。あの形で登場させるなら、舞台の中に何か共通するもの(日本的なものなのか、能の精神性のようなものか、うまく掴めませんが)があれば納得できたのだと思いますが。

私も茶々さんと同じく、
>お能はよほどおもしろい演目でないと、私も寝てしまいます(笑)。あの謡いのリズムが眠気を誘ってしまうのですね。
なので、高いお金を出して(といってもバレエほど高くはないんだけど)観るのはもうやめてしまいました。

>同じく謡が入っても狂言は動きがあるので寝ません。
そうなんですよね。

>お能はそれだけ難解なんでしょうかねえ。
いや、それもあるだろうけど、やっぱりあのリズムが脳波とシンクロするんじゃないかと思いますよ。信じられないほどスローですしね。
私、最近慣れすぎたのか、「白鳥」の湖畔のアダージオの場面とか、「海賊」の花園の場面、「バヤデルカ」の「影の王国」など、疲れていると睡魔に襲われてしまうんですわ。あのゆったりしたリズムがどうもいけないみたいです。

とにかく、まだ色々と把握しきれてない部分もあるので、私もできればもう一度観たいです。
本当に一回きりではもったいないですよね。

ハンブルグ・バレエ「冬の旅」(名古屋)2月

[575] 2005/02/20(Sun) 22:26 カオル [「危険な関係」「冬の旅」名古屋公演]

えーと「冬の旅」ですが・・・・・・、これまたノイマイヤー・ファンにはすみませんが印象大変薄いです。何度か睡魔に襲われました(爆)。初ノイマイヤーなのに・・・。
うう、これならイアン・ボストリッジの映像の方がよっぽど耽美かも・・・(って独り言です。すみません)
でも最後のジョン・ノイマイヤー本人が服部くんと踊るところは、素晴らしかった。一気に舞台に引き込まれました。舞台空間が変わったような気がします。編曲された「冬の旅」もこの部分は素直にちょっとすごいかもと思いました。<br><br>こういうコンテンポラリーよりのノイマイヤーの作品はわたしに合わないことがよくわかりました。やっぱり観るなら「幻想〜白鳥の湖のように」とかのがいいな、うん。この作品の映像はとっても好きなのよ。

[578] 2005/02/21(Mon) 22:44 ゆき [「冬の旅」観ました]

「冬の旅」、キャスト表だけでなく、解説まで配ってくれるのは親切ですね。パンフレット、安くないですものね。私は買ってしまいましたが。
名古屋市民会館は、中ホールは行ったことありますが、大ホールは始めてでした。席が前後ずらしてある千鳥式ではなく、ぴったり前後あわせて席がつくってあるため、チビの私にとっては、あまり観やすいとはいえませんでした。
県芸ができる前は、ここで多くの公演が行われていたようなので、やっぱり県芸ができてよかったです。

服部君は、とってもよかったと思います。彼のための作品といっても過言ではないでしょう。可愛かった♪
ただ、睡魔に襲われたというのも、分かります。私の隣の方も、うとうとしてましたし、正直私も何度か・・。
あんまりピンとはこなかったけど、でも、決して嫌いではないです。しみじみとした、何かが残りました。
服部君が出演した「情熱大陸」をまた観たのですが、章が変わるごとに、時空を飛び越えていたのですね。
服部君は163センチ、とか、ハンブルク・バレエ団はドイツ人は3人だけとか、(今はまた違うかもしれませんが)色々思い出しました。
シューベルトの曲だし(シェンダー編曲ですけど)、ドイツの方の方が理解しやすい作品なのかな。そんなことは関係ないかな。

ただ、「ニジンスキー」か、今回大変評判のよい「眠りの森の美女」が見たかったかな。観られなかったからそう思うだけかもしれませんが。パンフレットの、三浦さんの気合の入った解説を読むと(3演目とも解説書いているので、ノイマイヤーお好きなんですね)、眠り、とてもおもしろそう。