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公文協西巡業岐阜公演

(社団法人全国公立文化施設協会 主催 西コース)
平成12年8月31日・岐阜市民会館 13時、18時
一、歌舞伎十八番 毛抜き
二、お目見得口上
三、道行 旅路の花聟
市川團十郎
中村芝雀
市川新之助
市川亀蔵
市川升寿
中村京蔵
片岡十蔵
市川右之助
坂東秀調
市川團蔵
六月にチケットを買って、もう九月。時間の流れは速いものです…。
今回は岐阜まで買いに行った甲斐もあり、最前列下手より。実際に座ってみると、まぁ舞台の近い事ったら。嬉しいわ。今までにこんな席で歌舞伎を観た事がない(バレエならあります)から、期待に胸が膨らみます。ドキドキ
しかし見渡すと、1階の座席に空席がちらほら。2階にいたっては随分空席が! なぜ〜? 新之助人気も岐阜辺りでは関係ないのでしょうかね。この公文協巡業って、余り宣伝しないから、知らない人も多いのかもしれない。私自身今年まで知らなかったし。あれだけ空席が目立っては、役者さんが可哀想な気がしてしまいました。

◆歌舞伎十八番の内「毛抜」

粂寺弾正・市川團十郎  小野左衛門春道・市川團蔵  腰元巻絹・中村芝雀
家老秦民部・板東秀調  秦民部弟 秀太郎・市川新之助
おなじみの「毛抜」であります。これは四月の御園座でも観たので、ストーリーはもうばっちり。 見所もばっちりでのぞみました。なのになのに、幕開きから小姓の秀太郎と家老の息子数馬とのチャンバラシーンで始まるという事を頭で分かっていながらも〜。新ちゃん@秀太郎の余りの美しさと、最前列かぶりつきという場所で観ていたため、椅子からずり落ちてしまいそうなほど動揺してしまいました。 とっても近い! いや驚いた。3メートル先に新ちゃんが…。おっと、芝雀さん@巻絹が登場。こちらも美しい。額に紫の布(正式名称を知らない…)を巻いた化粧で、眉毛が高いところに描いてある顔。(阿古屋とか雲の絶間姫とかも)この顔好きなんですよね〜。美しい〜。
 いかん、動揺しているまにチャンバラが終わってしまうではないですか。 秀太郎は小姓なだけあって、顔も白塗りで衣装もうす紫の小袖と日本人形か!? という印象。雑誌の「ミスターハイファッション」の写真の人物と同じとはとても思えない…。まったく日本の白塗り化粧は恐ろしいです。

物語は御園座で観た時より最初の所を短くて、雨乞いの「小野小町の短冊」を出すようにと言われて、フタを空けてびっくり短冊がない! というくだりがはしょってありました。
團十郎丈の弾正は、ほんと風貌にぴったりでおおらかで良いですねー。秀太郎と巻絹を口説くシーンも相変わらず楽しくて。新ちゃん@秀太郎が弾正に言い寄られるシーンで、乗馬を仕方教えてあげると言う弾正に、始めはちゃんと、感謝の気持ちで聞いていたのだけど、だんだん弾正の下心が分かってきて、ものすごく嫌そうな顔になっていくのがほんと面白かった。最後に弾正を見る眼のものすごい眼! 客席前から5列目くらいまでのお客さんは、あの眼で頭がどうにかなってしまったんじゃないかと思われます(笑)。
 前回見た時には気がつかなかったのですが、終盤で弾正が閻魔大王への手紙を書くシーンがあるのですが、團さまはちゃんと実際にその場で筆で手紙を書いていらっしゃいました。内容も芝居の台詞で読み上げるそのままになってたし。いや〜すごいですって、毎日書いているから当たり前なんだろうけど、でも、間違えもせず美しく書くのは結構大変ですよね。
 百姓万兵衛役の片岡十蔵丈と小野家家老の八剣玄蕃役の片岡亀蔵さんは兄弟でらして、これがまた良く似てらっしゃる。悪役二人がそっくりの顔で芝居の上でも兄弟みたいでおかしかったな。
 「毛抜」のような芝居はストーリーが分かりやすくて面白く、適当に華やかで、歌舞伎初心者にはうってつけの演目ですね。なにも考えずに楽しめます。

お目見得口上

今回岐阜まで出向いたのは、この口上を聞きたかったというのもあるのですが、うーん、ちょっと思ってたほどのことは、皆様話してくれなかったです。座長の團十郎丈は、わりと長めの挨拶でしたが、他の役者さんたちは殆どが自分の名前と、これからも精進しますのでよろしく〜、といった内容でした。寂しい.
團さまは岐阜市公演は12代團十郎襲名披露公演依頼のお目見得であるとか、あとは、10月の名古屋御園座公演の宣伝をひたすらなさってました。岐阜駅からJRや名鉄で20分くらいで名古屋に来れますから皆様是非にお越しくださいとか。そんな、言われなくても行きます! と思っていた私。来月が楽しみ…。

道行旅路の花聟 落人

早野勘平・市川新之助  腰元お軽・中村芝雀  鷺坂伴内・市川右之助
長い長いお芝居、仮名手本忠臣蔵中でのちょっとした息抜の為に作られたという舞踊劇です。
主人の一大事に自分は恋人と会っていて留守をしていた、ということが悔やまれてならない早野勘平と、 そういう沈んだ恋人の心を思いつつも、初めて二人で旅をするということにウキウキ気分を隠せないお軽。 この二人の表情の違いが面白かったです。新ちゃんの苦悩する表情が美しかった…。舞踊劇では余り顔の表情で演技をするのは好ましくない(あくまでも舞踊で感情みせるという事でしょうか)という事もいわれるらしいのですが、まぁこういった単品を抜き出して演じられるのであれば、それもまた良しという感じです。私のような初心者には、表情がはっきりしてるほうが心情が分かりやすくて助かりますが。
右之助さん演じる鷺坂伴内はおかしい戯れ隈で、何もしなくてもおかしいのです。その顔でじっと見つめられたせいか、新ちゃん@勘平はちょっと素になって、くすっと笑ってました。(どう見たって素になってたよな〜)こういう事で喜ぶのも我ながら阿呆だと思うのですが、素の新ちゃんが垣間見られてちょっと得した気分でした。正統派歌舞伎ファンには噴飯ものなんでしょうけどね。
舞台は富士山を遠くに望み、桜と菜の花が咲く春の風景。その中での美男美女の道行き。敵役すら「花四天」の“はな”の名の通り、桜の文様の着物でとても華やかでした。眼福眼福。
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