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忠臣蔵三百年 通し狂言 仮名手本忠臣蔵
平成十三年三月二日(金)〜二十六日(月) 新橋演舞場
〜もちろんオオバカミーハーレポ〜
今年は忠臣蔵の仇討のあった年から三百年だそうです。(だからどうしたと言われそうですが)で、それにあわせて新橋演舞場の三月公演は通し狂言の仮名手本忠臣蔵なのだそうです。
滅多に上演されない通し狂言で、しかも團菊祭のような出演陣。行こうかどうしようか非常に迷いました。
そんな私にセゾンからのDMが届きました。そこには新橋演舞場3月公演、会員特別割引きの記事が。なんてタイミング…。私は泣きながら「演舞場、行きますってば…。」と呟いたのでした。

ここで少し、実際の忠臣蔵と歌舞伎の忠臣蔵を比べてみる事にいたしましょう。と言っても詳しくは知らないので、登場人物を並べてみました。
◇実際 ◇歌舞伎
舞台は江戸・元禄時代 舞台は室町時代
大石内蔵之助 大星由良之助
浅野内匠頭 塩冶判官
吉良上野之介 高師直

こんなところでしょうか。足利尊氏の時代なのに、京都祇園のお茶屋さんが出てくる辺りは不思議なんですけどね。その頃から祇園は花街だったのかなー? チョンマゲだし。
 今回は通し狂言と言えども全部上演されるわけではなく、大序、三・四段目、落人、五・六・七段目、十一段目の上演で、後半の八・九段目は歌舞伎座で上演されていました。
なにはともあれ、初めて見る通し狂言、忠臣蔵(赤穂浪士の方ね)もまともに見るのは初めて。とても楽しみなのでした。

〇昼の部〇
◇大 序  鶴ケ岡社頭兜改めの場
◇三段目  足利館門前進物の場
          同 松の間刃傷の場
◇四段目  扇ヶ谷塩冶判官切腹の場
       同 表門城明渡しの場
◇浄瑠璃  道行旅路の花聟(清元連中)
〇昼の部・主なキャスト〇
塩冶判官・・・尾上菊五郎  顔世御前・・・中村芝雀
高師直・・・・市川左團次  桃井若狭之助・尾上辰之助
鷺坂伴内・・・片岡亀蔵、片岡十蔵
腰元お軽・・・尾上菊之助  早野勘平・・・市川新之助
斧九太夫・・・片岡芦燕   石堂右馬之助・市村羽左衛門
薬師寺次郎左衛門・板東彦三郎
大星由良之助・・・市川團十郎
〇夜の部〇
◇五段目  山崎街道鉄砲渡しの場
       同   二つ玉の場
◇六段目  与市兵衛内勘平腹切の場
◇七段目  祇園一力茶屋の場
◇十一段目 高家表門討入りの場
       同 奥庭泉水の場
       同 炭部屋本懐の場
      両国橋引揚の場
〇夜の部・主なキャスト〇
早野勘平・・・尾上菊五郎  女房お軽(後遊女)・尾上菊之助
お軽の母おかや・・・澤村田之助
斧九太夫・・・片岡芦燕   寺岡平右衛門・・・・尾上辰之助
斧定九郎、服部逸郎・・・市川新之助
大星由良之助・市川團十郎
さて長い長い通し狂言。お話は皆様よく御存じの「赤穂浪士」の仇討物語。ただ時代が室町時代に置きかえられているだけなのですね。お軽と勘平の二人にあたる人物が実際にいたのかどうかは判りませんが。
 「松の間刃傷の場」師直(もろなお)役の左團次さん、スケベ親父ぶりがとってもお上手で、人妻である顔世御前へしつこく迫る様子や、塩冶判官へのいじめぶりが、まー本当にやな奴でした。

 最初の幕間を挟んで「判官切腹の場」。ハラキーリです。いやいや、ここの場は重かった。浄瑠璃はなく台詞で話しが進められていって、なおかつ話しの内容も暗い重い。思わず頭がコックリ…。いかん。
 この場にでてくる顔世御前は白装束で、顔も眉をおとした白塗りで、「白の迫力」って感じでした。ベジャールのバレエ「ザ・カブキ」でも、白装束の顔世御前が印象的だったけれど、確かにこの場面の顔世の存在感は中々の物でありました。

 菊五郎判官はとにかく国家老の由良之助が館に着くまで、もうちょっと待ってくれまいか〜というところですが、その内に由良之助の息子の力弥が切腹セットを持って判官の前にやって来ます。ここで「?」な部分が。この力弥は、まだ前髪のある「若衆方」なのでありますが、彼は判官の前からなかなか去らない。悲しそうに名残惜しそうにいつまでも判官の前に座っているのですね。見ていても結構ん〜? この二人の間には何かがあったのか〜?という印象だったのですよう(こんな事を考えるのは腐ってますか?)。なので、家に帰って本を見てみると、

『衆道的な風情をとどめている役柄に対してだけ、今でも若衆方の言葉を当てる』『主君判官の前に腹切刀を置いた力弥は主君を見上げて容易に立ち去らない。二人の間には衆道があったのか? 台本は何も語らない。』(別冊太陽 歌舞伎図鑑)

とありまして、私の見かたもあながち偏っているわけじゃないわね、と思ったのであります。だって力弥は、武士なのにか細くて弱々しいんだもん。
 話しが横道にそれました…。そうこうするうちに團パパの由良之助登場。その時にはもう腹に刀が刺さっているんだけど、満足に声も出ない状況で、判官は無念を伝えるわけです。
「師直を殺す事ができなかった事が心残りである」
 主君の血を吸った小刀をとって、その血を舐める由良之助。(このシーンもなー、なんというかエロでした…。)主君の無念を晴らす決意をするのでありました。
 とにかくもこの四段目は、お芝居も張り詰めた緊迫した空気の中で進んでいくのですが、その舞台を観る会場の空気も、咳払いひとつない緊張したものでした。ちょっとぐったり。

 さて重々しい腹切場面から変わって、「落人〜道行旅路花聟」であります。まってました。新之助&菊之助。富士山を遠くに望み、菜の花が咲く舞台で踊るお二人は、溜息ものの美しさでございました。視線や手の動き一つ一つにドキドキしてしまいました。
 新ちゃんの勘平は、以前に観た時の、勘平の暗い心情を表した「舞踊というより芝居」といった感じがなくなっていたように見えました。さらりとした感じ。どちらが良いとかは私にはよく解りませんが、通しで観てみると、重い四段目を観てまた重い舞踊を観るのは辛いよな〜、たぶん。

 ここからは舞台は勘平&お軽の二人が中心。
 今はお軽の実家京都近郊の山崎で猟師をしている勘平。猪を撃ったつもりが、なんとびっくり人間を撃ち殺してしまった。暗闇なので顔はわからないけれど、懐を探ると(いいのか…?)大金の入った財布が…。これで仇討に加えてもらえると喜ぶのですが、そうは問屋はおろさない。ってわけで、この勘平に撃たれるのが新ちゃん演じる斧定九郎で、テレビドラマでも新之助が演じていた役ですね。この定九郎は塩冶家の家老の斧九太夫の嫡子であるのに、とんでもねー悪者なんですな。簡単に人を殺してなお且つ五十両もの大金を奪う強盗殺人犯なのであります。捕まれば市中ひき回しの上打首獄門か!?
先の落人の勘平もよいのですが、こう言った悪役の顔の拵えって好きなんですよね。アイラインがギッとして格好良いのだもん。この役は台詞もないし、すぐ死んでしまうホンのちょい役なんですけど、撃たれて倒れた時に脚があらわになったりして、私にとっては中々印象的でございました(爆)。
 あと、定九郎が撃たれる前に出てくるがとってもラブリーでした。

 勘平はやっと仇討に参加できると揚々と家に戻ってきたのですが、女房のお軽が自分の知らぬ間に遊郭に身売りをしているじゃないですか。しかも仇討に参加するためのお金を作るためにそうしたと聞き、泣く泣くお軽と別れる勘平。愛する妻より主君の仇討に参加することを選んだわけです。これだから武家社会は…。
 色々あったけど、これでやっと仇討に参加できると喜んでいる勘平なのですが、そうは問屋が下ろさない。仇討参加が認められないうえに、自分が撃って財布を奪ったのは、どうやらお軽を売ったお金をもった舅だったことが判明。大ショックを受ける勘平。姑のおかやにはボロクソになじられるわ、最悪です。こうなりゃもう死んでお詫びをと勘平も切腹。菊五郎さん本日2度目の切腹であります。塩冶判官の形式にのったハラキリと違って、こちらは突発的なハラキリ。切腹場面てお芝居とはわかっていても、観ているこちらが苦しくって、痛そうで嫌なんですけどねー。
 ここのシーン結構リアルな仕掛けがあって、刀をお腹に刺したとき、血糊がお腹の部分を赤く染めるんですよ〜。歌舞伎ってこういう所が結構リアルだったりしますよね。南北物なんて、更に強調されているし。

 舞台は京都祇園の一力茶屋。遊行三昧の由良之助。ここまでが割りと地味な舞台が続いてきてたので、そろそろ綺麗な舞台が見たいよん、と思っていたところに調度よい具合に菊ちゃんの登場。遊女となったお軽。有名な由良之助が顔世御前からの文を鏡に移して読む場面。このシーン、実際に見るのは始めてなのだけど、写真とかで見てていつも思うのは、「よくも鏡に写った文字が読めるもんだなー。でもって、視力が良いなぁ。」という阿保なものでした。今回実際に観ても思いました(笑)。いやいや、鏡を持って欄干に持たれて仰け反るお軽はとぉっても美しかったです。

 お軽の兄平右衛門は、由良之助の手紙を盗み見たお軽を殺して、その功で仇討に加えてもらおうと考えるわけです。ああ、またここで男の身勝手が…。確かにお軽の夫の勘平はハラ斬って死んじまったけど、でもって、父親も殺されちゃってるけど、手紙を見たお軽を由良之助は殺そうと思ってるけど、でも〜、だからってさー、自分が仇討に加わりたいからって妹に死んでくれって言うか、普通。(江戸時代の武家は普通なのか?!) 田舎には年老いた母が一人で居るってのに。だんだん腹が立ってきた。ムカムカムカ
まぁ事情を解った由良之助が止めたからいいけどさ。

 舞台はここで十一段目の討入り場面まで飛びます。間の八・九段目は大星家のお話、十段目は由良之助達に協力していた商人の話で、この三段分は面白そうな内容なのですが、今回は省略されていました。八・九段目は歌舞伎座で公演されていましたけど。

 とうとう討入り。まぁストーリーは特にないチャンバラシーンです。本懐を遂げた浪士達が判官の墓前に向かう所で、新之助の服部逸郎が歌舞伎馬に乗って登場。歌舞伎馬、いつ観ても感心してしまいます。本物の馬みたいなんだもの。
 服部逸郎が一行を労って舞台は終わり。なんだ、浪士達の切腹までは舞台はないのね、とちょっとがっかりした私でした。

 なんだか観劇の感想よりも、忠臣蔵のお話の感想になってしまいました。はじめて見た初心者の感想と思って大目にみてやってください。しかも体調最悪で観たので、お芝居後半に行くほど記憶が薄れてます。(詳細はこちら お暇でしたら読んでやってください)
 「仮名手本忠臣蔵」は室町時代の設定なのに風俗が江戸時代で、見ていて混乱したのだけど、考えてみればこのお芝居が作られたのが江戸時代だから、当時としてみれば昔の話だけど現代に置き換えてみたと言う事なんですな。今で言うと、忠臣蔵の世界を平成のサラリーマン社会に置き換えてドラマを作ってみました ですね。歌舞伎を見るときは江戸の人になりきって見ないといけないですね〜。

 こんな初心者な感想文をここまで読んでいただきありがとうございました。<(_ _)>

しずか
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