きっと気づいてないだろうから サイト4周年記念


「あ、」

レオンに剣の相手をしてもらったソラは
1番街のカフェにがいるのを見つけた。

なにやらテーブルに向かい、一生懸命な後ろ姿に
声をかけようと、口を開きかけたソラは何かを思いついてやめると、
そろりそろりと抜き足差し足忍び足でに近づいた。

その距離あと一歩というところで(はまだ気づかない)
ソラは息を吸うと、

!なにしてんだ?」

大きめの声でを呼んだ。

「うわぉい!!」

案の定、飛び上がった
奇妙な悲鳴をあげて振り返った。

「なんだ、ソラか、びっくりしたー。」
「ニッシッシー」

心臓を抑えてため息をつくにソラはいたずらっぽく笑うと、
テーブルの上に目を向けた。
そこにあったのは開きっぱなしのスケッチブック。

「わー!!見ないで見ないで!」

ソラの視線に気づいたは慌ててテーブルに覆い被さるが、
その拍子にばらばらと乗っていた細かいものを地面に落としてしまった。

「なんだよ、見られちゃまずいのか?」

ソラは面白くなさそうに、落ちたものを拾う。
それらはクレヨンやエンピツで、なにやら絵でも書いていたのだろうか。

「あの・・・
 なんていうか、恥ずかしくて・・・。」

ソラから落としたものを受け取ったは困ったように、
というよりもはずかしそうに目をそらす。

「大丈夫だって、笑わないって、」
「でも、」

すこし躊躇しただが、
意を決して、隠していたスケッチブックを取り出しソラに渡した。

「笑わないでね?」

念を押すように、はそういうと、
ソラはわかったと深くうなずいた。

表紙をめくると、文字が並んでいた。

・・・

「これなんて読むんだ?」
「あう、ごめん、字が汚くて・・・」

しゅんとしたに、しまったとソラは慌てた。
とはいっても、本当に読めないのだから仕方が無い。
というのも、そこに書いてあったのはの世界の文字だったからだ。
ソラが見ているものはカタカナで書かれた言葉で、
彼自身も見たことが無い字なためにそのことに気づけないでいる。

二人の間になんともいえぬ空気が流れた。

と、そのとき、

「これ、”ハートレス”クポ!」

ソラの真横でかわいらしい声がいった。

「この文字はカタカナクポ、
 多分ソラの世界にはない文字クポ。」

見れば一番に目に入ったのは大きな鼻。

そしてつぶらな(?)瞳。
やわらかそうな白い体。
パタパタとせわしなく羽ばたかせるこうもりのような小さい翼。

「モグちゃん!」
「クポッ」
「うわ!・・・って何だモーグリーか。
 (というかコイツ名前あったのか。)」

が呼ぶと、
モーグリーのモグはうれしそうにないた。
クポはそのまま、小さな羽を羽ばたかせソラの頭の上まで上昇し、
そのまま頭の上にのっかって見ているページの言葉を読み始めた。

「シャドウ、ラージボディ、ソルジャー、ブルーラプソディ、・・・」

「これ、ハートレスの名前?」
「うん。
 ・・・そっか、私の世界の文字、ソラ知らなかったんだ。」

自分の字が破滅的に汚いわけじゃなかったんだ、よかったよかった。
安心したようには胸をなでおろした。

「悪ぃ、」
「そんな、ソラが謝ること無いから、ほんとに!」

申し訳ないと謝るソラに、は慌てて首を振る。
またもや二人に微妙な空気が流れはじめた。

「ソラ、次めくってほしいクポ、」

1ページ目を読み終えたのか、
モグはソラにそう言うとてしてしと短い手でソラ頭をたたいた。

「ん、ああ。」
「わわわっ!!」

ソラが言うとおりにページをめくろうとすると、
が顔を覆ってしまい、下を向いてしまった。

「・・・?」
「あ、いいの気にしないで、恥ずかしいだけだからっ」

下を向いたまま、上ずった声でそう答えるに、
ソラはどうしようかと思ったが、モグがせかすのでページをめくった。

「これ・・・」
「あーやだもー、恥ずかしいよぅ・・・」

そのページに書いてあったのは、
黒い・・・人影のようなもの。

「シャドウ、クポ!」

モーグリーが比較的大きく書かれていた文字を読んだ。
あ、言われてみれば、そんなシルエットをしている。

「名前の通り、影のように地面に解けこんで、
 背後から攻撃を仕掛けてくる。ってかいてあるクポ!」

次をめくれば、
今度は丸々とした体に大きい手足と帽子。

「これは、ラージボディ?」
「って書いてあるクポ!」

「あ、わかってもらえた?」

顔を覆っていた手の平を薄く開いて、こっちを見た
そこからでもわかるぐらい、の顔は真っ赤だったが、
描いてあるものがわかってもらえてうれしかったのか、声が明るかった。

「正面から挑んでもはじかれるだけなので後ろから攻撃するように。」

最後に、すみに書かれた「デカイ!!」という文字を読んだモグは
またソラにページをめくるように言う。

次のページにもハートレスがかかれていた。
今度はあの宙を舞う赤や青や黄色のカラフルなハートレス達だった。
そばにはシャドウやラージボディと同じように、
特徴とポイントが書かれている。

、これもしかして・・・」
「私、弱くて、力も無いし、隠れてるだけだから、
 何かできないかなって思って・・・自分なりにハートレスについて調べてたの。」

読めなきゃ意味無いのにねー。
やっと顔を上げたはそういって苦笑いをした。

「あ、でもちゃんと戦えるようになるから!
 今日もマーリンさんのところにいって魔法の練習してきたし。」

ガッツしてみせる
その必死そうな姿を見たソラは

「ぶっ」

噴出した。

「あはははは!!ふひひひひっ!!」

「ちょ、ちょっとなんで笑うの!」

まさか大爆笑されると思わなかった
恥ずかしくなってか、ソラからスケッチブックを取り返そうと立ち上がった。
しかしソラはが手を伸ばしてくるとするりとよけ、
自分を落ち着かせるために息をすってはいてを繰り返した。

「あははっ、はー、・・・ごめんごめん、っ・・・!!」
「・・・もう、なんなの。」

まだ笑い足りないのか、我慢しきれず時折笑いをこぼしながら、ソラは謝った。
しかしは機嫌を損ねてかじとりとソラをにらむ。

「そんなこと気にしてたのかよは。」
「そんなことって、・・・大事なことだよ。
 いっしょに旅をしたいって言ったのに、私何もできてない。」

戦えないこと、非力なこと
ただ見ているしかできないこと。

守られてばかりで、
逆に迷惑をかけて、

「私、みんなのために何かしたくて、」

それなのに

自分にしかできないこと 何も見つからない



べしっ




「痛っ!」

うつむいたの頭を、ソラはたたいた。

わかってないなー、俺達そんなの気にしてないのに。」
「でも、」
は、」

言い返そうとするをソラは無理やりふさいだ。

「戦えなくたっていいんだよ。
 戦うためにいるんじゃないから。」

ソラは「鍵」に選ばれたから。
戦う道を示されたから。

「命令されたわけじゃないんだし。」

ドナルドとグーフィーのように
王様にいわれているわけじゃない。

「俺達すっごいに助けてもらってるんだよ?」

「私が?ソラたちを?」


驚いたように、目をまん丸とさせるに、
ソラはいたずらっぽく笑ってみせた。

気づいてないんだもんな。」
「気づかないのもなにも、私何かした?」

記憶をめぐらせて、
出会いから今までを思い出して、
頭をひねりながらかんがえる

「・・・やっぱりわからない。」
「ぶっ」

落胆した表情でうつむくに、ソラはまた噴出した。

「また笑うし・・・」
「こんど教えるよ。」
「ほんとに?」
「ああ!」

そういいきったソラをみて、
はしぶしぶながら納得すると、椅子に座った。

「それよりこれ、まだ書き途中なんだろ?」

スケッチブックをに返すと、
まだかきかけのページを指差した。

「だってソラが脅かすから!」
「悪い悪い。
 ちゃんと完成させてくれよな。」

ニカッと、ひまわりが咲くみたいに笑って見せたソラ。

それはつまり、
一緒に旅を続けていこうという意味で。

「も、もちろん!」

は力強く頷いた。



「守る」気持ちは強さをくれる。


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4周年記念 リスエストは「連載ヒロインでソラ夢」でした。
連載ヒロイン、ということなので無印設定です、
が、ソラが違うかもしれない。なんだこの余裕っぷりは。(2008/2/19)

写真素材提供 NOIONさま