妄想ウルトラマン80■
■第3話■泣くな初恋怪獣

題歌にあるように、エイティは、愛と勇気を教えるために地球にやってきたわけだが(断定していいものかどうか…)、この回のテーマは、まさに「愛」(断定していいものかどうか…)だ!

 失恋に涙するシンイチ少年(もちろん桜ヶ岡中学の生徒)。見上げれば夜空に愛しい人ミドリの面影が… すると突然、怪光線がシンイチを襲う。自分を振ったミドリへの憎しみが、マイナスエネルギーとなって、霧を発生させた。怪しげなうめき声が街中に響き渡り、民間人からの苦情でUGMの電話はパンク寸前となる。

 シンイチ少年の憎しみが実体化して出現した硫酸怪獣ホー。気の抜けたような名前のインパクトにもまして、なんとこの怪獣、涙をまき散らしながら暴れまわるのだ(恥ずかしながら私、今回見直すまで、それは涙ではなくヨダレだと思っておりました。だって画面が暗いんですもん)。それも、ただの涙ではなく、鋼鉄をも溶かしてしまうシロモノだというのだから、タチが悪い。いまの言葉でいうと逆ギレか? いちばん手に負えないタイプだ。また、肩からストレートに伸びた長い首、コウモリのような耳、青く光る目にはちゃんと黒目がある。夜の街に立つそのシルエットは、恐怖のトーテンポールだ。

 矢的はシンイチを説得する。本当の愛とは…人のお返しを期待する愛なんて偽物じゃないか…と。そして自分の失恋話を披露(生徒の心をつかむ、教師の常套手段)、“ふるさと”にいたころ、好きな人に、欲しがっていた楽器をプレゼントするため、懸命にバイトをしたが、その会えない2ヵ月の間に彼女には新しい恋人がてきていた、という。等身大で、生徒の気持ちになって物事を考えてくれるセンセイ、理想的な姿だ。まあ、それはおいといて、なによりもウルトラの国にもアルバイトはある、ということが明らかになった。って、なってどうなる!

 しかし、矢的の想いも、失恋真っ只中のシンイチには伝わらない。「くやしいんだァァッ!」シンイチの叫び、そして、怪獣ホーが目指す先には…ミドリの家。「本当にそれでいいのか」矢的の声に、シンイチは走り出す、ミドリを助けるために。「お前なんか僕の心じゃない!」

 が、時すでに遅く、ホーの暴走はもう止まらない(けっこう走るし)。エイティの登場。必殺技バックルビームの初披露で勝利。

 教え子のマイナスエネルギーが生んだ怪獣だから、その子を説得すれば、解決するかもしれない。UGM隊員として、桜ヶ岡中学教師として、一所懸命な矢的の行動は、エイティ・オリジナルのものといっていいだろうし、非常に「効果的に扱われて」いる。学園特撮モノ(ないよ、そんなジャンル)としても、じゅうぶん好感が持てる作品ではないだろうか。(2000/11/4)

<<Top (C) Toshihiko Watanabe