妄想ウルトラマン80■
■第5話■まぼろしの街

園モノと特撮ヒーローものを、足して2で割る。どんな参考書を読んでも、模範解答なんて載っていない難問に、 第5話「まぼろしの街」は、どう立ち向かったのか。
 新たな銀色の巨人がブラウン管に戻ってきて、時すでに1ヵ月が過ぎようとしていた。

 今回の脚本は、初期四話・阿井文瓶氏の激闘に続き登板した山浦弘靖氏。円谷プロ関連では、それまでにウルトラQ、ウルトラセブン、ミラーマン、ジャンボーグAで、その腕を振るっている。
 氏は、桜ヶ岡中学があり、UGMがあり、ウルトラマンがいるドラマ内現実世界の中に、超現実的、シュールな異次元世界を持ってきた。水と油のように遊離しがちな特撮ヒーローもの(矢的猛の活躍)と、学園モノ(矢的先生の失踪を心配する生徒)は、そのシチュエーションの中で、都合のよいバランスを得た。現実世界と超現実世界の場面はパカパカ入れ替わるけれども、矢的が四次元世界に紛れ込んでしまったらという「お題」が、この二つの世界を結んだ。

 学校で深夜までテストの採点をしていた矢的は、最終電車に乗り遅れてしまう。が、もう一本、不思議な電車がプラットホームに入る。これが本当の終電だと思った矢的は、それに乗り込むが、実はそれは、四次元行きの電車であった。
 地球侵略をたくらむバム星人の罠。四次元世界では、矢的はエイティに変身することができず、苦戦を強いられる。そして矢的は目撃する、次元を超えて移動するメカ怪獣を…

 矢的の消えた現実世界では、メカ怪獣の出現に、矢的を欠いて挑むUGMと、突然の自習にざわつく桜ヶ岡中学1年E組が描かれる。オオヤマキャップの矢的への信頼と、生徒の矢的への信頼が、重ねて描かれているのは、見逃せない。矢的は生徒から信頼され、必要とさせる先生へと成長していたわけだ。そしてそれが、矢的の四次元脱出のカギになる。

 矢的を探して叫ぶ生徒たちの声が、時空を越えて矢的の耳に届く。生徒の声に導かれて、四次元世界を消滅させることに成功する矢的(エイティ)。電車が走る、日常が戻る。城野隊員の笑顔、生徒の笑顔、教頭センセイのカミナリ…

 地球侵略をたくらむ異星人・インベーダーもので、シリーズでいえば、山浦氏自身も脚本を手がけたウルトラセブン的といえるかもしれない。砂煙巻き上げながら暴れまわる怪獣モノよりクールな感覚だ。八十年代でもこんなことができる、という感じか。

 四次元の闇の世界、チカチカ光るライトの中で、エイティが立ち向かった相手は、メカ獣メカギラス。昭和メカゴジラと平成メカゴジラの間に位置するデザインで、現在から見ると、さすがにつらいところもあるが、そのインパクトからして、エイティの代表的怪獣であろう。もし平成ウルトラセブンのように、エイティに続編が作られるのなら、現代風にリメイクしてもらいたいというファン心理もある。

 首と両腕が吹っ飛んで、見事に敗れるメカギラスの様子は、あまりにも情けないが、ここは目をつぶろう。第5話は、八十年代ウルトラマンの可能性として、旧来のファンにもじゅうぶんアピールできたものではないだろうか。そしてこの八十年代SFこそが、13話以降のエイティの主流となるのだが、それはまた別のお話。(2000/11/24)

前絶後の「80」検証本『君はウルトラマン80を愛しているか』を読む
◆(監督・湯浅憲明が語った『ウルトラマン80』より)「私は特に『まぼろしの街』が一番好きで、(中略)列車が宙を飛んで異次元の世界に入ってしまうというシチュエーションも良かった」
◆(脚本/山浦弘靖インタビューより)「僕はこの頃『銀河鉄道999』の脚本をやっていまして。(中略)時空を超えて声が届く。それは救いというか、希望なんですね」
■メーンライター阿井文瓶(渉介)氏が同書で<ウルトラマン先生>という設定に「あまり肯定的ではなかった」と語っているのは、衝撃的で悲しい現実だった。その一方で、湯浅氏と山浦氏の上記コメントは、まさに救いであり、だからこそ「まぼろしの街」は傑作なのだろうと思う。
(2006/7/17)

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