妄想ウルトラマン80■
■第11話■恐怖のガスパニック

シナ海に浮かぶヒルマ島にある天然ガス貯蔵基地で、ある夜、小型の怪獣が生まれた。一酸化炭素ガスを吸って成長する怪獣メダンは、翌朝、戦闘母艦スペースマミーで出動したUGM隊員によって、海岸におびき出され、爆破退治された。海岸でひと時の休息を楽しむ4人の隊員達。ハラダ隊員は、偶然拾った貝殻を城野エミ隊員にプレゼントするのだった。

 UGM基地で、倒れる城野隊員。一酸化炭素中毒の原因は、あの貝殻…実は四散した怪獣の細胞だった。軽率な行為にハラダと城野は、この事件が解決するまで基地内で謹慎することを告げられる。

 細胞からよみがえったメダンは、都心部のガス管に進入、巨大化して、地上に出現した。

 基地内で怪獣の細胞の分析を続けるハラダと城野は、怪獣の特性を解明、火力攻撃では、怪獣体内の一酸化炭素ガスに引火して大爆発を起こし、甚大な被害を及ぼす上に、四散する細胞から第2第3のメダンが生まれてしまう。そこで、怪獣を凍らせて、宇宙に運び去るという作戦を提案する。

 冷凍ビーム弾の完成を待つ折、東京に雷雨が発生。怪獣に雷が落ちれば、大爆発が起きる。ハラダはスカイハイヤーで飛び出し、避雷針となるが、力尽きる。エイティの登場、かわって避雷針となるが、メダンのガス攻撃に苦戦する。そこへ、冷凍ビーム弾が到着。怪獣は凍結し、エイティが宇宙へ運び去るのだった。

ペースマミーが登場。でも、作劇上はあんまり意味はない。とにかく、SF映画『スター・ウォーズ』(1978年)へのリスペクトにはあふれている。ガスを吸って成長する怪獣が出現したら…。細胞が残っていれば、何度でも復活するとしたら…。そんな怪獣にUGMはどう立ち向かうのか? テーマが一本通っていて気持ちがいい。学校の描写がなくても、「明日、学校がありますので」といって帰路に就く矢的のシーンがあったり、登場はしたものの、エイティにバトルシーンがなかったりと、興味深いポイントがいくつかある。ガスタンクの爆発に吹き飛ぶ作業員のシーンは、ガメラVの渋谷につながっているような気もした。また、特撮番組の夕日の描写に、いつも心惹かれてしまうのは…、私だけか?(2001/2/11)

前絶後の「80」検証本『君はウルトラマン80を愛しているか』を読む
◆(監督/深沢清澄インタビューより)「防衛チームの誰かの話、生徒の誰かの話という風に的が絞れた分、良かったと思うし、僕もこういう話のほうがノって撮っていたように思う」
■試行錯誤の「桜ヶ岡中学編」を湯浅憲明監督と交互に演出した深沢監督が、この11話と12話について語った部分だ。防衛チームに的を絞りつつも、矢的先生という設定へのさりげない配慮もある11話。生徒に的を絞りながら、先生でありUGM隊員でありウルトラマンである矢的猛の戦いを描いた12話。初期テーマの一つの理想形ではかなったか。脚本の平野靖士氏も11話について、同書で「自分としてはうまくできた話」とコメントしている。テーマにはSF映画『エイリアン』(1979年)の影響があったようだ。
(2006/7/17)

<<Top (C) Toshihiko Watanabe