妄想ウルトラマン80■
■第49話■80最大のピンチ! 変身! 女ウルトラマン

多摩仁王山から乱射された怪電波は、「怪獣軍団の集結」を伝えていた。しかし、それは怪獣プラズマ、マイナズマが地上に怪獣パニックを引き起こそうとして発したニセ電波だった。出現した2大怪獣は合体し、立ち向かったエイティは、腕を負傷し最大のピンチに陥ってしまう。そして、ついに登場する女ウルトラ戦士・ユリアン! ダブルパワーで怪獣を粉砕するが、ユリアンは「地球人に生まれたかった…」と涙するのだった。

カギラスに宇宙Gメン、ザッカル、アメーザと、「80」でSFを描いた山浦弘靖氏が最終回前に放つ感動作。
■UGM隊員を目指すツトムくんは、「メカに強くならないと」とラジオを組み立てる! しかし、たまたま受信してしまった電波が怪獣の発した怪電波と知り、「ボクはUGMの卵だぞ。怪獣を見つけてやる」と奥多摩に向かう。…おバカさんだ。「そうだ、こっちが電波を送れば反応するかも」って、ラジオの電源を入れても、電波は出ないでしょ。どっちかといえば、君自身が「電波」だよ。
■怪電波について、「キャップに口止めされたからといって、ツトムくんにうそをついたのが気になって」と落ち込む矢的猛。ユリアンはいう「私たちはもっと大きなうそをついている。ウルトラの戦士だっていうことを」と。宮坂清彦監督の気合あふれる名シーン。ちょっとあふれ過ぎかも知れないが。
■地球人が自分の力で戦えるようになるまで、戦い続けなければ…という矢的。最終回への伏線だが、ここまでウルトラマンの意志を明確に描いた「80」はやはり素晴らしいと思う。
■ピンチに陥るエイティ。ついに変身しようとするユリアンに「君まで変身してはダメだ。2人ともやられたらおしまいだ。地球を頼む」と伝える! エイティ、あんたって人は!
■それでも変身するユリアン。デザインはエイティと同じ山口修氏だろう。アルカイックスマイルにボディの赤ラインは女性らしい曲線。エイティ特有のウルトラバックルが、ユリアンにもある。シンプルながらも、イヤリング、胸元のブローチ、手首の輝石が、ウルトラの王女であることを物語る。
(2005/8/17)

前絶後の「80」検証本『君はウルトラマン80を愛しているか』を読む
◆(監督/宮坂清彦インタビューより)「『これが始まりなんだ、一生懸命やらなくちゃいかん』と凄く燃えていたことは確かですが、きっと今観たら恥ずかしくてとても観ていられない」
◆(脚本/山浦弘靖インタビューより)「ユリアンは、絶望して心を引き裂かれちゃったとも言えるでしょう。でも、同時に強く80にも惹かれているんですよ。だから、『地球人なら良かった=あなたの前では女でいたかった』っていうことなんです」
■48、49話が初監督作品だった宮坂氏の、まるで新米教師・矢的猛のような一生懸命ぶりは、しっかりフィルムに刻まれている。中でも、ソフトフォーカスで描かれた矢的猛とユリアンの重く切ない会話と、エンディングのユリアンの涙は、最終回への好アシストだったと思う。山浦氏の脚本も、確信犯的に子供番組の枠を壊していることがインタビューからも分かる。
■『ウルトラセブン』メーン監督だった円谷一氏が、当時の新人監督・満田禾斉氏(『ウルトラマン80』プロデューサー)に『セブン』最終回の演出を託したことで、「ダンとアンヌの別れ」という伝説のシーンが生まれた。もしかするとこれは、満田氏が宮坂氏に与えたビッグチャンスだったのではないだろうか。『80』終了でシリーズが長い冬の時代を迎えてしまったことは、宮坂氏にとって不運だったろう。
(2006/7/17)

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