妄想ウルトラマン80■
■第50話■あっ! キリンも象も氷になった!!

真っ盛りの九州・南原市が一瞬にして大寒波となった。冷凍怪獣マーゴドンの仕業だ。出動する矢的猛と星涼子をオオヤマは呼び止める。そして口にした。「もうエイティには変身しないでくれ。これからは人類だけで守る!」…オオヤマは矢的がエイティであることを、ウルトラの星の危機に涼子がエイティを迎えに来たことを、知っていたのだった。UGMはジャイアントボール作戦で怪獣を倒し、エイティは地球に別れを告げるのだった。

いに別れの時がきた。最終回用の脚本ではなかったといわれる石堂淑朗氏のホンが結果、実に幸せなさよならを生んだ。監督は「セブン」最終回でダンとアンヌの“あの”別れを演出した満田氏だ。
■冒頭、見る見る凍りつく南原市をミニチュアセットで表現した佐川和夫特撮監督の技に感動。最終回だ!と画面から伝わるテンションが、やっぱり違う。
■UGM司令室から出動する隊員たち。扉が開いて廊下を歩く…「セブン」的だ。
■何かを覚悟したオオヤマキャップ。セリフが重い。「果たしてこれまで、怪獣を倒してきたのは我々UGMだったのか」「最強最後の怪獣、ヤツに勝てばUGMは無敵だ」「もうウルトラマン80は現れない。80の助けはいらない。80の力を借りないで怪獣をやっつける」…いいぞ、中山仁!
■オオヤマに正体を知られてしまったエイティ。驚く矢的猛。しかし、やがて笑みを浮かべて答える。「やはり、知っていたんですね」…いいぞ、長谷川初範!
■UGM初期メンバー、ハラダ、タジマの協力で、成功するジャイアントボール作戦。砕け散るマーゴドン。これぞ円谷特撮。ありがとう佐川特撮監督。
■UGMで開かれるお別れパーティー。科学班に作らせた城野エミ隊員そっくりのアンドロイド。満田監督の遊び心なのだろうが、ドラマとして考えると、ちょっと気味が悪い。…が、「ウルトラマンマックス」にアンドロイド・オペレーターが登場して、ちょっとびっくり。
■「さよならは終わりではなく、新しい思い出の始まりといいます」地球人に別れを告げるウルトラマンエイティ。学園モノの最終回的あいさつだ!
■地球での最後の1日を満喫する矢的とユリアン。2人が同じウルトラの戦士だからこそ描ける、暖かなシーンだ。海岸で変身し、ふるさとへ飛び立つ2人。バックに流れるのは、矢的猛を歌った挿入歌「心を燃やすあいつ」。作詞は満田監督。ドラマと歌詞のシンクロ率が何と高いことか。そしてこの作品は、地球人のため若い心を燃やした人間「矢的猛」の物語であったと、改めて実感するのだ。
(2005/8/17)

前絶後の「80」検証本『君はウルトラマン80を愛しているか』を読む
◆(監督/満田禾斉インタビューより)「最終回は悲壮な終わり方ではなく、とりあえず用事ができたから、一端ウルトラの星へ帰るみたいな感じですよね。視聴者には、数年経ったらまたウルトラマンに会えるんだっていう期待感をもってほしかった」
◆(脚本/石堂淑朗インタビューより)「プロデューサーの野村清さんとTBS近くのおでん屋さんの2階で『もうお終いだから金もねえや』って、安いおでん食ったっていう、それだけ覚えてる」
■プロデューサーとして『80』全体を見てきた満田氏がアイデアを出し、自ら監督した最終回。希望に満ちた「幸せな別れ」を作り上げた一方で、円谷プロは長き苦闘の時代へと突入する。
(2006/7/17)

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