カラスとツバメ


7月も終わるという夕方

いつもの散歩道のアスファルトは

熱を放ち続けている

雑木林の木陰のわずかな涼で

汗の流れが途切れることもない

林を抜ければ一面たんぼ

風の波が緑の葉の上を次々に通り過ぎていく

その少し上をしきりに飛び交うツバメ

まるで線を描くような飛びっぷりだ

ひとしきり飛んでは電線に止まる

すると別の一羽が飛び立つ

なかなか全員集合とはならないが

並ぶと十数羽

ツバメファミリーの食事の時間のようだ

それぞれを確認しあうように戻り

また飛び立つ

そんな光景を眺めながら

まさじいとアレどんの散歩は続く

サンコウチョウの大きな鳴き声が響き

それに混じってツバメの家族の会話

にぎやかなおしゃべりが聞こえてくる

小一時間歩いて家に近づく頃には

ヒグラシの合唱

蝉しぐれ

そんな頃合いに奇妙な光景に出くわす

一羽のカラス

家路をたどるように一直線に飛ぶ

そのまわりに小さな鳥がまとわりつく

ツバメのようだ

しばし立ち止り眺めていると

ツバメは遊んでいるように見える

上になり横になり

時には前を横切る

どうみてもカラスは嫌がっている

自分より小さな鳥がまとわりつくのだ

しかも飛ぶ早さは比較にならない

何をしているんだろう

なんだか見たような光景だが

そしてはたと気がつく

ツバメがカラスをからかい遊んでいる!

そんなことってあるんだろうか

だが、現にその光景を見ている

見るからに楽しそうなツバメ

見るからに迷惑そうなカラス

へえ〜

まさじいは感心してしまった


カラスは遊ぶ

餌をさがして輪を描くトンビにまとわりついて

ときに数羽が

たまには一羽で

トンビをつついているようにも見える

かしこいカラスにはとろいトンビ

楽しむカラスに

嫌がるトンビ

そんな光景はよく目にする


まさかね

カラスがからかわれるなんておもしろい

まさじいはうれしくなった

わがもの顔のいばりやが手玉に取られる

そんなことがあっていいのだ

「アレどん見てみぃ〜 カラスがからかわれてる」

日中のほてりが残る散歩道

いい加減いやになっているアレどんに

何を言っても通じない

「な、世の中うまくできているもんだ!」

アレどんの気持ちには頓着もせず

まさじいは言いつのる

まさじいとアレどんの散歩

間もなく家だ




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