落ち葉


11月もそろそろ終わろうとする頃

その朝はきれいな青空が広がり

いつになく冷え込んで庭一面真っ白な霜だった

いよいよ本格的な冬到来だ

ネックウォーマーで冷たい空気の進入を防ぎながら

まさじいとアレどんの散歩はスタートした

雑木林にさしかかると

風もないのに木の葉が降ってくる

静かだ

次から次へと雪のように舞い降りてくる

自ら枝を離れるその静けさだ

アスファルトの路上には降り積もった木の葉

まさじいとアレどんの落ち葉を踏む音と

小鳥たちのさえずり

そのほかの音は見あたらない

乳白色からセピア色まで

小楢の出来たての落ち葉が降る

木の枝に残った葉がずいぶん少なくなった

林の中のずっと先まで見える

ずいぶん明るくなった

霜が降りるたびに林が明るくなるのだ

大霜はいっせいの落葉をうながす

一面に散り敷かれた落ち葉に朝陽がさして

暖かそうなたまりができる

もったいないほどの時だ


やがて強い北風が吹く

千切れ雲の行列がやってくる

太陽の軌道は中天を大きくはずれ

間もなくつるべ落としだ

毛糸の帽子を目深にかぶるまさじいと

いつもと変わらぬアレどん

午後の部の散歩はそんなだ

震えながらなのだ

せっかくの朝は堪能しなければならない

立ち止まって落ち葉の厚みを調べる

しゃがみ込むまさじいにアレどんが割り込む

何かあったのか?

鼻を動かす顔はそんなだ

ほらすごいな、生まれたての落ち葉だぞ!

などと言っても横目でじろり

なんだ、つまらん・・・

そんなふうにまたトコトコ歩きだす


林の中は道路以上だ

きれいに下刈りされた上には更に厚く降り積もっている

それはやがていい香りを放つ

地に帰る木の葉の匂いだ

胸一杯吸い込みたくなる匂いでもある

まさじいの好きな匂いなのだ

体が動く間はやめられない

アレどんとの散歩

勿論それもそうだが

雑木林の管理人

戦い続ける雑木は生きるか死ぬかだ

天井の支配権をとれなければ敗れる

敗れれば枯れる

だから木々が大きくなるにつれ数は減る

それらを眺めていると一本も切りたくなくなる

自由競争だ

だから手入れはもっぱら下刈りだけ


ずいぶん隙間の出来た林を横目に

アレどんの後を追う

いいなあ

音もなく降り積もる落ち葉の朝

一年に一度しか見られない

毎年見られるとは限らない

それを言ってわかってくれるアレどんじゃない

昨日と同じ

それを言ってもわからない

いつもいつも同じ所で立ち止まる

マーキングだ

昨日とは違う

そう言い返されそうな気もしないではない

もうちょっと行くか

アレどん?




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