文章と写真の時期が一致しませんが、そのうちあわせます。そのうち・・・

マウスオーバーで釣果が!

 釣りに行こう


めったにお目にかかれない
というか唯一、が正しいのだろう
のっけから嘆息
ルアーの第一投
ポイントを探して進む
家を出るのが遅すぎて今頃
もう八時を少し回ってしまった
後悔しながら静かに水の底に視線を落とす
水の中の音を消すことに集中し
一歩に時を費やす
小さな川
ポイントを目指すための川の中の移動
大木が川の半分をせき止め
瀬と瀞を微妙に分けている
色づいた木々の葉が朝日を受け
鮮やかな景色の中で
身を小さくする
存在を消さなければならない
絶好のロケーションだ
そんな風にして近づけば
緑色の中に沈み込んだ瀞
朝日にキラキラ輝く瀬
確信の思いに満たされて
だが、改めて思う
何という美しさだろう
ルアーの投入が躊躇われる
波紋は一点の曇り
ずっと眺めていたい
思わず石の上に腰を下ろす
こんな時
昔からある想いに囚われる
もったいないほどの光景
ばあさまにも見せてあげたい
水音と
何種類かの鳥の鳴き声
逆光で半部透けて見える
白や黄色に色づいた木々の葉
だんだん見えてくるまわりの景色
やっと太陽の温みを感じる頃
光のカーテンに
吐く息の白さも目立たなくなる
せっかくだから
そう割り切ればお茶などと
まだ一投もないうちに
デイバックが開けられる
いつもの事とは言え
目的逸脱
あまりある時の中で
耳をすまし目をこらす
いつからか
釣果に一生懸命ではなくなった
もともと
釣り上げた岩魚と
酒とつながることもあまりなかった
リリースには
ルアーは凶暴だ
だのにヒットの感触だけで今日も出てきた
だから
腰をおろしたまま
感じるまま
それが特別なことではないし
過ぎゆく時にあせることもない

寒い夜明けだった
だからか
落ち葉の水に漂う数が多い
役目を終えたそれらの
なんと鮮やかな色素
人間以上に色を見分けられる
そんな存在があるのだろう
そのためのものなのかも知れない

昼飯
ばあさまのおにぎりが
おいしく消えて
さてもう少し探りたい
川幅がずいぶん狭くなった
かなり上流まで歩いて
でも疲れたな
釣果が少ない
それだけで疲れるものだ
あたりがさっぱりなくなって
時間帯がそうなのだ
釣りが雑になる

流れてくる枯葉
水面を揺れ
水中を乱れ
赤と黄色と白と

足元を上流へ流れて
あれ?
落ち葉が?
え?
続いていくつもいくつも
上流を目指す魚!
魚?
こんなに小さな川
川幅5メートルもない
鮭ほど大きくもない
でもこんなことが・・・
まさじいの
考えもしないこと
それが足元で起きている
人間など無関係
そう言うように幾匹も幾匹も
何かに憑かれたようにも見える
まさじいはただ立ち尽くし
見とれた
何て凄いんだ!
えらい現場に立ち会った
釣りどころではなかった
ただ魚がいる川
まさにそうじゃないことを
目の当たりにしている
辺境の川というわけじゃない
だから予想もしない
予想もしないところに
別の世界があった
足にぶつかりそうな近く
ずっと先を見据えたように
魚が泳ぐ
ひたすら遡上する
まさじいは
川の中に立ち尽くして
動くことができなかった

朝からの光景
昼時の睡魔
続いての気だるい時間
一人の時を満喫
それをはみ出す出会い
それは釣りという楽しみ
それを圧倒する
思いもしなかった世界
立ち尽くしたまま
時間が流れていくようだった


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