右腰の自発痛の原因が腎臓疾患だった患者さん

 
1ヵ月前から右腰部と鼠蹊部にズキンズキンと、特に動作時に強い痛みがあると訴える50代半ばの女性が来室しました。この患者さんは17年前に左腰と左下肢の自発痛を訴えて来室したことがあります。その時は、思い当たる原因もなく、その2か月前から痛くなり始め、横になっていなければならないとのことでした。その時は、脊柱を検査してもサブラクセイションはなく、腎臓疾患を示唆する鉛棒と合成ゴム棒によるTLと器質的疾患を示唆する磁石棒によるTLが右上腰部にて陽性になりました。この患者さんには腎臓に何か重大な問題があると思いましたので、整形外科ではなく泌尿器科の検査を受けるように言い、食品の制限として牛肉、乳製品、アルコール、砂糖、果物を制限するように言って治療を終わりました。患者さんの話では、2か月後に右腎臓のがんが見つかり、その1か月後に腎臓の摘出手術を受けたそうです。摘出した腎臓は黒く硬くなっていて、抗がん剤治療を受ける必要はなかったとのことでした。

 この患者さんが右腰と鼠蹊部の強い自発痛を訴えて17年ぶりに来室したのですから驚きました。脊柱の検査では以前と同じくサブラクセイションはありませんでした。筋力検査では、鉛棒、合成ゴム棒、磁石棒、出血性疾患を示唆する真鍮棒によるTLが陽性になり、それらのTL陽性はビタミンCの錠剤一瓶で陰性になりましたので、ビタミンCの点滴療法を受けてもらいました。それと、4月のトピックスで紹介した和田洋巳著「がん劇的寛解」の食事療法にある体を酸性にする食品が筋力検査でも陽性になりましたので、全ての動物性タンパク質と穀物を制限してもらいました。10日程後、点滴療法を受けると本人の表現ではスッキリと治ったとのことです。

 20年ほど前は、食品のサンプルを腹部に乗せて検査するだけでしたが、その方法では全ての動物性食品が陽性になることはなく、制限すべき食品を網羅することはできなかったようです。和田先生が言う体を酸性にする食品を網羅的に検査し見つけるには、症状のある全ての部位にサンプルを当てて検査する必要があるようです。この患者さんはすでに片側の腎臓を摘出していますので、何とか残された腎臓を守るうえでも、専門医による検査を受けていただくようお願いし、私の治療室にも再度ビタミンCの点滴療法を打つ必要があるか検査するため、毎月または症状の再発時に来室するようお願いし治療を終わりました。

 整形外科の腰痛学会によると、腰痛の原因の85%は原因不明とのことです。その何割かはサブラクセイションが原因かもしれませんが、この患者さんの様なケースもあることを、カイロプラクターは認識し治療しなければならないと感じた次第です。

令和4年6月6日