T2~11の胸椎アジャストメントの訂正

 
スペシフィックなジャストメントを目指そうとするカイロプラクターの世界では、椎骨サブラクセイションは可動性触診と筋力検査の結果をもってその有無とあり様を判定するとされ、両方の検査結果が一致して初めてアジャストメントを加えることができるという建前になっています。しかし、直接法で矯正できるケース、即ち、可動性が制限されている脊柱のレベルの棘突起で筋力検査のTL(セラピローカリゼイション)が陽性になり、矯正姿位にもっていって陰性になるケースであるにも関わらず、指先によるチャレンジが陽性にならないケースが想定以上に多くあります。この為でしょうか、筋力検査を利用するほぼ全てのカイロプラクターがチャレンジをすることなく、自らの得意とするテクニックでアバウトに矯正しているのが現状です。AKの創始者であるグットハートD.C.も、なぜか筋力検査でリスティングをだしてスペシフィックに矯正するのではなく、脊柱全体の可動性をつけるジェネラルテクニックで矯正していました。その理由はこんなところにあったのかもしれません。

 私はサブラクセイションの影響力を信じるが故に、可動性触診と筋力検査の結果が一致しなければ矯正しないという立場でこれまで治療してきました。一般に、胸椎部サブラクセイションのリスティングはPLSになることが多いのですが(その理由については本書を参照してください)、胸椎部の動きの要素のうち主たるものは関節面の構造から回転であると考え、チャレンジは伏臥位にて指先で棘突起に脊柱と直角に左から右に向けて行っていたのですが、陽性になることはほとんどありませんでした。陽性にならない理由が、刺激の種類が違うためなのか、チャレンジの方向が違うためなのか、タイミングが違うためなのか、長年試行錯誤を繰り返してきました。「臨床カイロプラクティック」93ページで説明した様な、棘突起先端の左側面に合成ゴムをつけた棒をできるだけ寝かせて脊柱と直角にあて、木槌で打つチャレンジをすると、稀に陽性になることがあります。その時は、その刺激で陰性になるまで打つという方法で矯正していました。脊柱を矯正できる患者さんの多くは、上部頸椎部、頸胸椎移行部、L5と骨盤部を矯正すれば事足り、胸椎部の可動性減弱ヵ所のある患者さんは多くはありませんでした。従って、胸椎部の可動性減弱ヵ所がありチャレンジに反応しない患者さんに対しては、マイナーと考えるが故に他の部位に可動性をつければ動き出すと思い、矯正しないで経過をみていました。しかし、この様なアプローチの結果として、時に背中の痛みがなかなか取れないケースが出るという問題を抱えることになりました。

 それを昨年ある切っ掛けで、チャレンジの刺激の種類を発泡スチロール棒に替え、棘突起の先端左側にコンタクトし、チャレンジの方向を回転と傾きの要素に対応して脊柱に対して直角ではなく斜め45°上方に向け、伸展の要素に対応して寝かせて木槌で打つと陽性になることに気付きました。複数の可動性減弱ヵ所があるなら、大抵は下の胸椎から順次矯正していき、次に右下の側臥位にて同じ棘突起を下から同じ要領で再度矯正していきます。この方法を1年程試みてきましたが、胸椎部を最少の刺激量で最も正確かつ安全に矯正でき、内臓の反射痛を除くサブラクセイションを原因とする背中の痛みを容易に取ることができるようになりました。以上の経緯から、T2~11の直接法による矯正には、刺激量が必要最少で済むこの方法が最も良いと考え、「臨床カイロプラクティック」93~94ページのT2~11の胸椎アジャストメントを上記の方法に訂正いたします。





 T2~11の胸椎部のサブラクセイションの特徴は、程度の差はありますが、伸展、即ちガンステッドが言うところのinfのつくPLSです。これら胸椎部のサブラクセイションに対するディバーシファイドテクニックやニーチェストを利用したガンステッドテクニックは、リスティング通りにスペシフィックに目的の胸椎の回転と傾きの可動性を回復させることができないだけでなく、伏臥位で後方から前方へのスラストが加わることにより、胸椎の伸展要素を矯正できず、さらに肋軟骨を損傷する恐れもあります。それと、前方変位の矯正と称して、仰臥位で両手を反対側の肩にあてさせ、一椎下の横突起に拳の母指球と四指をあてて前方から後方へのスラストを加えるテクニックも、同じ理由で推薦できません。今回の方法は、手によるアジャストメントに拘るカイロプラクターにとってはパフォーマンス的に物足りないかもしれませんが、胸椎及び胸郭に対して過剰な負荷を加えることなく、最適な刺激量で的確且つ簡単に矯正できる最善のテクニックと信じる次第です。

平成29年9月1日