筋力検査陽性になる食品について

 
私は30年近く、日々食べる食品を自らの体と患者さんの体で筋力検査によりチェックし、陽性になるならその食品を制限し、患者さんには制限するように指導してきました。その効果は予想を上回るものがありましたが、検査方法と陽性になる食品の分別に関して至らない点が多々あり、気が付いた事項を列記しますので追試してみてください。

 当初は、食品サンプルを作り、それを患者さんの腹部の上に乗せて筋力検査を行っていました。当治療室はカイロプラクティックの治療室ですから、まずサブラクセイションがあればそれにアジャストメントを加え、次に食品サンプルが筋力検査陽性になれば、その食品を制限してもらっていました。主に制限してもらった食品は、牛肉、乳製品、砂糖、果物、海藻などでした。一般常識では、牛肉は良質なタンパク質であり、乳製品はミネラルの補給源であり、果物はビタミンCの補給源であると考えられているため、大抵の患者さんはそれらを積極的に食べていました。しかし、これ等の食品が一部の患者さんで筋力検査陽性になり、それらの食品を制限するように言うと、大抵の患者さんは不可解という顔になります。そこで次の様に説明していました。牛肉はIgE抗体によるアレルギーにより(
ケアリー・ナド―&スローン・バーネット著「食物アレルギー克服プログラム」では、アフリカのモザンビークでは、牛肉にアレルギー反応を示す人々がいるそうです)、牛乳を含む乳製品はIgE抗体によるアレルギー又は消化酵素がないことによる乳糖不耐により、砂糖果物は高血糖による血行障害により、海藻は甲状腺の機能が狂わされることにより、様々な症状が発症するためと説明していました。食品の制限を加えた治療成績としては、患者さんの病状が器質的な問題にまで進んでいないなら、大方の患者さんの症状はアジャストメントと食品の制限のみで軽減できていました。

 ところが、時が経ちTL(セラピローカリゼイション)で使う棒の種類が多くなっていくにつれ、全てのTL陽性サインをサブラクセイションのアジャストメントとそれまでの食品の制限だけでは陰性にすることができなくなり、症状の軽減も得られない患者さんが溜まっていきました。何か制限すべき食品を見落としているのではないかと思い、食品の検査法の改善に取り組みました。その取り組みとは、

第1、 症状のある体表部に直接食品サンプルをTLして検査してみました。
第2、 臓器の反射点にサンプルを当てて検査してみました。
第3、 頭頂部、後頭部、側頭部
(どの様なメカニズムによるものかはわかりませんが、ここだけで反応する食品があります)にサンプルを当てて検査してみました。

 腹部に加えて上記3か所にサンプルを当てて検査してみると、腹部では陰性だった食品が他の部位では陽性になることが多くあり、それらを制限してみるとさらなる症状の軽減が得られました。この様な経験から、食品の検査部位で陽性になる、ならないの違いが生じるのは、

第1、 IgE又はGによる即時型または遅延型のアレルギーによる症状なら・・・・全身で反応する
第2、 その食品に対する消化酵素がない不耐による症状なら・・・・腹部全体と患部で反応する
第3、 その食品に対する過敏症による症状なら・・・・症状のある部位のみで反応する
ためという結果になりました。

 1、の中でアナフラキシー症状に苦しむアレルギーの子供達は、アメリカでは20年前に1%代だったのが、2020年では6.5%に増えているとのことで、その様な子供さんを治療する時は注意が肝要です。また、アレルギーの程度には個人差があり、多くは1、から3、のいずれかがが重複しています。そのため筋力検査陽性になる食品の発症メカニズムを正確に把握できないことが多く、患者さんへの説明があいまいになりがちです。特に主食の穀物が筋力検査陽性になった時、上記の他に穀物の胚芽に含まれる酵素活性を抑制する働きのあるアブシジン酸の話や、小麦のセリアック病の例などを挙げ、自らの筋力検査の結果を信じ、陽性になる食品を制限するよう説得してください。詳しくは鶴見隆史著「食物養生大全」(評言社)が参考になります。

 最後に注意して欲しいことは、器質的疾患を原因とする症状を軽減させようとするには、アジャストメントと食品の制限だけでは足りず、様々なTL陽性を陰性にする薬、生薬、ハーブ、栄養補助食品を摂る必要があるかもしれません。その際、その様な有効な薬、薬草等があったとしても、食品の制限を続けることができないなら、全ての努力は無駄になってしまいますので、食品の制限を徹底させてください。様々なTL陽性反応は、その患者さんにとって足りない医療が何かを追いかけていく指針にはなります。どうしてもTL陽性反応を陰性にできないなら、その患者さんの治療は、医療機関の診断を仰いだ上で続けなければなりません。

令和3年5月18日