食養が必須の患者さん

 
20代後半の女性。愁訴は慢性的な便秘、天気が悪くなると喘息発作が起こる、鼻づまり、皮膚にぶつぶつが出てきた等です。便秘には大手製薬会社の大黄が主成分の漢方便秘薬を服用し、喘息発作には吸入器フルタイドを携帯しているとのことです。

検査
 触診の検査では、可動性が制限されているレベルはなく、仙腸関節にも問題はありませんでした。筋力検査では、腸の機能的障害を示唆する水の入った瓶によるTLが陽性になり、甲状腺の機能障害を示唆するチタン棒、銅棒によるTLが陽性になりました。その他、アレルギーを示唆するコルク棒によるTLが陽性になり、骨格全体で骨形成の障害を示唆する骨棒によるTLが陽性になりました。それ以外は全体的には非常に健康な状態と推定しました。

治療
 1.便秘に対して服用している大黄入りの漢方便秘薬は筋力検査陽性になりますので止めてもらい、陰性のセンナを服用してもらうことにしました。大黄はほぼ全ての市販の便秘薬に調合されていますが、私の治療室で大黄が筋力検査陰性になった患者さんは40年間で一人だけでした。体は合わない大黄を無理やり排便とともに出しているため、腸に炎症が起こっているように思います。
 2.甲状腺の機能障害は、ヨード分を含む海藻類を摂り過ぎることが原因であり、毎日の食生活において昆布、わかめ、ヒジキ、海苔を制限してもらいました。甲状腺ホルモンは骨形成を、副甲状腺は骨吸収を司るホルモンであり、過剰なヨード分を毎日食事から摂っていると、その機能に障害が起こる体質の患者さんがいますので注意が肝要です。
 3.アレルギーのサインに対して、食品を検査すると、牛肉、牛乳、乳製品、海藻が筋力検査陽性になりました。喘息発作、皮膚のぶつぶつは牛乳と乳製品が原因と思われます。牛乳にはアレルギー物質以外にもインシュリン様成長促進因子等が含まれているとのことで、高品質の栄養食品と過信しない必要があります。日本人の90%が乳糖不耐であり、乳糖を分解できないため、カルシウムを牛乳からはうまく吸収することができないそうです。そのため甲状腺の機能障害と相まって骨の形成障害を生じる可能性があります。

最後に
 この患者さんは治療の最後の方で、脊柱側弯症と診断されたことがある、甲状腺が腫れたことがあると話してくれました。その原因は恐らく、子供の頃から牛乳をよく飲んでいたこと、海藻が好きなので多く食べていたことにより、成長期に骨形成に問題が生じたと思われます。多くの人は牛乳を飲んでいればカルシウムの補給は大丈夫、海藻にはミネラルが豊富に含まれているから毎日摂るべきと信じていたはずです。幸い側弯症は程度が軽く、病的な問題ではなく、食生活習慣の問題によるものと判断しましたので、患者さんにはそのことを念を押して説明しました。医師から側弯症の気があると言われれば一生忘れない心の負担になるやもしれません。甲状腺の機能低下は不妊の原因にもなりますので、特にこの様な体質の若い女性は制限を継続することが求められます。

令和5年6月16日


topix.html へのリンク