「ガンが消えていく希望の食事術」 西台クリニック理事長・医学博士 済陽高穂著(青春文庫)令和4年5月20日第1刷
著者は発ガンの主な原因の7割は生活習慣であり、食事や喫煙などの生活習慣の見直しで6~7割は改善できるとし、3つの大原則と5つの抗ガン食を提案しています。ガンを治すための3つの大原則とは、絶対必要なことで、最低限これをやらなければガンを治すことはできないという食事のルールです。
3つの大原則とは
大原則① 塩分を控える 普通の減塩とは違い、限りなく無塩に近づける。
大原則② 動物性タンパク質・脂肪を避ける
大原則③ ジューサーを利用した新鮮な野菜・果物のジュースを毎日1.5ℓ以上摂る
5つの抗がん食とは、普段の食生活で積極的に食べて欲しい食材です。
抗ガン食① 胚芽を含む穀物、豆、イモ類を摂る
抗ガン食② 海藻、キノコ類、ヨーグルトを摂る
抗ガン食③ ハチミツ、レモン、ビール酵母を摂る
抗ガン食④ 油はオリーブ油、ごま油、ナタネ油にする
抗ガン食⑤ 飲み水を自然水にする
その他に、断酒、禁煙も併せて実行する。それと、食べるときは活性酸素を減らすためにゆっくり食べる。砂糖はガンの栄養になるので摂らない。睡眠を十分とる。低体温を防ぐため湯船に10分以上つかる。ストレスをコントロールするため深呼吸をする等、様々な生活習慣の改善を行うことにより、寛解と改善を合わせると食事療法の有効率は68%だったそうです。
私の筋力検査を利用した食事術では、
大原則①の限りなく無塩に近づけるに合致する患者さんは、腎臓疾患の患者さんだけでした。いずれにしろ減塩してもらうのは良いこととは思いますが。
大原則②の動物性タンパク質・脂肪を避けるというのは大賛成です。
大原則③にある野菜と果物に関して、ビタミンKを制限すべき虚血性の疾患のある患者さんでは葉物の野菜、納豆を制限しなければなりません。果物に含まれる果糖は腸で吸収されたあと肝臓で代謝され脂肪として蓄えられ、糖新生でブドウ糖に変換されいずれは血中に放出されます。現在の甘くておいしい果物はガン患者さんに限らず生活習慣病のほぼ全ての患者さんで筋力検査陽性になります。また、ジューサーの利用を勧めていますが、食物繊維はどうするのでしょうか。野菜・果物なら全てOKとはいかないのではないでしょうか。
抗ガン食①の胚芽を含む穀物は、胚芽に含まれる酵素活性を抑制するとされるアブシジン酸のせいでしょうか、筋力検査陽性になるため制限してもらっています。ただ胚芽の有無にかかわらず、穀物全てに筋力検査陽性になる患者さんが多くいて、その理由を説明できないでいます。
抗ガン食②の海藻は、甲状腺機能障害のある患者さんでは制限する必要があり、ヨーグルトを含む乳製品にはインシュリン様成長促進因子が含まれるためでしょうか、筋力検査陽性になります。
抗ガン食③の健康食品とされるハチミツは、一部の患者さんを除いてなぜか筋力検査陽性になります。
抗ガン食④のナタネ油は、ダイオキシンに似た環境ホルモンが含まれていると言われているためでしょうか、筋力検査陽性になります。
抗ガン食⑤の自然水はほぼすべて筋力検査陽性になります。代わりに私の住む世田谷区の水道水は筋力検査でOKになり、わざわざお金を出してペットボトルに入った重い水を買う必要はないと思います。ただ貯水槽に問題がある住宅では、ペットボトルの水を購入する必要があるかもしれません。
著者は本の150ページ「ガンとわかったらどうするか」で、ガンの治療の基本は手術であり、現代医学で治療できる方法があれば、それも並行して受けていただく。西台クリニックで食事指導を受けるには、主治医が行う治療との併用が条件で、紹介状が必要とのことです。著者の食事術と私の筋力検査による食品の制限で重なるところは多いのですが、異なるところも多々ありました。つまるところ我々治療者としては、ガン患者さんだけでなくガンとは診断されていない前ガン状態の生活習慣病の患者さんの食事術に関して、和田洋巳著「がん劇的寛解」(角川新書)で提示されている制限すべき食材等とも比較し検証し、自らの食事術を確立していくしかないようです。
令和4年10月6日