薬害による股関節痛

 10年ほど前、来室3日前から左坐骨神経に沿って特に座位にて自発痛が始まり、翌日より徐々に左下肢全体に広がり、力を入れると痛いと訴えて来室した当時60代半ばの男性の患者さんが、今度は3週間前に夜中トイレで右股関節痛が始まり、歩行困難になりましたが、これらの痛みは徐々に良くなってきたそうですが、朝痛みが強く、夕方は歩けるようになったとのことです。ところが2週間前から右膝にも自発痛が始まり、その1週間後に腰までその痛みが広がり、さらに中山式の指圧器を使ったところ右下肢坐骨神経痛になったと来室しました。

 カルテを見ると10年前は内科的な疾患を示唆するTL陽性はなく、4回脊柱の矯正を行い改善しましたが、今回は脊柱にサブラクセイションは見つからず、消化器系の疾患を示唆する銅棒、血行障害の疾患を示唆するダイアモンド、腹部に炎症を示唆する真鍮棒によるTLが陽性になりました。この患者さんは5年ほど前に脳内出血で入院し、その翌年脳梗塞で再度入院し、いずれも点滴治療で回復したとのことです。それ以降、バイアスピリン(血小板凝集抑制剤)、アムロジン(降圧剤)、ラベプラゾール(消化性潰瘍治療薬)、テルミサルタン(降圧剤)を服用しているとのことでした。その他に、別の医院で10年前から夜間尿対策で八味地黄丸、炙甘草湯を処方され飲んでいるとのことでした。

 治療としては、食品の検査をしましたが陽性になる食品はありませんでした。服用している薬を検査すると、脳内出血で入院した病院から処方されている薬は全て陰性でしたが、別の医院から処方された漢方薬が陽性になりました。以上の検査から、消化器系全体の炎症の原因は10年間服用していた漢方薬による薬害であり、症状はそれによる炎症の反射痛ではないかと推定しました。漢方薬の服用を止めてもらい、この炎症を陰性にする薬を探しているとセルベックスで全ての陽性が陰性になりましたので、患者さんに医師になんとか説明して処方してもらうように言って治療を終えました。幸いこの患者さんは医師からセルベックス(消化潰瘍薬)を処方してもらい、1週間以内に症状は軽快しました。

 この患者さんが基本的にはとても健康であったにもかかわらず、長い間様々な症状に苦しんだのは、漢方薬による薬害が原因であったようです。患者さんの体は日々変化していますので、十年一日同じ薬を処方するような漢方薬の利用法が当たり前になるなら、コロナ禍で漢方が無力だったことと相まって、長い膨大な臨床経験の集積の結果としての漢方への評価が低下していくのではないかと危惧する次第です。

令和4年1月28日