第3章 快楽のジャイロモーメント
【禁断の縦置きクランクシャフト―BMW編】
回っている駒の床を動かすと、駒の軸は後ろに傾きます。
駒の回っている床を一定の方向に定速で移動します。
その床を進行方向に加速すると、回っている駒の軸は後方に傾きます。
加速時の駒の軸は、進行方向に水平で安定します。
この前後方向にクランクシャフトがある代表的なバイクはBMWです。
重いフライホィールは後ろから見て半時計回りで回転します。(図の白い丸)
フライホィールはクランクケースに入っています。
フライホィールのトルク反力で、クランクケースは時計回りをしようとします。(赤い丸)
アクセルをあおると、車体はグラッと右に傾きます。
「パワーボール」という、遠心力で握力を鍛える体育用の器具があります。
毎分5千回転で8kg、1万回転で16kgの負荷を作り出します。
小さなボールでもこれだけの力を産み出します。
エンジンのフライホイールは、さらに大きな角加速度を作り出します。
大きな力で、グングン引っ張ってくれるのです。
エンジンは後ろから見て、反時計回りで回転します。
トルク反力で、入れ物の車体は時計回りに動きます。
左に傾いて右に戻され、左に傾いて右に戻される。
エンジンと車体は一定のリズムで振動しながら、直進します。
何の動きも無いと、外乱で直進は崩れます。
一定のリズムで動きがあると、外乱にも強くなります。
お互いの動きを干渉しながら安定し、乗り手が気付かない程度にフラフラと小さく左右に揺れながら、反力安定の状態で直進します。
ハンドルから手を離すと、小さく左右にゆれながら直進しているのが分かります。
直進している物体は左右の動きが無い状態より、左右の力を受けて小さく揺れながらの方が安定します。
高回転になると角加速度はさらに大きくなり、高速で直進しようとする力が非常に大きくなります。
サスのセッティングに関係なく、フライホイール自身の角加速度により、矢のように直進してBMW独自の世界に入って行きます。
テレスコピック型フロントフォークは安定しています。
1960年代BMWの旧車のフロントフォークは、サイドカー用のアールズ型が多い。
後ろに荷物を積みすぎると、前が軽くなってしまいます。
アールズ型は後輪の荷重が重くなるとハンドルがブレ、まっすぐ走りません。
荷物を積む時はここだけ注意すると、矢の様に直進します。
回転運動の次に往復運動について考えます。
大きく往復運動をしているのはピストンです、ここから振動が出てきます。
BMWの水平対抗エンジンは左右に1個ずつのピストンが往復運動をしています。
お互いに外側に開き、内側に戻ってきます。
お互いの振動をお互いに打ち消しあっています。
コンロッドが前後にずれているので振動0にはなりませんが、
水平対抗エンジンの振動は四気筒より非常に少ないのです。
点火タイミングは、360度クランクの並列2気筒と同じです。
同時に外に向き、同時に戻ってきます。
鼓動はありますが、振動は少なくなります。
水平対抗エンジンは振動ではなく、鼓動を感じながら進むのです。