第1章 燃え尽きて、灰になるまで慣性モーメント
【自転車の慣性モーメント】
自動車は4本足(タイヤが4本)なので、倒れません。
止まっている自転車は倒れますが、動いている自転車は倒れません。
自転車で走る時は、2本足(タイヤが2本)でも安定しています。
これを慣性モーメントと言います。
自転車が走り出すとき、右足を踏み込む時には直立している自転車を左に傾けて右足を踏み込み、反対の左足を踏み込む時は右に傾けます。
人間は踏み込む足の方に重心を掛ける為、反対側に自転車を傾けて、自分の重心を
タイヤの接地の線上に置き、バランスを取ります。
スタートや上り坂など、力が必要な時は車体を左右に傾け、反対側のペダルを踏み込むので、車体は左右に傾きます。
平坦な所などで力を入れて踏み込まない時も、ペダルを踏む時は左右に小さく揺れながらバランスを取っているのです。
このような状態を「反力安定」と言います。
ペダルを踏むからかすかに揺れて、バランスを崩すのです。
ペダルを踏まなければバランスは崩れません。
子供用の小さな自転車で、試しに坂道を下ってください。
ペダルを漕がなければバランスを崩す事もなく、坂道を下る事ができます。
この運動を慣性モーメントと言います。
慣性モーメントで良く例に出されるのはコマです。
コマは止まっていると倒れますが、回転している時は安定します。
地球ゴマを回してみます。
回っている軸を水平にすると地球ゴマは縦方向に回ります。
進みはしませんが倒れません、自転車と同じです。
自転車は2本の車輪が回転し、コマと同じ原理で安定します。
コマは同じ大きさや形でも、重い方が低回転でも安定します。
テレビの「芸能人年末年始隠し芸大会」等で、コマ回しが放送される事があります。
半径が大きく重いコマは、低回転でもゴロンゴロンと安定して回ります。
太くて重いタイヤを付けたマウンテンバイクは、安定します。
ロードレース用の細くて軽いタイヤは、不安定になります。
回転しているコマは同じ重さ体積でも、薄くて広い円盤型の方が低回転でも安定します。
回転している物体には、そのまま回り続けようとする力が働きます。
この力を慣性モーメントと言います。
自転車も含め、二輪車は慣性モーメントで走るのです。
二輪車(自転車とオートバイ)の前輪を保持する2本のフロントフォークは、前方斜め下の方に伸びています。
フロントフォークを支えるフレームの軸があります。(図の赤い線)
フロントフォークを支えるフレームの軸より後方にタイャの接地点を置いています。
自転車が直進していると、タイヤが左右に振れても直進に戻る様に設計されています。
軸の延長線が地面に接する点、この接地点の後ろにタイヤの接地点を置きます。
接地点が横に振れても、元の直進に戻るように、後ろに接地点を置くのです。
この距離が長いほど、直進安定性が良くなります。
次に、倒れている自転車を起こします。
起こす途中、左に傾いている状態で前輪は左を向いています。
この様に自転車は左に傾くと前輪は自動的に進行方向、左に傾く様に作られています。
右に傾くと前輪は右を向きます。
今度はブレーキワイヤーを外し、ハンドルをフリーにします。
自転車のハンドルを後ろ向きにして、同じ事をやってみます。
倒れた自転車を起こします。
左に傾いた状態で、前輪は逆の右向きになってしまう事が確認できます。
前輪の中心をフロントフォークの軸より前方に出します。
ハンドルの軸より前に、前輪やハンドルの重心を置く様にします。
傾けると自動的にそちらを向きます。
自転車のフロントフォークが前に曲がっているのは、この様な理由があるのです。
バイクではフレームについた軸より、フロントフォークは前にあります。
三又の前2本はフロントフォーク、フレームに続く1本は後ろにあります。
同様な理由から、可動部分の前輪系全体の重心を前に置くのです。
軸の中心 軸の中心
ハンドル周りの重心
自転車で少しスピードを出し、ペダルを漕ぐのを止めます。
両手を離し、ペダルは踏みません。
自転車はカーブでからだを傾けると、かってに曲がって行きます。
手放しですが、勝手にハンドルはカーブの方向に曲がって行きます。
遅くなると、前輪がフラついてしまいます。
これに人間が乗ってコントロールする、それは全て乗り手のあなた次第です。
それは、危険の裏返しでもあります。
乗り手が全てをコントロールする、全て手の中にある、だから二輪は面白いのです。