第3章 快楽のジャイロモーメント
【禁断の縦置きクランクシャフト】
二輪は慣性モーメントで走ります。
回転しているコマは重くて半径の大きい方が低回転でも安定します。
回転を続けようとする力、安定しようとする力を慣性モーメントと言います。
回転が始まると慣性モーメントで角加速度が発生します。
回転が速くなると角加速度は大きくなり、安定します。
半径が大きく重い方が慣性モーメントも大きく、角加速度も大きくなります。
大きく重い物が回転し、慣性モーメントが大きいと安定するのです。
タイヤの回転が遅くなると角加速度は小さくなり、フラフラして倒れます。
タイヤの大きさで慣性モーメントの大小が決まり、乗り味の差が少し出てきます。
タイヤは太い方が安定します。
オートバイにはピストンの往復運動を安定させるための大きな円盤、フライホイールがエンジンの中に組み込まれています。
タイヤの他に回転運動している物として、このフライホイールが加わります。
メグロの250ccエンジンは約5,000回転で最高速度100km程度です。
時速72kmでエンジン回転数は3,600回転位になります。
時速72km、3,600rpmで回っているエンジンは1分間に3,600回転します。
3,600÷60秒=60回転、1秒間では60回転しています。
時速36km/hで走っています。mに換算すると36km/h=36,000m/hになります。
1分間では36,000m÷60分=600m/分、1秒間では600m÷60秒=10m/sです。
36km/hで10m/s、2倍の72km/hでは秒速20mになります。
タイヤの直径を1mとするとタイヤ1周で約3m、72km/h=20m/sの1秒間では約7回転します。
エンジンは60回転、タイヤは7回転!
フライホイールはタイヤよりもはるかに高回転数で回り、その角加速度は非常に大きくなります。
フライホイールの角加速度はタイヤよりはるかに大きく、車体の運動性能に大きく影響します。
エンジンの中で1番重くて、回転運動をしている部品はフライホイールです。
白い円は、フライホイールの回転方向を示しています。
赤い円は、入れ物のハウジングケースに加わる力の方向を示しています。
エンジンのフライホイールは縦に置かれ、分厚い円盤型をしています。
円盤型の慣性モーメントは、半径の二乗に比例して大きくなります。
二乗に比例なので、重さよりも大きさの方が影響は大きくなります。
回っている駒の床を動かすと、駒の軸は後ろに傾きます。
駒の回っている床を一定の方向に定速で移動します。
その床を進行方向に加速すると、回っている駒の軸は後方に傾きます。
加速時の駒の軸は、進行方向に水平で安定します。
この配置は、縦置きクランクシャフトのオートバイになります。
縦置きクランクのエンジンは、強い直進安定性を発揮します。
それは高回転になれば成る程、高速になれば成る程強力です。