2004年、1月からまる1年掛けて連載された、
大人魔実也シリーズ「夢幻紳士 幻想篇」。
掲載誌は早川書房の「ミステリマガジン」です。

漫画雑誌ではなく、海外ミステリ小説専門誌。
書店で置かれているのは漫画雑誌じゃなくて文芸書のコーナー、
入荷が少ない、値段も高い…という四重苦(笑)を背負いつつ、
文字通りの幻想譚が繰り広げられています。

入手が難しい人は、早川書房に直接注文しちゃいましょう!

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☆★☆★☆単行本☆★☆★☆

「夢幻紳士 幻想篇」

2005年4月15日 初版発行
早川書房




「ミステリマガジンNo.577/2004年3月号」
平成16年1月25日発売 1900円(!)
   
◆第1回「電波塔」◆
16ページ
大変久しぶりの魔実也さん。何が驚きかって、掲載誌がミステリ小説誌だということではなく、さらにその雑誌が新年(?)特別増大号でお値段1900円だということでもなく、魔実也さんが男に……!! ということに尽きるでしょう。もちろん第2回以降、話が進むにつれてお相手が「嬢ちゃん」であるということは明らかになるのですが、この第1回では顔つきやプロポーションが「男」として描かれているので、魔実也さんとのツーショットが往年の魔実也萌えファンとしては泣ける。
わー、魔実也さん! 男の頬に顔寄せて囁いたりしないでー!!(涙)
さらに魔実也さんのいう「パトロン」って?魔実也さん、この漢と一緒に暮らすの!?そ・そんな、魔実也さんなのに!! と、相手が男と思っていた第一回は何かと大混乱のうちに終わったのでした(笑)。
「ミステリマガジンNo.578/2004年4月号」
平成16年2月25日発売 840円
◆第2回「女か虎か」◆
16ページ
ここではまだ相手役は男として描かれています。前回、「魔実也さんが親しげに言い寄るこの子が、"実は女の子、せめて半分でも女の子"ならいいのにー(涙)」と思っていましたが、この第2回で「やっぱりこの子は女の子かも」と思い始めました。何故って、世界はこの子の妄想の中で展開してるし、その中で情事の男役として描かれてるのって、…もしかして?くらいの期待混じりの推測でしたが(笑)。

虎女の髪の毛が凄いことになっています。「もののけ姫」の乙事主から出てきたタタリ神みたいな…。
「ミステリマガジンNo.579/2004年5月号」
平成16年3月25日発売 840円
◆第3回「木乃伊の恋」◆
16ページ
第3回でやっと「嬢ちゃん」という呼び名が出てきて一安心、やっぱり魔実也さんが男相手に連載で面倒なんか見るわけがないのよ!(笑)
「嬢ちゃん」の姿も、プロポーションや仕草が少しずつ可愛くなってきました。
ラストのコマの魔実也さんが最高。おそらく、「嬢ちゃん」の妄想の中での魔実也さんであって、「影」本体でもないんでしょうが…(この文章は第11回まで読んだ時点で書いてます)、でもその「影」自体、嬢ちゃんの想念から生まれた存在でしょうから、その本人の妄想の中でそうあるのであれば「影」本体と言えなくもないような…?
いずれにしても、魔実也さんと嬢ちゃんの力関係を大変よく表していて、「幻想篇」中で1・2を争うほど大好きなコマです。
「ミステリマガジンNo.580/2004年6月号」
平成16年4月25日発売 840円
◆第4回「瞬きよりも速く」◆
16ページ
ところで、扉ページのアオリ文句もさすがにミステリ専門誌って感じでかっこいいですよね♪
「ケバケバしい女」と魔実也さんにまとめられちゃってる、この眉の太いおばさま。私は当初、見合いの相手はこのおばさまの息子か甥なんじゃないかと思っていました。だってほら、髪の毛の感じとか似てるし。で、ソレを妄想嬢ちゃんと縁組みさせて財産横取りが狙いよ!…みたいな。だから年齢的にも40〜45くらい?50はさすがにいってない?

…と、思っていたので、ほぼ謎解きも終わってる現在(11月末)、予想が外れちゃったのは、それは全然気になりません。
ただ、その、40〜45っくらいのケバケバしいおばさまと魔実也さんが!と思うと改めてなにかこう、込み上げてくるものが!!

あ、婚約者の女の子が大変可愛らしいですね。こういう感じで葉介先生が描かれる女性は本当に美しいです。
「ミステリマガジンNo.581/2004年7月号」
平成16年5月25日発売 840円
◆第5回「Shall We Dance?」◆
16ページ
もう扉絵からガツンと!(笑)
白い手しか見えない魔実也さんに抱かれてダンス、細い腰が美しくて、「待ってました!」という感じ(笑)。

それにしても院長先生、魔実也さんを呼び出すために冒頭のシーンを仕掛けたようですが、本当に全部フィクションなんですか、実は隙あらば本当にやっちゃうつもりだったんじゃないですか、と言いたくなるヤバさです。

巨大化魔実也さんが見所。なんとなくルドンの巨人を思い出しました。
「ミステリマガジンNo.582/2004年8月号」
平成16年6月25日発売 840円
◆第6回「暗くなるまで待って」◆
16ページ
タイトル予告からかなり色っぽい展開をあれこれ期待していましたが、別方向にかっちょいいお話でした。
前回に続いて扉絵が素晴らしく、扉だけでもいくらでも見とれ続ける自信があります(笑)。特に魔実也さんの髪の流れが美しい。髪といえば、嬢ちゃんは女性に戻ったとき両サイドに突然髪が増えますが、アレは普段どうやって収めているのでしょう。男スタイルの時の頭が微妙にでっかい感じなので、実際にアップでがんばってまとめているのでしょうか。

後半のスピード感と呑気な感じが入り交じった展開が面白すぎ。それにしても、ふたりの気配を消してたのは魔実也さんの仕業、ってことでいいんでしょうか?
「ミステリマガジンNo.583/2004年9月号」
平成16年7月25日発売 840円
◆第7回「渚にて」◆
16ページ
夏発売の号でタイトルが「渚にて」、いよいよあの子が水着に!?と思っていたらソレは違っていて、水着を着たのは別の女の子でした。

このシリーズはサブタイトルが「幻想篇」というだけあって、「嬢ちゃん」のみならずいろんな登場人物の「幻想」の中でお話が展開していきます。ここでも少女が心のままに装いを変化させて楽しそう。そして魔実也さん、マメ。少女を引き留める方法なら他にいくらでもありそうなものですが、そこはそれ魔実也さんです。誉めておだてて遊んでます。ただし、相手が花嫁衣装を着たところでさすがにヤバいと思ったのか、ここで我に返させてるところもいかにも魔実也さんです(笑)。
「ミステリマガジンNo.584/2004年10月号」
平成16年8月25日発売 840円
◆第8回「眠れる森の美女」◆
16ページ
扉とラストが思いっきり少女漫画。こういうの大好きです。何となく、まるで同人誌(誰の、とはあえて書きませんが…笑)の魔実也さんのような甘甘っぷり。最初と最後の少女漫画シーンが強烈なので、本編のスプラッターがかなり激しいワリには、お話の印象も「甘甘」です(笑)。

ところでまた髪の話ですが、これだとやっぱりこの子の髪は普段も長くて可愛いんだけど、意識があるときは本人の幻想として髪が短いことになっているのかな?という感じですね。
「ミステリマガジンNo.585/2004年11月号」
平成16年9月25日発売 840円
◆第9回「父、帰る」◆
16ページ
これぞまさに幻想篇。父と娘の幻想世界、魔実也さんと「嬢ちゃん」の幻想世界。幻想篇での魔実也さん(「影」)の存在が、あくまで「嬢ちゃん」に依存してるというのが、これ以上ないくらいに断定されてます。

それにしても、冒頭で「最近はひとりで遠出もできるようになった」と夜の街をそぞろ歩く魔実也さん、この台詞も次回への伏線のようですが、つまり夜の帝都に本体と影のふたりの魔実也さんがいるというわけで、出会える確率も単純に2倍?キャー♪とか、つい考えてしまいます(笑)。
「ミステリマガジンNo.586/2004年12月号」
平成16年10月25日発売 840円
◆第10回「影が行く」◆
16ページ
こ・この、「影」と「本体」が出会う場所は「怪奇編」の「夜会」の!
カクテルグラスも「夜会」の!! そしてバーは「老夫婦」の!!!

葉介先生が別作中で同じ舞台・モチーフを繰り返し使うのはよくあることですが、今回のこれはなんとなく大変嬉しかったです。
「幻想篇」作中で初めての本体登場シーンが「怪奇編」魔実也さん登場最終シーンと同じ場所からというのが、この二つの作品が繋がっているかのような。長い長い、1年かけた葉介先生の仕掛けに気持ちよく引っかかったような感動がありました。

ところでおばさまですが…、初登場時にはかなり濃ゆいメイクに年も40オーバー確実な雰囲気でしたが、この話では絵も優しげになって、年もせいぜい30代後半?イヤー、私個人としてはそのくらいならむしろ魔実也さんの守備範囲であって欲しいかも…(笑)。
「ミステリマガジンNo.587/2005年1月号」
平成16年11月25日発売 840円
◆第11回「長いお別れ」◆
16ページ
とうとうエンディングが始まりました。
女性の自我を取り戻して、物憂げな表情が大変美しいです。

それにしても、女性であることを拒否していたときに出会ったというのに、心の中に「影」を生み出してしまうほどの魔実也さんの魅力!さすがです。あっちにもこっちにも「影」がいそうです。そしたら本体は大忙しですね(笑)。
現に前回、魔実也さんと出会ってオトナの交際(←苦しい表現だわ…)をしたおばさま、やっぱり魔実也さんの「影」に捕らわれてるみたいで、ソレはソレで羨ましくもあるような無いような(笑)。
前回にもありましたが、「本体」と「影」の顔が重なったシーン、当たり前ですがCGじゃなくて全部手書きなのが素敵で美しい。葉介作品の、そういうところも大好きです。
「ミステリマガジンNo.588/2005年2月号」
平成16年12月25日発売 840円
◆第12回「君の名は」◆
16ページ
最終話です。
幻想篇作中、主人公の「僕」もそうですが、魔実也さんの名前も一度も出てきませんでした。それでサブタイトルが「君の名は」だから、絶対にかっちょいい展開でどっちかの名前が出るんだわ!と期待していましたら、やはり大層素敵な終わり方でした。
名前が判明したのは当然魔実也さんの方で、考えてみれば「怪奇編」も女性キャラで名前がハッキリわかるひとは少ないし、「外伝」でもあの下宿の女の子の名前は結局わからなかったし、「幻想篇」の「僕」もわからないままの方がなんとなくロマンティックな余韻が残ります。

それからもうひとつ嬉しかったのが、前話「長いお別れ」で「あたし男になりたい」とまで思い詰め壊れてしまった「僕」が、のちに美しいご婦人になり、孫もいて…という普通の女性の幸せを手に入れていたこと。
「怪奇編」では普通のハッピーエンドが少なかっただけに、ラストの名乗りも含めて、「幻想篇」の魔実也さんはなんて優しかったんだろうと感慨もひとしおです。
「影」の魔実也さんは「僕」の想念が生み出した存在だから、女性好みに優しいのは当たり前なのかもしれませんが、12話にわたってその優しさを女性読者として堪能できたのは、葉介ファンとしても大変に幸せな一年でした。