第3回京畿(キョンギ)マラソン 4月17日(日) 2時間38分38秒=5位


 申し込みまで
 韓国での市民マラソン情報はマラソンオンライン(http://www.marathon.pe.kr/)というHPを時々覗いてチェックしています。気軽に行けるわけではありませんので,主にマラソンニュースを見ることが多いです。1月中旬頃に1年間暮らした街の水原(スウォン)市でマラソン大会が開催されることを知りました。水原市は人口105万人の街で日本でいう県庁所在地でもあります。この街ですでに京畿マラソンが3回も開催されているとは知りませんでした。水原マラソンはハーフですが,このマラソンはフルもあり市内中心部を横断し,ワンウェイで市内外環をぐるっと一周,コースの変化も楽しめそうです。一度は水原でフルマラソンを走りたいと思っていただけに衝動申し込みというか,熟考する間もなく,大会事務局にメールをして外国人の申し込みについて問い合わせし(韓国では住民登録番号を入力しなければならないのでちょっと面倒なんです),東京マラソンに行った折に韓国系銀行で送金をして無事エントリーは完了。飛行機もマイレージの特典航空券を利用(旭川〜羽田・成田〜韓国仁川〜成田〜千歳)。宿はいつもなら安旅館利用ですが,今回はレース中の貴重品のセキュリティもあるので予めネットで観光ホテルを予約し,2泊3日の韓国マラソンレースの事前準備はてきぱきと進みました。

 いざ水原へ
 旭川の最終便で東京前泊。翌朝は上野から成田空港まで特急。しかし節約のためスカイライナーは使わず,運賃だけで乗れる特急に乗りました。10時発の飛行機に乗り,2時間ちょいで韓国到着です。今回はレースのみで観光なし,手持ちのウォンもけっこうあったので10,000円だけ両替して,水原行きのリムジンバスに乗車しました。途中は韓国名物の渋滞に巻き込まれ倍近い時間を要して2時間で水原に到着。終点まで乗らず会場である陸上競技場に近いバス停で途中下車しました。この競技場はこちらにいた頃にしばしば練習で使っていたので別に下見の必要はないのですが,前日に受付してもらえるかどうかダメもとで行ってみました。というのはこのレースに限らず韓国のレースはナンバーカードやプログラムは自宅宅配が主流で,それ以外(例えば外国人とか)は当日会場受け取りになります。当日は混雑して受け取りに手間取ると困るので,前日に自分の荷物?があれば受け取ろうかなと。準備中だった大会本部に行くとパスポート提示の厳重な本人確認を経て,ポツンと残された自分の荷物とご対面。ずっしり重いぞ。プログラムは写真集のように立派なものだったのです。競技場から市内バスで2泊お世話になるホテルに移動。市内バス料金は850W,7年前は500Wだったのにな。韓国は行くたびに物価上昇を実感します。ちなみにウォンを約1/10にすると円に換算できます(ただしソンスの行った時は為替変動で1/9.5くらいでちょい損の感じです)。でもこちらのバスの値段の半分ですからまだ安いですけど。
 宿は既に3回ほど泊まったことのあるいわば定宿です。水原の繁華街に近いのと,観光ホテルなのに安くてお気に入りでしたが,ここも物価上昇なのか前より1.5倍くらい高くなってました。宿の屋号も経営者が変わったのか変わってました。変わってないのはフロントの人が親切なこと。帰宅する日にその親切さを実感しました(後述)。着替えて日が暮れるうちにと交通量の少ない道路を選んで光教貯水池という人工ダムの湖面道路に走って行きました。ここは水原市でも有名なランニングコースで100m毎に距離表示があります。ちょうど花見の人出で賑わっていました。予定の60分をちょっとオーバーしてちょっと脚にきたかな?レース前日ということでその日の夜はあまり辛くないものがいいなと思って食べたのが,石焼ビビンバでした。

仁川空港と市内を繋ぐ高速道路 光教貯水池のランニングコース 花見シーズン

 レース  
 朝は5時起床。8時30分がスタートなので,すぐ朝食。前日にコンビニで買ったおにぎり3個とカップめんに日本から持ち込んだ餅を入れて食べる。部屋にポットはないものの宿のすぐ向かいのコンビニでお湯を入れてもらい無事お腹に餅を納めました。競技場には7時過ぎに入り,アップをしたり,スタート前のアトラクションを見て過ごす。フルのほかにハーフ,10km,5kmがあり,フルは1000人弱の参加者があるらしい。アップを終えて競技場の召集地点に行くと,主催新聞社の高さんという記者が珍しい漢字のユニフォームを探し出して,「日本の方ですね」と流暢な日本語で即席インタビュー取材を受けました。日本からの参加者は2名らしい。主催者の挨拶などで長引いてスタートは10分遅れ,ここがいかにも海外のレースらしいです。10からカウントダウンが始まり「3(セー),2(トゥル),1(ハナ),パーン」とフルの選手がまずスタート。
 この大会は大会を盛り上げるために「アマチュアフル最強戦」として申請すれば記録上位35名の男子の選手が無料招待となっており,それらの選手は主催者の用意した水色のユニフォームを着用しなければならないことになってました。先頭グループは4人で形成されうち3人は最強戦メンバーのようです。自分のほうは先頭集団につけば潰れるなと思って第2集団6名の後方でじっと我慢してました。
 スタートから8kmくらいまでは旧市街の中心部を走ります。いつもは車優先社会の韓国でこうしてメインストリートを走れるのは気分がすごくいいです。しかし現実は早朝とはいえ対向車線の大渋滞と沿道の人の少なさを見ると,市民ランナーが年々増えて盛り上がってきているのと裏腹にまだマラソンが市民権を得てないのかなと感じます。でも主催者もその辺を心得ているのか学生補助員を多数動員してそれこそ100mくらいおきに「ファイティン(ファイト)とかヒミネセヨ(ガンバレ)」と応援してくれます。5kmは18分1秒の通過。もうすでに喉が渇いてきます。予想気温は20度。それ以上に湿度が低くて喉がつらいです。以前韓国の大会では飲料は水しか出ないことが多くて糖分不足を感じていたので,今回はユニフォームに軽いゼリー飲料を縫い付けておきました。でも今日はスポーツドリンクも出ているようでちょっと安心。
 だんだん見えなくなる先頭グループを追いかけて1人が抜け出しましたが,自分はちょっと躊躇し,集団の中に。10km手前で水原の軍隊の基地があります。ここは軍事機密なのか地図に公開されていない飛行場があります。またコースの横には非常時には滑走路にもなる幅の広い道路もあって北の脅威と対比している現実が垣間見えます。10kmは37分7秒ともう19分台にラップも急降下。誰も前を追いかけようという気がないようです。ソンスも後半に不安がありますが,ここで集団に合わせるより,自分のペースで走ったほうがスタミナのロスを防げるなと思い前に出ることにしました。ちょっとピッチを上げると誰もついてきませんでした。前も1分以上あいているようだし,ここから単独走が始まりました。15kmは55分51秒とさほどラップも上がってないようですが,後ろの集団とは交差点で交通規制が一時解除されるほど広がっているようです。しかし前とはあまり詰まっていないようです。姿はちょっと2人が並走しているなと確認できる程度です。18km地点は世界文化遺産である水原華城を築城した正宗大王のお墓があります。ここが1次の折り返し地点。観光ポイントの横を通過するとは心憎いコース設定です。トップは最強戦の選手でなく地元水原の選手。あとで知ったのですが過去2回優勝している選手のようです。長身でストライドも広そうでいい走りです。そのあとしばらくして相次いで3名が最強戦出場選手。そのあとは韓国南部の一般ランナー,ソンスは6番目でした。折り返してまた制限速度80kmの高速道路並みの幹線道路に戻ると,前から選手一人が明らかにペースダウンしてきました。20kmは1時間13分54秒と18分前半までラップを回復してきました。ほどなく5位に浮上。
 ここからかなり日差しがきつくなりました。25kmは1時間32分22秒で通過。見覚えのある風景です。昔,お世話になった職員の方のアパートがここらへんだったような気がします。25kmから30kmまでは立体交差で地下道に2回もぐったりと隠れたアップダウンがありましたが,地下は冷んやりしていて心地よいです。ここでハーフとコースが一部重複して最後尾のランナーを抜きます。30kmは1時間51分36秒とまたも19分台に急降下。走り込み不足のツケは30km手前から出てきて辛いレースになってきました。31kmでソウルと釜山を結ぶ大動脈の国鉄京釜線を横断するの陸橋を過ぎると水原でも有数のアパート団地が見えて来ました。7年前は荒地だったのに超近代的な新都市になってました。32kmではなぜかワゴン車がコース内で横転してました。これも交通事故が多い韓国が垣間見えます。でもなぜコース内にワゴン車が???35kmは2時間10分27秒とまた18分台ラップに戻しました。37kmで2次折り返しで先頭とすれ違います。1次折り返しと特に順位の変動はないようです。40kmは2時間29分52秒。うーんやはり足にきてるかな?残り2kmほどは後ろから選手が来る気配もないし,完全に安全運転モードです。キロ4分以上かけてのゴール。2時間38分38秒で5位。レース前に高さんが取材したいからと言っており,「2時間40分で戻ってきますから」と約束を守ることができました。
 それにしても乾燥して暑かったこと。頭の汗が乾いてフケのように落ちてくるわ,塩分不足なのかレース後のククス(そうめんみたいなもの)が美味しかったこと。高さんとは取材といいながらも30分くらい個人的な話で盛り上がっていました。
 表彰ではカップ,賞状のほか賞金20万W,うち22%は韓国政府に納税です。あと珍しいものでは山人参を貰いました。てっきりすぐ食べられるものだと思っていましたが,完全な植物でした。検疫通さなくちゃいけなかったのかな?これはソンス妻の実家で栽培してもらうことにしました。うまくいけば旭川が朝鮮人参の主要産地になるかもしれません(笑) 

スタート・ゴール地点 軍人行進のアトラクション 大会本部遠景
参加者皆さんを歓迎します 表彰 競技場全景

 レース後
 2月にこちらへ旅行に来られた水原の知人の方たちの夕食会に招かれました。なんとフグをご馳走になりました。味付けはしっかり唐辛子が効いてました。レースが終わるまでは刺激物を控えていたので美味しかったです。焼酎は調子に乗って飲むと立てなくなるかもしれないでのおちょこ5杯くらいでセーブしました。消費したエネルギーはまた取り戻したみたいです。
 さて,翌日はホテル近くの銭湯(韓国の銭湯は早朝から営業しています)で汗を流し,新聞を捜しに近くのコンビニを回りましたがありませんでした。主催新聞社は水原の地元紙なので見つけづらいようです。ホテルのフロントにも声をかけてみましたが置いてなく,駅に行けばあるだろうとバスで往復したものの収穫なし。がっかりしてホテルに戻ると,フロント氏が「○○新聞ありますよ」と近づいてくる。「えお代いくらですか?」というといらないというではないですか。どうやら店頭販売してないのを個人的に調達してくれたらしいのです。丁重にお礼を言ってチェックアウトの際にお土産(永○園のお茶漬け海苔です)を手渡そうとすると勤務明けで担当はフロント嬢に替わってました。ちょっと残念ですが,託しておきました。
 帰りは月曜午前ということでスムーズに高速道を疾走して定刻より早く仁川国際空港に着きました。
 今回はレースのみの韓国でしたが,この2週間後のGWには再度マイレージで訪韓します。今度はソンス妻連れで。だから今回は観光に執着しないでレースに集中できたかもしれません。

 おまけ
 フロント氏のおかげで手に入れることができた新聞です。内容が若干脚色されているのはご愛嬌。訳も要約です。ごめんなさい。


フルコース5位 ソンス
水原がなつかしくて日本からやってきました
「水原がなつかしくて参加しました。優勝よりは最高記録更新に専念しました。(注1)」17日開かれた第3回京畿マラソン大会に参加するため「近くて遠い国」日本から飛行機に乗って参加した日本人ソンスさんはボストンマラソン(注2)と東京マラソンなど世界各国の大会60回マラソン参加の強豪ランナーだ。ソンス氏は水原市の姉妹都市からの参加で水原市に1年間住んだ想い出があり,水原市で京畿マラソンが開かれる情報を知るなり,休暇を利用して2泊3日,100万ウォン(注3)をはたいて大会に参加,16日に水原に到着した彼は光教山近くで軽いトレーニングを行い大会に対する熱意が表れる。完走記録は2時間38分38秒,最高記録更新には失敗したが,彼は嬉しそうに話す「水原もずいぶん変わったようです。以前は畑だったところが,アパート団地に変わって新しくなったなぁ」と。ドラマ「チャングムの誓い」の李英愛(イ・ヨンエ)のファンのソンス氏は来年の大会には妻と一緒に走り優勝したいと語った

(注1):練習不足なんで2時間40分くらいで走れればと言ったのですが,ずいぶん大それた目標になってしまったものです。
(注2):ボストンは出たいけど,出たことないです。確か福岡と言ったのに。ボストンのボの字も出しませんでしたよ。ちなみにボストンも東京の韓国の英雄李鳳柱(イ・ボンジュ)選手が参加してそれぞれ好成績を出しているので韓国では有名な大会です。
(注3)飛行機はただだし,せいぜいお小遣い込みで60万ウォンくらいかと。

 2005レースレポートにもどる