雫−時の流れについて−
誰も振り向かないことなのに、私の心が奮えてしまう出来事に出会うことがある。
それは、私が生きて行く上で必要な、私にしか見えない小さなものなのかもしれない。
魂の気配を感じたいと想い続けていたときに、私の心の中で何かが弾けた気がした。
心の中に存在しながらも行く先を探していた雫が、行く先を見つけ転げ落ちる瞬間なのだと思える。
私の心の中の時の雫を探して形にする作業は、誰の人生にも意味を持たないものかもしれない。
それでも、大切な記憶を再生する作業は、私の生きた証を創りあげて行くことだと信じたい。
時の流れの中の、私のための風景を、大切に残して行きたいのである。
私が感じているこの日本の四季の香りを、私なりに切り取り、私なりの形で伝えようと思う。
この国の象徴である富士山に陽が昇り、虫が季節を知らせ、魚が群れをなし、そして雪が舞う。
寒暖の激しいこの国を花の便りが駆ける中で、花の姿は時の中で刻一刻と変化している。