いまから 千年以上も昔のことです。
出羽(でわ)の国の福富の荘(ふくとみのしょう) (いまの秋田県雄勝町)をおさめるために、京の都からおやくにんがやってきました。

お役人は、小野良実(おののよしざね)というりっぱなわかものでした。

「こんどきたとのさまは、よく村をみまわりし、おらたちにまでことばをかけてくださる。 やさしいかただなや」
と、村人たちから すかれました。

また、良実が、家来をつれて馬にのり、野山で狩りをするのをみて、村人たちはくちぐちに いいました。
「なんと、やさしく、たのもしいかただなや」

次のページ