2019年5月



年号が平成から令和に代わるということで、なにがしかの感慨を覚える方も大勢いらっしゃるでしょう。

平成最後の〜とか、令和最初の〜というような場面も数多く見ましたが、私自身は年号が変わることへの違和感は全くなく、平成に変わった際にも、令和の今回もただ静かにそれを受け止めるといった感覚です。

しかしながら、先の天皇皇后の功績が大きかっただけに、そのお姿をもう拝見することはめったにないと思うと、一抹の寂しさを覚えます。

特に美智子様のような方は、世の中広しといえども存在するわけもなく、美智子様を選ばれた先の天皇陛下の慧眼にいまさらながら驚きます。

慈愛に満ち、上品で、優しく、控えめで、温かなお心を持ち、誰にでも隔てなく接してこられたことは、私たちの知るところで、先日読んだこれまでの皇后陛下のお言葉集、「あゆみ」で、いまさらながらその素晴らしい人格に触れることができました。

おそらく、正田家のご両親の素晴らしさが受け継がれたことも大きく、本を読む習慣や、音楽に親しむこと等は、小さいころから自然に身に着けられたことかと思いますが、そのように考えてみると親の果たす役割や、周りの環境の影響が人格形成に大きく関与していると今更ながら感じます。

人はどのようなことに関心を持つかはわかりませんが、その関心事にしっかりと向き合い、それを伸ばし将来に役立てることができたら存外の幸せではないかと思います。

親に押しつけられたことではなく、自分から望んだことは恐らくその人の才能に違いなく、それを潰さずに温かな目で見守ることが大切だということも、ご本を読んでいて感じました。

先の天皇皇后の生き方を拝見していて、こんなにも国民の平和を願い、祈るということの大切さを、感じたことはありませんでした。戦争で亡くなった人たちに祈りをささげ、さまざまな災害に合われた方の心を思い、一人一人に寄り添うような姿勢ですべてに臨まれたことは、勇気を与え、感謝の念を感じないではいられません。

公務のみならず、私の時にさえいつも、いつもそういう姿勢を持ち続けるなど、ほかの誰にできるでしょう?

絶えずにこやかに、姿勢も崩すことなくプライベートの時でさえ必ず誰かがそばにいるわけですから、どんなにか気疲れされたり気を遣ったりされるかと思います。

そして常に仲良く、今でも手をつながれたり目を見つめあわれたりする姿は、本当に素晴らしいの一言に尽きます。

御世が変わる今、私は「本当に国民のために祈りをささげてくださり、ありがとうございました」という気持ちでいっぱいです。

お言葉で「平成の時代に戦争がなく過ごせたこと」という一文がありましたが、それを耳にしたときに、敗戦した際にまだ皇太子だったにもかかわらず、さまざまなことを思われたのだと感じました。だからこそ、ご自分の御世には不幸な出来事を起こしてはいけないという思いが強かったのではないかと思う時、あんなにも小さいころからそれを心にとどめていらっしゃり、深く暗い部分がおありだったことに驚き、そのお気持ちに沿われるように、美智子様が共に歩んで来られたのだと感じ入りました。

新しい御世に私は特に何かを期待したり、望んだりすることはありませんが、「戦争のない御世」であってほしいと願うばかりです。