2023年11月


最近気になることの一つに、過剰な丁寧語と断定を回避する言葉づかいがあります。

過剰な丁寧語は、テレビのアナウンサーが話していた中で、猫が氷が好きだという投稿に対して、「これからもお飼いになっていらっしゃる猫ちゃんに氷を召し上がっていただきたいですね」と言っているのを聞いて、驚きました。丁寧語を使えばよいという誤解がこのような言葉づかいになったのか、アナウンサーなら、もっと勉強しなさいと、言いたくなりました。

敬語の不勉強も目立ちます。
アナウンサー同士の会話で「このトンネル知ってますか?」「いえ、私、このトンネルは存じ上げないんですね」と言っているので、思わず、「トンネルは人?」と思ってしまいました。「存じません」なら、謙譲語でそれはそれで正しいのに、良かれと思って丁寧さを出したつもりがとんでもないことに本人は気づかないばかりか、翌日も「存じ上げません」を使っていましたから、アナウンス室で正す人がいないのか、誰も疑問に思わないのかと質の悪さにあきれるばかりです。

デパートのトイレに入ったところ、「20分以上ご利用いただいておりますと、警備員がお声をおかけさせていただくこともございますので、よろしくお願い申し上げます」との張り紙。ホテルに泊まった際には、「お名前様をお書きくださいませ、ご住所様もお書きくださいませ、お電話番号様もお願いします」と言われて、またまたびっくり。

歌舞伎座の前で見かけた女性は「あら、素敵な御着物ね、どこでお買いになったの?」「この御着物はデパートでお買いになったのよ」と答えていて、これまた驚きました。

こもアナウンサーですが、 数の数え方も、ほとんどが1個、2個で、例えば1歳違いは1個違いとなっています。
先日、靴のヒール1足が取れたというので、両足のヒールが取れるなんて珍しいと思って聞いていたら、片方の事なんですね。1足は左右揃っての数え方なのに、日本古来の数え方を親も学校では教えないのかしらと疑問を持つばかりです。
馬は頭で数えますが、匹と数えているアナウンサーもいますね。
先日デパートで羊羹を買う際に、「おいくつですか?」と聞かれて「一棹(ひとさお)です」と言ったら、おかしな顔をされました。羊羹の数え方を知らないんですね。


断定を回避するいい方というのは、相手に不快感を与えないように、相手に悪く思われてくないために、疑問形を用いる言い方をしてしまうということで、例えば、「修理に出して直ったから、良かったかなと思ったりすることってあるじゃないですか?」「病気とかってしたくないかなって思うことってあるかもしれないかなって思いません?」というような言い方です。疑問形にしたり、語尾を上げたりして、相手に賛同を求めているのでしょうが、聴きにくくて心に響きません。

更に、助詞を伸ばしたり、言葉の切れ目で伸ばしたり上げたり、強く発音する言い方も増えていて、教師や親世代でも「〇〇がー」「〇〇でー」「私はー」というような話し口調です。親も、教師もこんな言い方をするので、子供はそれが正しいと勘違いして、右に倣えとなるわけです。

小学校から英語教育を始めることについて、そしてそれを否定するものではありませんが、英語より前に日本語が正しく話せなくてどうするのかと、私は案じています。古典も学校では習わないようで、私が講義の中で、諺や言いつたえなどを話しても、ちんぷんかんぷんで「暖簾に腕押し」です。「暖簾に腕押し」も全く通じなかったので、そこから説明しなくてはなりません。「糠に釘」も「糠」さえ知らないので、いちいち説明するのが煩わしくなります。

新聞や、本を読まないので、リテラシーが全く不足していると言わざるを得ません。
考えてみれば、電車の中でもほとんどの人がスマホでゲームや、ラインをしているようで、本を読んでいる人を見かけません。以前は朝の通勤電車で、朝刊を縦に細長く折りたたんで読んでいる男性を良く見かけましたが、今は、皆無です。大体において、新聞を取っている家庭はほとんどないようで、スマホで見るから必要ないという返事が返ってきます。スマホのニュースは、切り取りですから、全体が全く分からないですし、一部だけを読んでも見えてこないと思うのですが、新聞代がもったいないということでしょう。
日経新聞は5500円になりましたから、決して安くはないかもしれませんが、わざわざ買いに出かけなくても配達してくれるのですから、1日当たりで計算すれば、安いものだと考えますが、どうでしょう?そのあたりの価値観が私とは違うのでしょう。


こういった言葉の間違いは多くあり、敬語を教えたり、プレゼンテーションを指導しているときに、特に強く感じます。

本人は気づかないにしても、それを指摘する人もいない時代に変化したのでしょう。こういった世の中の変化を何も感じなくなるというのは、これからの時代怖いと思います。