2023年5月


季節の移ろいはとても速く、寒かった時期から暖かな季節へといつの間にか変わっているようです。

冬物から夏物へと衣替えも忙しく、出したり入れたり、クリーニングしたりと、5月は忙しい時期でもあります。

茶道を再開してから、いろいろと学びの多い毎日を過ごしています。20代のころに6,7年お稽古に通っていましたが、ほとんどのお点前を忘れてしまっていて、初歩からやり直しているところです。

実は新潟に住んでいたころどこで習ったらよいかわからず、京都の裏千家にお聞きして一番の先生を紹介していただき、ずっと通っていました。

姉は流派が違いますので、私のお稽古の話をすると、姉の先生とは比較にならないほど素晴らしいと驚くほどでした。毎回お稽古に3時間以上かかっていましたから、姉のところの2倍以上の時間で、母は茶道の後で遊んでいるのではないかと訝ったほどでした。ですから、自分ではそこそこできていると思っていたのですが、今回再開してとんでもない勘違いであることを思い知らされました。

コロナ以前に再開する際に、ネットで近くの先生を探して一日体験をさせていただいたのですが、どうも私には合わない雰囲気でしたので、ネットではなくやはり京都の裏千家に問い合わせてみようと試みました。

東京で素晴らしい先生が希望と伝え、自由が丘にお住いの入江宗敬先生を紹介していただきました。御挨拶に赴いたところ、玄関の下駄箱には草履がずらりと並んでいて、まず驚きました。

お茶室には3つの炉が切ってあり、これからお稽古が始まるところでした。全員そろって「ことば」を唱えてから、10名ほどの皆様がそれぞれ自分でやりたいお点前を決めて、水差し、茶碗、棚、建水などを準備して、いよいよ始まりました。

先生は3つのお手前を同時にご覧になるのですが、なんとお稽古に来られている方の内、4人がお弟子さんのいる先生で、別々のお点前ですからお互いに教えあいわからないところは質問したりして、お稽古をされていました。そしてほとんどの方が20年、30年と続けている方ですので、一つひとつが教えられることの連続です。

先生のお宅には立派な水屋が2か所あり、それぞれにお道具がずらりと並んでいますから、自分のやりたいお点前に合わせて自分で道具をそろえて、「今日は〇〇のお点前をいたしますので、よろしくお願いいたします」とご挨拶して始めます。

私の以前のお稽古場とは全く違っていて、またまた驚きでした。さて肝心の私のお稽古は、これまでのことを忘れていること、習ったことが正確ではなかったことなど、問題続出で袱紗捌きからやり直しです。
しかも膝を痛めているので、立ったり座ったりがうまくできません。左ひざが特に悪く、その左を立てて立ち上がるのは、もっとも不得意でまごまごしてしまいます。スクワットをしたりして筋肉をつけようとしていますが、なかなか思うようにはいきません。

入門してすぐ11月には口切のお茶事があり、その後新年の初釜と続きました。3月には釣釜にかわり、4月には透木釜での稽古、4月の終わりには五事式という炉でしかできないお茶事があり、幸いにも晴天に恵まれましたので、腰掛待合で待ち、路地を通って蹲踞を使い、躙り口から席入りというようなこれまで知らなかった世界を経験できたことは有難いと思います。

ここでは年当番が決まっていて、早めに行って掃除をして、炭を熾したりお湯を沸かしたり、お花を活けたりこまごまとしたことも全て自分たちで行います。今月からは風炉での稽古が始まります。

コロナでずいぶん長くお稽古はお休みだったそうですが、再開しても以前と同じではなく、例えば濃茶は本来は一椀を飲み回しが基本ですが、今は一人ずつになっていますし、薄茶も替え茶碗を使ってお茶を点てています。茶碗は熱湯消毒で、マスクもつけてお茶をいただく時のみ外します。本当に細かく習う先生によってこんなにも違いがあるのかしらと、目を見張ることばかりです。

お稽古に通うようになって、必ず着物を着て通っています。雨の日も冬の寒い日も着物と決めていますが6月からは単衣になり、その後は薄物です。真夏の暑い日はどうしようかしらと、悩むところです。絽の着物やそれに合わせた帯、帯揚げ、帯締めもせっかくなので活用したいところですが、30度を超えるような日は汗が心配です。

私が茶道を再開しようと思ったのは、茶事や、茶会はもちろんですが、様々な道具類に触れたり、目で見たり、使ってみることが本当に勉強になり、特に焼き物の事は詳しくなりたいと思い以来あちこちの窯元を訪ねて旅をするようになったり、美術館や博物館に行ったり、作家との出会いがあったり、更にその作品を買い求めては眺めたり使ったり、心ときめくことが多いからです。

茶道は難しいのですが、お稽古は楽しく毎週心待ちで仕事とぶつかると、休まなければならないので寂しい思いになります。

でも、これからまだまだ続けて様々な手前ができるようになったり、掛け軸の難しい文字が読めたり、道具類が一目でわかったらどんなに楽しいでしょう。道はまだまだ遠く険しいようですが、一歩一歩進んでいこうと思っています。