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第51回岩手県小児科医会談話会・講演会(2008年1月12日)
小笠原 孝祐
小児科医に役立つ眼科の知識 |
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小児科領域に関連する眼科疾患を扱う学問は、小児眼科学(Pediatric
Ophthalmology)として独立した一つの分野を形成している。小児眼科学は大きく小児の眼病変(狭義の小児眼科)と視機能に関係する弱視・斜視の二つの分野に分けられる。また、小児糖尿病患者の合併症管理やステロイド治療による眼科的副作用チェックも眼科の役割となる。
小児の眼病変としては、未熟児網膜症、先天性白内障、先天性緑内障、眼瞼内反症、鼻涙管閉塞症、細菌感染症、ウイルス感染症、網膜芽細胞腫に代表される眼腫瘍、アレルギー性結膜炎、春季カタル、アトピー性眼病変等のアレルギー性疾患、多形性滲出性紅斑、川崎病などの膠原病が挙げられる。これらのうち主な疾患ならびに弱視・斜視について概説を行った。本抄録では紙面の都合上、アデノウイルスによる眼病変と幼時期における安易な眼帯が弱視を惹起する危険性について記述する。
1.アデノウイルスによる眼病変
ウイルス性眼感染症の代表的なものは、アデノウイルスによる感染症である。それには2つある。1つは流行性角結膜炎(EKC)であり、アデノウイルスD群8型、19型及び37型による角結膜炎、頭痛、リンパ節腫脹等を伴うものであり、もう1つは咽頭結膜熱(プール熱)であり、アデノウイルスB群3型及び7型、E群4型により発症し、急性の結膜炎、発熱、咽頭炎、頸部、耳介前部リンパ節の腫脹を生じるものである。アデノウイルス眼感染症になった場合には、眼科医に指示された期間登園・登校を控えるとともに、家族内の接触感染の防止として、イソジンによる手洗いを励行することはもちろんであるが、合併症の防止のために抗生剤とステロイド剤の点眼が併用される。治療上、気をつけなければならないことが2つある。1つは、ステロイド点眼を漫然と使用することによるヘルペス性角膜炎の合併であり、もう1つは治療が奏効しなかった場合に、角膜上皮下混濁を残すことである。角膜上皮下混濁は恒久的な視力障害を生じさせることから、特に気をつけなければならない合併症であり、早期の適切な治療と経過観察が重要である。
2.弱視について
弱視とは、矯正視力が医学的には0.7以下、社会的には0.3以下の場合をいい、屈折性弱視、不同視弱視、斜視弱視、視性刺激遮断弱視の4つに分類される。屈折性弱視とは、近視、遠視や乱視が強いために視力が出ない場合をいい、不同視弱視とは、主に遠視の場合にその度数に左右差があり、遠視の強い眼が焦点を十分に合わせることができないため、視力の発達が損なわれ弱視になるものである。斜視弱視というのは、眼の位置が内方、外方、上方、下方のいずれかにずれる眼位異常が生じることにより起こる視力低下をいう。視性刺激遮断弱視とは、視力の発達に重要な時期に安易な片眼帯や白内障、角膜混濁などの病気により光の刺激が網膜に正常に到達しないためにおこる視力障害である。子供の視力の発育は、従来考えられていたよりも早く、生後3ヶ月から3歳までに急激に発達し、基本的な両眼視機能の獲得がなされるため、この時期は視覚の高感受性期(臨界期)と言われる。その時期に眼瞼内反症の手術などで片眼を遮蔽することにより、視性刺激遮断弱視が惹起されることを1973年名古屋大学の粟屋
忍先生(現名誉教授)が初めて報告して以来、非常に重要な注意点として小児眼科学の教科書に記載されている。1歳から3歳までの間は片眼の眼帯をすることについては十分な注意が必要であることを強調したい。
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第46回北日本眼科学会(2008年7月12日)
波岡 聡子・高野 美代・小笠原 孝祐
バセドウ病に合併した上下斜視に対する手術量とその効果についての検討
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バセドウ病眼症における上下斜視に対する手術量とその眼位矯正効果について検討した。対象は、バセドウ病眼症により上下斜視を生じ、その改善を目的として当院にて下直筋後転術を施行した男性8名、女性9名の計17名(18眼)で、手術時の年齢は42〜81歳(平均60.8歳)、手術直前の上下偏位量は、交代プリズムカバーテストにて遠方9〜45Δ(平均22.7Δ)であった。手術時期を決定するにあたっては、最低3ヶ月間眼位が安定していること、TRAb、TSAbの値が異常高値でないこと、また、MRI所見にて外眼筋の活動性変化が見られないことを目安とした。手術量の決定には、術前の偏位量のみではなく、術中に下直筋周囲組織との癒着の程度をみて判断し、下直筋4〜6mmの後転術と周囲組織との癒着剥離を行った。術後3ヶ月における眼位は17例中14例で正面視にて正位となり、全例においてphoriaを得ることができた。今回の結果から、バセドウ病眼症における上下斜視手術に対する矯正効果は、一般の斜視手術とは異なり、症例による差がきわめて大きいことが明らかとなった。バセドウ病眼症における上下斜視の原因は外眼筋の伸展制限であり、偏位量が10〜15Δ以内で上転制限が軽度の症例では、眼位矯正量を定量化することは可能であるものの、周囲組織との癒着剥離が大きい場合には、本症に対する手術量の術前定量は困難であると考えられた。
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第46回北日本眼科学会(2008年7月13日)
瀬川 博子・小野寺 毅・吉田 隆司・山ア 香苗・小笠原 孝祐
LASIKによる眼圧値変動についての検討
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LASIK患者において中心角膜厚(以下CCT)、角膜切除量ならびに術中フラップ厚がどの程度眼圧に影響を及ぼすかについて検討した。対象は当院で平成13年7月から平成19年9月までに施行した近視矯正手術患者のうち、術前、術後の眼圧の経過観察が可能であった444人872眼(男性177人、女性267人)。CCT、角膜切除量、フラップ厚ならびに術前後の眼圧を測定した。眼圧測定は非接触型眼圧計を使用し、CCTの測定には超音波Aモード法を用いた。統計解析にはPearson回帰分析、t検定を用いた。その結果、CCTと術前眼圧との関係は、CCTが10μm厚くなるごとに眼圧が0.33mmHg高く評価され(相関係数0.41)、また、LASIK中の角膜切除量と術後眼圧との関係は、10μm切除するごとに眼圧は0.37mmHg低く評価された(相関係数0.47)。一方、-6〜-9Dの矯正においてフラップ厚が100μm以上の場合、100μm未満の薄い場合と比べ術後眼圧はより低く評価された(P=0.04)。今回の研究結果から非接触型眼圧計の測定でもCCTと眼圧値との間に正の相関があり、LASIKによりCCTが薄くなると眼圧が低く評価されることが明らかとなった。また、矯正量が多い場合、フラップ厚の眼圧に対する影響が有意となり、フラップ厚が厚い場合、角膜の物理的特性の1つである剛性が弱くなることが示唆された。
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第8回東北屈折矯正研究会(2008年11月23日)
小笠原 孝祐・小野寺 毅・吉田 隆司・山ア 香苗
コンタクトレンズ不耐症患者と屈折矯正手術
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当院で屈折矯正手術を受けた動機について、641名から得られたアンケート結果をまとめたところ、「コンタクトレンズ(CL)は異物感や充血が出現するので長時間装用できない」という理由が最も多く20%を占めていた。今回、当院において平成13年7月から平成20年6月までに、LASIKを施行した600名のうちCL不耐症と判断された症例をもとにLASIKの有用性についての再検討を行うとともにLASIK希望者への正しい啓発活動の重要性について述べてみたい。
コンタクトレンズ不耐症の定義を、
@日常生活上、ドライアイ、アレルギー性眼疾患によりコンタクトレンズの終日装用、使用継続に支障がある。
Aコンタクトレンズによる眼合併症のため装用を中止すべき状況
B乱視矯正用のハードコンタクトレンズの装用が出来ない
という3項目にまとめてみた。これらに当てはまるLASIK施行例は221名であり、全体の約36%を占めた。このことは従来、一般的に言われてきたLASIKは眼鏡、コンタクトレンズに次ぐ第三の屈折矯正の選択肢であるという概念の時代からCL不耐症患者にとっては、QOL向上の意味から極めて有効な治療法と捉えられる時代に移行したと考えられる。
CL使用者は、現在1,500万人を超えていると言われており、日本眼科医会の調査によるとその30%は何らかの目の異常を感じており、10%の方は極めて危険な状態でCL装用を継続していると報告されている。
近年のLASIK希望者増加の要因には、CL使用者とCL不耐症患者の増加、LASIKの安全性と治療技術の向上とともに手術費用の低価格化があげられる。都市部における極めて安価なLASIK費用施設でのLASIK症例数の著しい増加は、東北地方の患者の流れにも明らかな影響を与えている。その結果として、術前履歴情報不備の患者、十分な理解を得ないまま安易な気持ちでLASIKを受ける患者や、合併症のため視機能の低下を生じる症例の増加につながっている。新技術への投資と採算性の板ばさみの現実に直面している東北地方のLASIK施設においては、その機能と質を維持するためには、CL不耐症患者への恩恵を与えるということを含め患者への正しい啓発活動が強く求められていると思われる。
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