ロック&ポップス





だ、誰か、バファリンを!

『THIRD EYE BLIND / THIRD EYE BLIND』

◇info
1990年初期、アメリカの西海岸に位置するカリフォルニア州の大都市サンフランシスコを拠点に、スティーヴン・ジェンキンス(Vo)を中心に結成される。1997年のデビュー時のメンバーはスティーヴン、エリオン(bass)、ケヴィン(guitar)、ブラッド(drums)の4人。

オリジナル・メンバーにはケヴィンの他にもう1人、ギタリストのトニーがいた。トニーの後に遅れてメンバーに加わったのがケヴィンである。彼は当時ラスベガスに家族と共に住んでおり、サンフランシスコへの往復は金銭的に困難で、さらに家族と過ごす時間が減ってしまうことから、バンドを脱退せざるをえなかった。

しかし、2枚目のアルバム「BLUE」発売後、スティーブら他のメンバーによってケヴィンが解雇されたため、トニーは再びサード・アイ・ブラインドの一員として3枚目のアルバム「
OUT OF THE VEIN」でギターを担当することとなる。

 - 2人のギタリストの特徴 -
ケヴィンは、U2のギタリスト、エッジから大きな影響を受けたと述べており、透明感のある硬質で繊細なギター・プレイが特徴である。その繊細さで曲を盛り立てる一方、激しく唸り、かき鳴らされるダイナミックなプレイも得意とする。繊細さとダイナミックを兼ね備えた彼のギター・プレイは、憂鬱と狂喜の間を絶えず揺れ動く、サード・アイ・ブラインドのサウンドの中核をなしていると言える。

一方のトニーは、元々メタル界の住人であり、スウィープ奏法を多用する早弾きギタリストとして、そっちの世界で名を馳せていた人物である。彼は「Apocrypha」というメタルバンドのリーダーであったが、このバンドは不発に終わったらしい。その後ソロ活動などを経て、現在のサード・アイ・ブラインドに行き着いたという、面白い経歴の持ち主。彼のプレイは3edアルバムで聴くことができる。ケヴィンとは違った繊細さを持ち合せている一方、荒々しい躍動的なプレイを得意とする。ただ、3rdは1stと音作りが異なるため、一概に比較できない。


 ◇アルバム解説
1stシングル「Semi-Charmed life」で一気に大ブレイクし、瞬く間にその名を世界に知らしめた 彼らTHIRD EYE BLIND。当時、ここ日本でも「Semi-Charmed life」がかかりまくっていた。そのデビュー・アルバム「THIRD EYE BLIND」は700万枚もの売上を記録。

彼らの特徴は、メランコリーと狂喜の間を還流するメロディーに、ヒップホップのグルーヴを取り入れ、それをキャッチーにまとめ上げているところだ。U.S.の陽気さにU.K.の湿り気を加えたたかのようなサウンドであり、そのキャッチーさから、一度聴くと頭から離れなくなってしまう。ヒップ・ホップのハネるリズムが体を揺らしてくれる。

このアルバムは、ドラム、ベースもさることながら、スティーブンの歌声とケヴィンのギターが素晴らしい。スティーブンの歌声は、狂喜、投げやりさ、情けなさ、惨めさ、憂鬱、優しさ、といった感情をうまく表現できるところが魅力的だ。また、独特の節回しが曲に強烈な個性を与えている。剛ではなく柔で攻めるケヴィンのギターは、繊細なサウンドと力強いサウンドを使い分けながら曲を引き立てる。その対比が美しい。そして、ソロの部分でも彼の技がキラリと光る。

ここで、彼らのサウンドには、狂喜の他に、突然白目をむいたりする奴や、いきなり叫び出す奴(皆さんのまわりにもいるでしょう)のようなキチガイじみたものも感じる。そこに私はなんだか惹かれてしまう・・・。ところどころに出てくる彼らの突き抜けるような奇声コーラスにも、そんな底抜けのキチガイさ感じとってしまう。

歌詞には、女性にふられた男の哀れさ、惨めさなどがシニカルに描かれている。それが陽気な曲に乗っかったりするものだから、その落差がこれまた面白い。




◇戯言
このアルバムに収められている曲はどれも大好きですが、個人的には7曲目「THANKS A LOT」が1番好きです。スティーヴンのこの歌い方が好きです。3目がコーラスも連発されます。ミドル調の美しいメロディーの中、ケヴィンの繊細なギターワークが冴え渡ってます。特に、イントロの部分と、彼のギター・ソロ部分の美しさに心を奪われました。
 
彼らのジャンルがよく分かりません。マッチ・ボックス・トゥエンティーやグーグー・ドールズとかと一緒のくくりにされてますが、全然似ていないし・・・。一応、オルタナティブ・ロックなんでしょうね。メディアの方も彼らの扱いに困る感じで、紹介しにくいのか、ほとんど取り上げられません。ここ日本では忘れ去られてしまっているような気もします・・・。

この1stアルバムには、激しいロック調のナンバーもあれば、スローテンポのフォークっぽいサウンド、ヒップ・ホップテイストの曲もありと、多彩な楽曲で構成されており、非常に完成度の高いアルバムに仕上がっておりますので、聴くならまず、この1stを!

UK音楽好きに聴いて欲しい1枚です。

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鬱気味な太陽

BLUE


 ◇アルバム解説
こちらは彼らの2枚目となるアルバム。前作が大ヒットしただけに、今作を作るに当たってメンバーたちに相当プレッシャーがかかったことだろう。このアルバム完成後に、音楽性の違いからか、ケヴィンがスティーブンらにより不当に解雇されてしまう事件が起こり、裁判沙汰にまで発展してしまうこととなる。

このアルバムは1stと比べると、ロックやハードロック調の比重が増え、更にはパンクといった曲が加わって、より攻撃的でダイナミックなサウンドに変化している。ギターのハードなエッジがあちこちで幅を利かせている。逆に、繊細さ、メランコリーさといった彼らの持ち味は鳴りをひそめてしまっている。

2ndにおける変化はそれだけにとどまらず、実験的な色合いが濃くなり、聖歌隊のコーラスを加えたり、エレクトロ・シタールやテルミンといった楽器を導入したり、レゲエや、ジャングルっぽいサウンドを試みたりしている。

1stのサウンドを期待して、2ndを聴いてみると、その変化にショックを受けるかもしれない。しかし、個々の曲に目を向けると、2曲目「WOUNDED」、3曲目「10 DAYS LATE」、5曲目「DEEP INSID OF YOU」など、1stの延長線上にある曲もしっかりとある。1stが気に入った方ならこの2ndよりも次の3rdの方がとっつき安いと思われる。



◇戯言
私はこの2ndも好きです。1度アーティストを好きになってしまうと、とことんついていく性質なもので。だから私のレビューはあてになりません・・。このアルバムで1番好きなのは3曲目「10 DAYS LATE」です。心地よいビートに、3目が節と美メロが乗っかり、更にギターの力強いエッジが加わる。中間部では聖歌隊のコーラスが加わるのですが、それがステインドガラスを通って暗闇の中に射し込む色とりどりの光のような美しさで、何ともいえません。幻想的な世界に私を誘ってくれます。

1曲目「ANYTHING」とボーナストラックに収められている「NEW GIRL」はパンクナンバーです。前者はエモっぽいアグレッシブな曲調で、疾走感を感じます。後者は、かなりキャッチーなパンクナンバーで、盛りがついた犬みたいな感じがします。この歌詞に至っては超最低。





んちゃっ!

友人に似た奴が・・・

OUT OF THE VEIN


 ◇アルバム解説
2nd発売から実に3年半ぶりとなる、サード・アイ・ブラインドの3枚目のアルバム。今作は、1st同様に憂鬱と陽気さが入り混じった作品に仕上がっている。彼らの持ち味であるヒップホップセンスとポップセンスがサウンドの随所にうまい具合に散りばめられ心地よく、自然と体が揺れてくる。

このアルバム製作にあたって注目すべき点は、まず、ギタリストがケヴィンからトニーに代わったことと、サード・アイ・ブラインドが独自のスタジオを作り、そこでセルフ・プロデュースしていることだ。その影響からか、今作では音に温か味が出ている。1st、2ndは色でいうと青色だったが、それが3rdではオレンジ色になっている。あと、フォーク調の曲が増加したこともあってか、全体的にやや地味になってしまった感もする。

2曲目はまさに爽快なロックナンバー。ギターの音が非常に心地よい。独特のコーラスもよい味を出している。晴れた空がよく似合う曲。虫の音のようなイントロから始まる7曲目の憂鬱なメロディーは、心にしみてくる。そしてサビの爆発が鬱憤を晴らしてくれるような気がする。聴き終えた後に優しい気持ちになれる。彼らの天まで届きそうな奇声コーラスも素敵。8曲目は、イントロから「パッ、パッ、パッ」と思わず一緒に口ずさみたくなるようなキャッチーなフレーズ&メロディーが流れてくる。そしてベースとドラムのグルーヴィーなリズムが体を揺らしてくれる。9曲目は、優しさ暖かさいっぱいの曲であり、彼らのほんのりヒップホップ風味を堪能できる。
11曲目は、ベル&セバスチャン風の曲調で、スティーヴンとゲストのヴァネッサ・カールトンが優しくささやき合っている曲(おいおいって感じ・・・)。

どの曲も一緒に歌いたくなってくる。これはやはり彼らの優れたポップセンスがなせる技であろう。


◇戯言
年半の沈黙は長すぎです。今作の音作りは1stよりで、彼ららしさが色濃く出た仕上がりになってます。ただ、繊細さと陽気さのコントラストはやはり1stの方が上でしょう。
 
あと、スティーブンはなんと、ヴァネッサ・カールトンの新譜のプロデュースをもしていました。愛のパワー炸裂です。それよりも、早く自分たちのアルバムを作って欲しいんですけどね・・・。次回作あたり、トニーのギターがもっと炸裂して欲しいなと思ったり。


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