歌とレモン
愚かなる帽子のわれは帽子をば池に落として慌てふためく
空は唄川もまた唄山も唄魚のやうに群れなすわれら
脂ぎる醤油ラーメン食べながらなるべく事は明日へまはして
薬局にポリデントの箱並びをり忘れ物ひとつ思ひ出すかな
夕焼派の一人として歌を持ちレモンを齧り歩みて行けり
宝となして
信州の百名山の一山のみ登りたること宝となして
一読し二読三読したるのち丁寧に返す友人の本
釣銭を忘れてしまひスーパーの蜜柑林檎が呼び止めている
初夏のケイタイかけて切りたれば駅のホームに山鳩がをる
電話帳国語辞典と重ねたり今日はこれにて終わることかな