夏 鴉
夏の朝グレゴール・ザムザ想ひつつ毒虫の動き眺めて止まず
啄木は借金の王われは物臭の王この二人をつなぐな
下の句を作りしままに時すぎて上の句今日も挨拶に来ず
黒鴉俺と妻とをからかひてゆっくりゆっくり舞ひ上がりたり
歌の詩は詩と呼びをれど中野市の一本木公園の豊かなる薔薇
我・妻・母
山里のてっぺんの家の庭先の鶏がまた卵を産みぬ
父のハンマー持ち出してきて古きバケツ潰してをりぬ
父のやうにぞ
わが家の箱入り男と揶揄されて妻の車に乗せて貰ふなり
古池や飛び込む蛙をらずして妻と二人で眺めていたり
昼下がり妻は水泳われと母居眠りをして新聞を読む