特別寄稿 疋田和男師
      
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エッセイ 
 三十一文字で私の日常の断片を描写するにはまず「型」を決めることであろうか。それは時間のなかの或る瞬間を描写することと思っている。とにかく一番簡単なことは<私><自分><われ
>を描写することであるが、考え方によっては簡単な分だけむずかしい。歌は私性の文学だといわれているから私性というのは
作者の武器でる。私はこのような武器を使って一首一首なるべく具体的な世界を出そうとしている。ここでいいたいのは具体を生かすことであって具体を写実的に出すことではない。そうはいうものの一度歌を発表してしまえば作者の思わくを越えた
ところで解釈され批評される。それでよい、と私は思っている。弁解は無用。
 いま口語歌の増えている時代であるから私の歌も例外ではない。でもなるべく文語体を生かしたいと考えている。この15首にしても毎月の5首にしても私にとってささやかな試行の結果だと思っている。(平成13年1月号「白夜」より)